2023.12.06

【特集】ホルモンの変化と上手につきあう#03

俳優・熊谷真美さんが語る、心とからだに向き合う方法<前編>

OTONA BODY BOOK 編集部

年齢を重ねてなお、明るくはつらつとした表情が印象的な熊谷真実さん。でも実は「ホルモン年齢、120歳」と言われ、心身の不調に悩んでいた時期もあったのだそう。そのときに何が起こっていたのか、どうアプローチしたのか、前編と後編の2回に分けて、じっくりお話しいただきました。

まず最初は、
ホルモン補充療法の塗り薬を

「小さなころからからだが弱くて、鎮痛剤などつねに薬に頼る生活を送っていました。改めて不調を感じ始めたのは、40代半ばぐらい。更年期特有のからだのだるさに加えて、気持ちの浮き沈みも感じるようになりました。思い返すと、当時は自分のことがあまり好きではなかったかも。体力がガクンと落ちてしまったこと、見た目のハリやツヤが失われていくこと…そんな加齢による変化をうまく受け入れることができなかったのだと思います」

鬱々とした気分が続くなかで、「このままではいけない」と一念発起。さまざまな検査を受けてみたり、生活環境を見直してみたりなど、自分のからだと向き合うことを始めたのだそう。

「そのとき、ある検査でこう言われたのです。『あなたのホルモン年齢は120歳レベルです』と。こんなにしんどいのはあたり前。そのときの私はカラカラの砂漠で一滴の水を求めてさまよっているような状態だったのです。そこで提案されたのが、ホルモン補充療法でした。補充する方法はいくつかありますが、飲み薬には抵抗があったので、塗布するタイプの薬を選択。それを続けるうち、少しずついろんなことが改善されていったように思います」

熊谷さんいわく、「ホルモン補充療法を含めたいろんなアプローチが、総合的に功を奏したのだと思う」とのこと。では実際に、どんなことを心がけていたのでしょうか。

熊谷真実さん

摂取したら排出する。
そのバランスが大切

「私がまず意識したのは、食生活です。ある検査で『疲れやすいのはタンパク質が不足しているせい』と指摘され、それからプロティンの摂取を心がけるようになりました。今、朝にプロテインにMCT(中鎖脂肪酸油)の粉末を混ぜたものをとり入れています。あとはスムージー。小松菜やりんごなど野菜や果物をメインに、酵素をブレンドするというのがマイレシピですね」

お昼ごはんは、おなかがすいたと思ったら、小さなおにぎりをつまむ程度だそう。夜はその分、野菜をたっぷり。会食も多くありますが、そのときはバランスを見ながら、周囲に合わせて、美食を楽しむのだとか。

「あとは、アレルギー検査で卵、牛乳、小麦粉に反応するという結果が出てしまったので、甘いものも控えるようにしています。私がおすすめしているのは、まず2週間甘いものをやめてみるというアプローチ。2週間後に市販のお菓子などを口にしてみると『こんなに甘かったの?』とその刺激の強さに驚くはず。私の場合、それでも口さみしくなったときは、ピーナッツバターをひとなめします。すると案外満足するものなのですよね」

それでも「映画館に行くと、ついつい甘じょっぱいポップコーンに手が出てしまったり…そんなことももちろんありますよ」と笑う熊谷さん。そのときは、翌日に酵素風呂へ出向くのだそう。食べたいという気持ちに逆らいすぎず、摂取しすぎたものを排出する自分なりの方法をもっておく。そのバランスが大切だと教えてくれました。

熊谷真実さん

愛し愛されることが、
すべてを満たしてくれる

「閉経を迎えると異性に興味をもつことも減ってしまうし、『私なんかもう女じゃない』なんて思ってしまうこともありますよね。これは科学的な話とはまた別ですが、私自身はホルモンの分泌に愛の存在は必要不可欠だと思っているんです。ホルモンの値が下がりつつあることを嘆く前に、まずパートナーや恋人など、愛する人に優しい言葉をかけてみてはどうでしょう。長年連れ添った旦那さんも薄目で見たりして(笑)、どこかかっこいいポイントを見つけてみてください」

愛の大切さを実感する熊谷さんは、「シングル女性ならば、恋のアクシデントは迷わず当たっておくべし」とアドバイスするのだとか。その甲斐あって、今年60代のカップルを2組も成立させたのだそう。

「大切なのは自分の笑顔を増やすこと。老いは必ず訪れるもので、その階段はだれしも下らなければならない。ならばホルモンの補充や食生活の改善、さらに愛し愛されることで、その段差を小さくしてみる。そうやって少しでもなだらかに、軽やかに、楽しみながら、下っていきたいと思うのです」

熊谷真実さん
  • 熊谷真実(くまがい・まみ) 俳優・タレントとして、映画、ドラマほか幅広い分野で活躍。1979年NHK朝の連続テレビ小説『マー姉ちゃん』の主役に抜擢され、同年製作者協会「エランドール賞」を受賞。2016年『マンザナ、わが町』で紀伊国屋演劇賞・読売演劇賞受賞。2020年夏から静岡県浜松市に移住。2020年11月27日から『浜松市やらまいか大使』に就任。2021年6月から『静岡県観光プロモーション 観光PRメッセンジャー』に就任。
構成・文/本庄真穂
撮影/高木亜麗
ヘア&メーク/坂田佳子
デザイン/日比野まり子