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  • 2024.02.07

書道家・アーティスト 青柳美扇さん<前編> いつでもポジティブオーラに包まれているために

書道家・アーティスト 青柳美扇さん<前編> いつでもポジティブオーラに包まれているために

ワコールボディブックのコンセプト「誇れる自分」についてインタビューする連載の4人目。今回登場するのは、書道家の青柳美扇(あおやぎ・びせん)さん。フランスやアメリカなど10カ国以上で書道パフォーマンスを披露し、ゲームやCDのタイトル、スポーツイベントでのパフォーマンスなど、活躍の幅をどんどん広げています。前向きでアクティブなパワーの源泉はどこにあるのでしょうか。

新しいことに、いつでも挑める
自分であるために準備する

書を始めたのは4歳のとき。和裁の先生をしていた祖母のもと、お茶やお花のある「和」な環境で育ち、書道の大会でも早くから頭角を現していた青柳さん。そして大学生以降は書道パフォーマンスや立体作品の制作など、新しい書の形を切り拓いてきました。そのころから、青柳さんの発するオーラは常に「ポジティブ」。

「小さいときから、<陽>の言葉に囲まれて育ってきました。もちろん、作品にする言葉はどれもポジティブ。私にとって最初の書道の先生だった祖母は、『不平不満ばかり言ってる人は、口がへの字に曲がるで』とよく話していました。いい言葉に囲まれて育ったら、心も豊かになるし、人にかける言葉も優しくなる。そう教えられたことは、今も私の根底にあります。

父はというと、昔から『ないものは作る』という主義。子どものとき、遊びながら実験したピンホールカメラも、そのほかいろいろな遊び道具も、テレビや雑誌を見ながら自分たちで作るのが当たり前でした。そんな環境でしたから、何をするにも『できそう!』と考えてまずはトライしてみるのが習慣でした。

そして今。私の仕事場にはポジティブで前に進むための3つの言葉が貼ってあります。
――『楽しんでやる』『反骨精神』『自分を許す』――。

いい字が書けるのは、決まって『楽しんで』やっているとき。弱い自分を奮い立たせるためには、『反骨精神』も必要。そして完璧主義の性格が嫌になったら『自分を許す』。この数年、この3つの言葉は変わっていません」

2023年10〜11月(大阪・東京)で開かれた、第7回「青柳美扇の世界」にて。2023年10〜11月(大阪・東京)で開かれた、第7回「青柳美扇の世界」にて

前向きに、そして時には自分に厳しく。そんな青柳さんが「自分を誇れる」のは、新しいことを提案されたとき、すぐに『できます!』と言える状態だといいます。

「私の書のテーマは『伝統と革新』。そのためには、書道の技術を磨きながらも、アンテナを張って、新しいことに挑んでいかなければなりません。だからどんな仕事でも、お話をいただいたとき、『できます!』と即答できるように。そして求められた以上のものを提供できるように。お道具の準備はもちろん、からだも心も、書道の技術も、常に準備をしておきたい。

自分の判断に『これでよかったのかな』と思うことは、もちろんあります。特に仕事を始めたばかりのころは、迷いはつきものでした。そんなときこそ、自分にポジティブな言葉をかけます。『大丈夫。絶対に間違ってない』『これでいいんだ』と。

それでも壁にぶつかったり、先が見えにくくなったら、もっと前に進み、もっとぶつかりに行く。私の大好きなサーフィンでは、大きな波が来たとき、波から逃げると巻き込まれてかえって危険なことがあります。そんなときこそ、めっちゃしんどくてもパドリングして波に向かって行けば、うまく波を乗り越えることができるのです。だから、困難が来たら逃げるのではなく向かって行く。それが、私のやり方です。

友達から相談されたときも、こんなふうにアツく語るし、ひたすら前向きに背中を押します。そのせいで、友人からは『松岡修造か!』ってよく言われてます(笑)」

書道家・アーティスト 青柳美扇さん

こうした前向きなメッセージを集めた本『毎日、ポジティブ。』が、2023年9月に発売されました。その直後に大阪と東京で開催された個展には、多くの人が来場。後編では、個展で青柳さんが行っている新しい試み、さらにこれからの自分を語ります。お楽しみに!(2月14日公開予定)

  • 青柳美扇(あおやぎ・びせん) 書道家・アーティスト、書道パフォーマンス甲子園PR大使/1990年生まれ、大阪府出身。世界10カ国以上で書道パフォーマンスを披露。国内では、第99回天皇杯決勝にて約5.8万人の観客を前にオープニングアクトを務めた。2023年5月には世界遺産・高野山に巨大屏風を奉納。ゲーム「モンスターハンターライズ」の筆文字ロゴや、手塚治虫原作の「どろろ」の題字を担当。2021年10月『情熱大陸』(MBS)に出演。2023年発売の著書『毎日、ポジティブ。心が元気になる50の言葉』(ぴあ)では、字体やデザインの異なる50の書を掲載。疲れたとき、元気がでないときのために、手元に置いておきたい一冊です。

    2024年は、チャリティーアート展&オークション「Feel-Love Project MUSIC&ART2024」に参加予定。
取材・文/南 ゆかり
撮影/望月みちか
デザイン/WATARIGRAPHIC