2024.05.22

【特集】あなたの骨、大丈夫ですか?#02

骨粗しょう症に陥りやすい3つの要因

女性のための整形外科 伊藤薫子先生

私たちは成長期から20歳にかけて骨密度のピークを迎えます。その後、少しずつ下がり始め、更年期になると骨密度は急激に下がりますが、実は骨粗しょう症になりやすいのは、更年期だけではありません。#02では、骨密度が低下する3つの状況について、また、女性ホルモンと骨がどのように関係しているかについて考えます。教えてくれるのは、「女性のための整形外科 かおるこHappyクリニック」の院長、伊藤薫子先生。ぜひ参考にしてください。

#01|最新の骨密度検査を体験! 若い世代と比較すると…

女性ホルモンと骨の関係

女性が骨粗しょう症になりやすい要因は、主に3つあると伊藤先生。「ひとつは、妊娠授乳関連骨粗しょう症です。出産時、胎盤が排出されると、女性ホルモンは急激に減少しほぼゼロの状態になります。このとき、メンタルなどに不調をきたす人が多いのもホルモンの減少に関係していますが、骨も大きな影響を受けており、骨密度が下がる人が多くいます。

妊娠授乳関連骨粗しょう症は、圧迫骨折を起こすこともありますが、この骨折は高齢者のものとは違って全体的に平らにつぶれるため、レントゲンでわからず「よくある腰痛」として片付けられてしまうことも多いのです。MRIを撮れば的確な診断ができるので、痛みが長引く場合は、専門の整形外科医がいる医療機関を受診してほしいです。

「女性のための整形外科、かおるこHappyクリニック」伊藤薫子院長

もうひとつは、卵巣がんで卵巣を摘出した方や乳がんや子宮内膜症、子宮筋腫など薬で女性ホルモンの分泌をコントロールして治療を行うことがあります。閉経と同じような状況をつくるのですが、これにより骨密度が下がりやすくなります。

今あげた2つにも女性ホルモンが関係していることからもわかるように、3つめは誰もが避けて通れない、更年期による骨密度の減少です。

更年期になると、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少します。エストロゲンは、肌のうるおいなどをつくる役割がありますが、健康な骨を保つうえでも重要なホルモンです。エストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する役割があり、分泌が減ってしまうと、骨は弱くなり、骨の質も劣化してしまうのです」

骨密度が低下しやすいのは
どんな人?

更年期になるとだれもが骨密度が減少します。ですが、その減少のカーブがゆるやかな人もいれば、50代から骨密度の治療が必要な人もいるなど、個人差が大きいのも事実。骨密度が低下しやすい人の特徴について、伊藤先生にお伺いしました。

「生活習慣の面からいえば、喫煙、適量を超えた飲酒やカフェインをとっている人は、骨密度が下がりやすいといえるでしょう。お酒ならば1日3杯、コーヒーは1日5杯を超える量を飲む人はリスクが上がります。理由は、アルコールやカフェインは、尿と一緒にカルシウムを排出してしまうため。長い間習慣にしていると、骨密度の低下につながります。お酒は特に、足の付け根の骨密度が低くなりやすく、ここは骨折しやすい部位でもあるので、飲み過ぎには注意してください」

また、骨密度は20歳ごろまでにピークを迎え、その後少しずつ低下していくのですが、骨がつくられる10代の成長期に無理なダイエットをしたり、生理がこなくなるほど激しいスポーツをしていた方は、骨密度が上がりきらないまま、年齢とともに少しずつ低下していくので、40代や50代など早い時期に骨粗しょう症になるリスクがあります。思春期ごろは無理なダイエットをする人もいるので、近しい大人がこういった知識を持っていることも大事です。

背筋を伸ばしてヒールで闊歩。
いつまでも自分の足で歩きたい!

また、骨密度が低下しやすい要因として遺伝もあると先生。「母親が痩せ型である場合や、父親か母親のどちらかが大腿骨骨折をしたことがある場合、子どもの骨密度が低くなり、早い時期に骨粗しょう症になるリスクが上がります。

骨粗しょう症になると、軽い転倒で骨折したりと生活に支障が出てしまうのですが、これは一時的なものとは限りません。歩いていた人は杖が必要になったり、杖を必要としていた人は車いすの生活になってしまったり、車いすだった人は寝たきりになってしまうなど、その後の生活が変わってしまう可能性もあります。骨密度を定期的に測り、骨が劣化してしまう習慣は改めて、骨を丈夫にする習慣を身につけましょう」

ヒールを履いて、いつまでもおしゃれを楽しみながら歩き続けたい。そのためには、今の段階からどんなことを心がけたらいいのでしょう。また、すでに骨密度が低い場合、医療の面からどのようなアプローチが可能でしょうか。次回#03で引き続き、伊藤先生にお話をお伺いします。

骨粗しょう症3大要因 授乳、乳がん・子宮内膜症・子宮筋腫の治療、更年期
  • 伊藤薫子 かおるこHappyクリニック院長。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄専門医。東京女子医科大学医学部卒業。2021年、東京の帝国ホテル内に「女性のための整形外科かおるこHappyクリニック」開院。大学病院で骨粗しょう症外来に4年間勤めた経験と、背骨の認定医としての知見を活かし、骨粗しょう症の早期発見と治療、骨活プログラムに注力している。いくつになっても背筋を伸ばしてハイヒールを履き、輝く女性を増やしたい、との思いをもって日々治療を行う。
取材・文/大庭典子
撮影/高木亜麗
デザイン/日比野まり子
イメージ写真・イラスト/stock.adobe.com