女性のからだは、ホルモンの分泌によって大きく左右されるもの。最初は初潮、そして妊娠・出産。さらに今、おとな世代の私たちに、閉経という大きな変化が訪れています。
「中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』によると、女性は七の倍数で歳を重ねると言われています」。そう語るのは、漢方とアロマの両方から心身にアプローチしている、中医アロマセラピストの有藤文香さん。「女性のからだのピークは、実は28歳。そこからゆるやかに下降していき、49歳で閉経を迎えるとされています。そう考えると、更年期に入ってからではなく、もっと早くから養生を始めておくべきなんですよね」
また「症状別」に治療を施す西洋医学とは違い、東洋医学は「体質別」に対策を立てるのが大きな特徴。では、自分はどの体質に当てはまるのか、まずは以下のチェックリストで確認してみましょう。ホルモン特集#01では、体質別におすすめの「漢方薬」と「アロマ」を紹介していきます。
●気の巡りが悪く、イライラが止まらない
肝気鬱結(かんきうっけつ)タイプ
おすすめの漢方は…
「逍遙散(しょうようさん)」
「肝」の気が滞ることで怒りが表出し、イライラの症状が出てしまうタイプです。「逍遙散」は、「気」を下に降ろして全身に巡らせ、不足している「血(けつ)」を補うことで、からだのバランスを整えていきます。自律神経を調整し、血行も促進することで、イライラやのぼせをしずめ、肩こりや疲労感を取り除く効果が期待できます。
おすすめのアロマは…
「ベルガモット」「グレープフルーツ」「マンダリン」「オレンジスイート」「ネロリ」「クラリセージ」
このタイプにおすすめなのは、主に柑橘系のアロマです。甘酸っぱい「酸」の香りが「肝」の流れを促進し、ホルモンバランスを整えてくれる効果があります。ゆっくりとした呼吸を繰り返すことで、気持ちがおだやかになるのを感じてみてください。
●エネルギー不足ですぐに疲れてしまう
気血不足(きけつぶそく)タイプ
おすすめの漢方は…
「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」
「気」と「血」の巡りが悪くなっていて、気力体力ともに不足しているタイプです。「婦宝当帰膠」は、9種類の生薬を原料とするシロップ剤で、お湯に溶かして服用します。ロバの膠(にかわ/煮皮)を使った天然のコラーゲン、阿膠(あきょう)も含まれていて、アンチエジング効果が期待でき、かの楊貴妃も愛用したのだとか。冷え、肩こり、腰痛、めまいなどに効果があるといわれています。
おすすめのアロマは…
「ゼラニウム」「シナモン」「マンダリン」「オレンジスイート」「マジョラム」「ラベンダー」
シナモンは、中医学では「桂枝(けいし)」と呼び、漢方の生薬としてもよく使われています。アロマが興味深いのは、嗅いでみてここちよいと感じる香りが、自分の体質に合っていて、かつ必要としているもの、ということ。自分がどう感じるか、ひとつひとつゆっくりと試してみてください。
●老化と体液不足が原因で、ほてってしまう
肝腎陰虚(かんじんいんきょ)タイプ
おすすめの漢方は…
「亀鹿仙(きろくせん)」
ホルモンバランスを司る「腎」と、血の貯蔵庫である「肝」が弱っていて、ほてりの症状が出てしまうタイプです。すっぽんの甲羅を使った「亀鹿仙」は、このタイプが不足している「陰」を補う働きがあり、のぼせを抑えてくれる効果があります。山楂子(さんざし)や棗(なつめ)が含まれていて、甘くて飲みやすいのも特徴。睡眠の質を深め、からだのこわばりを取ってくれる効果も期待できます。
おすすめのアロマは…
「サンダルウッド」「フランキンセンス」「ローズオット」「イランイラン」「ローズウッド」「ゼラニウム」
おすすめは、ややどっしりとした深い香り。不足している「陰」を香りで補うことで、ほてりを冷まし、からだにうるおいを、また心に落ち着きを取り戻してくれます。
●血行不良により、血流が悪くなっている
瘀血(おけつ)タイプ
おすすめの漢方は…
「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」
血の巡りが悪く、婦人科系にトラブルを抱えている人が多いのがこのタイプ。「冠元顆粒」は、「血」と「気」の両方の流れをよくする生薬が配合されていて、肩こり、腰痛、冷えのぼせを改善するほか、気圧頭痛などの疾患にも効果があるとされています。エストロゲンの減少とともに上昇しがちなコレステロールの値を抑えてくれる役目も。
おすすめのアロマは…
「レモン」「フランキンセンス」「パチュリ」「ローズマリー」「ローズオット」「サイプレス」
瘀血タイプは、からだの中に「湿」を溜めてしまいがちです。どこか重だるいなと感じたら、これらのアロマを生活に取り入れてみてください。どんよりとした心やからだが、スッと軽く、晴れやかになっていくことでしょう。
- 有藤文香(ありとう あやか) 株式会社Xiang代表。星薬科大学卒業後、製薬会社でMRとして勤めたのちに渡英。東洋医学を取り入れたアロマセラピー代替医療を学ぶ。帰国後、漢方とアロマセラピーを融合させた「中医アロマセラピー」を体系化し、漢方クリニックを併設した総合サロン『Xiang』を設立。未病先防により、家庭の中から日本の医療を変えていくことをモットーに、中医アロマ・漢方薬・薬膳のコンサルティングなどを行うほか、スクールを主宰し、中医アロマセラピストの育成に力を注ぐ。 Webサイト:「中医アロマセラピーサロン シャン(Xiang)」 Instagram:「ayaka_arito」
撮影/高木亜麗
デザイン/日比野まり子
【特集】ホルモンの変化と上手につきあう(全5回)
- #01|中医学の体質をチェックして、漢方&アロマでホルモンバランスを整える
- #02|生活に中医学の知恵を取り入れる、体質別アドバイス<ツボ解説付き>
- #03|俳優・熊谷真美さんが語る、心とからだに向き合う方法<前編>
- #04|俳優・熊谷真美さんが語る、心とからだに向き合う方法<後編>
- #05|製薬会社に聞いたホルモン治療最前線