• Culture
  • 2023.11.15

京都の水餃子大人気店・楽仙樓インタビュー<後編>餃子教室でコミュニケーションの楽しさを

京都の水餃子大人気店・楽仙樓インタビュー<後編>餃子教室でコミュニケーションの楽しさを

会社員を経て、母が興した中華料理店・楽仙樓を受け継いだ三原さん。前編では自分らしい働き方を見つけるまでのストーリーを紹介しました。後編では、これからの夢、そして寒い時季に向けての火鍋の楽しみ方を教えていただきます。

いつか餃子教室を開いて
思い出に残る体験を提供したい

「私が店を受け継ごうと決心したのは、みんなが大好きな母の水餃子の味を途絶えさせたくなかったから。日本に来たばかりのとき、日本語がしゃべれないなりに、得意の水餃子をつくってはご近所に振舞っていた母。故郷の中国にいたときから、行事や集まりごとのたびに作るのが習慣で、そのころから母の餃子は格別においしいと評判だったのです。母がお店を始めたのも、このおいしい餃子をできるだけ多くの人に食べてもらいたいという気持ちから。それを受け継いだ今、お客さんから『おいしかった』と言ってもらえることが、私のすべての原動力です。

そして、このおいしさをさらに広めることは私の使命です。通信販売を始め、テイクアウトの商品を開発すると同時に、素材にもこだわるようになりました。少し高価でも味と質のいい油を使う、餃子に入れるエビは厳選したものを 使い厨房で殻をむくことから始めます。豚肉は食べ比べていちばんおいしかったチリ産のアンデス豚を使っています。豚の餌や飼育環境の安全性にもこだわりました。調味料も自家製だし、添加物はできるだけ使いません。こうしたことも、少しずつの変化ですが、味のためには妥協できないことばかり。

75歳になった母は今、週に2日・2〜3時間だけ、餃子づくりを手伝っています。何もしないよりは、少しでもお店に関わっているほうが、いいようです。私には『いつもありがとうな』、お客さんには『娘がいるから大丈夫やわ』と言っている母。それを聞くと、店を継ぐときのもうひとつの目的だった『母を楽にさせる』を実現できているのかな、とも思います」

京都の水餃子大人気店・楽仙樓

そして、三原さんにはひとつの夢があるそう。それは「餃子教室を開く」こと。

「母が伝えてくれた本場中国の味、そのルーツ。こうしたことをお話ししながら、親子・ご家族で一緒に餃子を作る体験を提供したいんです。私自身、子どものころからずっと母がお店で忙しく、一緒に何かを作ったり遊んだりした記憶が少ないんです。現代の子どもたちも、もしかしたらそうなのかもしれません。でも、家族で一緒に体験したことは、一生楽しい記憶として残るはずです。

そして私自身はというと、やっぱり今後もずっと変化を続けながら、母の餃子を広めるために働き続けると思います。どんなに大変でも、やっぱり仕事はやめられへん。でもいつか、次にお店を継ぐ人が現れたら、一歩引いたところからあたたかく見守る。そんな存在になれたらいいですね」

連日、予約でいっぱいの楽仙樓。訪れる人の多くは、三原さんに会いに来る常連さんです。水餃子だけでなく、三原さんの生き方・働き方が、日々人を惹きつけているようです。

三原伸子さん

<お店の大人気メニュー・火鍋の楽しみ方>
アレンジ方法は無限大!
食べる温活コースで芯からホカホカに

暑い時期なら夏バテ対策に、冬になればからだをあたためるため、多くの人がこの火鍋を目当てにお店を訪れるといいます。店内でいただく「餃子火鍋コース」は、豚バラ、ラム肉、エビ、いか、きくらげ、春雨、白菜、青梗菜、にんじん、もやし、じゃがいも、豆腐などの具材に、水餃子やシメの麺まで、とにかく具材が豊富(野菜はおかわり自由)。白湯と辛湯の2種類のスープ、つけだれと薬味は11種類。たれは、どれをどのように混ぜてもOKですが、辛さ好きでからだをあたためたいなら、豆板醤や生姜を多めに。中国の発酵食品・黒酢を加えれば味に深みが生まれます。辛味醤油だれは、特製手作りラー油と醤油に豚肉を炒めた旨味を加えたもの。シメの麺(別料金)まで、ずっとおいしさが続き、心もからだもホカホカにあたたまる、「食べる温活コース」です。餃子火鍋コース 豚バラ4,000円、ラム肉4,500円(ひとり分。2名より予約可)

餃子火鍋コース
つけだれと薬味は11種類
餃子火鍋コース

お店に足を運べない人は、ネット通販で取り寄せも可能。「火鍋の素」セットには、辛湯スープ、名物の水餃子、麺が入っているので、お好みの野菜と肉を用意するだけで完成。タレはベースのごま油に、ねりごま、オイスターソース、五味だれの3種類。「ご家庭にあるお酢やポン酢、すりおろした生姜を加えるなど、お好みでアレンジしても楽しめますよ」(三原さん)。冬の温活にぴったりの「火鍋の素」セットは、WACOAL SPOONで購入できます。

https://spoon.wacoal.jp/shop/g/gs220i007/

  • 三原伸子(みはら・のぶこ) 1975年、中国・ハルピン生まれ。4歳で家族と共に来日。1994年、母・恵子さんが京都で創業した中華料理店「楽仙樓」を、2009年に二代目として引き継ぐ。2021年にはテイクアウト専門店「手包み工房 楽仙樓」もオープン。
    HP:https://www.rakusenroh.jp/
    YouTube:https://www.youtube.com/@user-dc4qj2cc2t
取材・文/南 ゆかり
撮影/香西ジュン
デザイン/WATARIGRAPHIC