女性の心身に大きな変化が訪れるのが、更年期というシーズン。これまでずっと大切に向き合ってきた心とからだが、まるで自分のものではないように感じ、戸惑ってしまう人も。「更年期は、閉経を挟んだ前後10年という長いスパンであること、さらに症状がひとりひとり異なることを踏まえて、その人自身の『体質』を見極めた、適切な養生が必要になります」
そう語るのは、中医アロマセラピストの有藤文香さん。ホルモン特集#01では、チェックリストで自分の体質を見極めたのち、体質別おすすめの漢方とアロマを教えてもらいました。引き続き#02では、すこやかに暮らすためのライフスタイルティップスをご紹介。おすすめのツボと取り入れたい食材、さらに生活のワンポイントアドバイスを伺います。
●気の巡りが悪く、イライラが止まらない
肝気鬱結(かんきうっけつ)タイプ
おすすめのツボは…
太衝(たいしょう)
足の親指と人差し指の骨の間を、指で軽くなぞり自然と指が止まる位置にあります。「肝」の経路にあるこのツボを押して気を巡らせましょう。手の親指を使うのではなく、人差し指を軽く曲げ、その第二関節でなぞるように刺激するのがコツです。
おすすめの食材は…
オレンジやみかんなどの柑橘類、マーマレード、ミント、菊花、大葉、ジャスミン、三つ葉、わかめ、あさり、しじみ、お酢、梅
「肝」の気の流れをよくする作用のある、香味野菜や酸味のある食材を積極的に摂取しましょう。また「肝」の色は青。青々と生い茂った木をイメージさせる、緑黄色野菜や葉物野菜もおすすめです。
すこやかに暮らすコツは…
ストレスをためないこと。
没頭できる趣味などをもつといいでしょう。また「肝」の液体は「涙」。泣ける映画やドラマを観て涙を流すだけでも、気持ちがスッキリするはずです。
●エネルギー不足ですぐに疲れてしまう
気血不足(きけつぶそく)タイプ
おすすめのツボは…
三陰交(さんいんこう)
足の内くるぶしから指の幅4本分上に行ったところにあるツボで、婦人科系の不調にアプローチする万能穴とされています。このツボは押すだけでなく、冷やさないようにすることも大切。レッグウォーマーなどであたためるとよいでしょう。
>三陰交のツボ解説はこちら
おすすめの食材は…
大豆、米、じゃがいも、人参、ほうれん草、卵、鶏肉、レバー、なつめ、枸杞(くこ)、レーズン、リンゴ、ぶどう
「気」と「血」を補ってくれる、自然の甘みがある、温性の食材がおすすめです。このタイプは胃腸の力が落ちているので、消化にいいものを少しずつ食べるようにしましょう。体温より低い温度のものを口にする場合は、よく噛んで口の中であたためるようにしてください。冷たい水はもってのほか、あたたかい白湯などがいいでしょう。
すこやかに暮らすコツは…
人に気を遣いすぎないこと。
人と接するときは、エネルギーを発散しすぎないようにしましょう。気を遣うことは、「気」を消耗してしまうことにつながることを覚えておくといいかもしれません。
●老化と体液不足が原因で、ほてってしまう
肝腎陰虚(かんじんいんきょ)タイプ
おすすめのツボは…
湧泉(ゆうせん)
足の指を曲げたとき、足の裏にできるくぼみで、「腎」の始まりのツボになります。下に押し込むのではなく、指先に向かって押し上げるようにするのが、うまく刺激するコツです。
おすすめの食材は…
くるみ、黒ゴマ、黒豆、松の実、枸杞(くこ)、山芋、黒きくらげ、すっぽん、牡蠣、昆布、おくら、梨、トマト
精血と陰を補い、熱を冷ましてくれる食材がよいでしょう。このタイプは潤いが不足しているので、水分を発散してしまうジンジャーやシナモンなどのスパイスは、なるべく避けたほうが無難。また水分を欲したときは、保水効果がある果物を摂取するのもおすすめです。
すこやかに暮らすコツは…
早く眠りにつくこと
陽の時間は日の出とともに始まり、陰の時間は日没とともに始まります。「陰」が不足しているこのタイプは、陰の時間に眠ることで、それを補うことができます。夜ふかしはNG、なるべく早く眠りにつくとよいでしょう。
●血行不良により、血流が悪くなっている
瘀血(おけつ)タイプ
おすすめのツボは…
血海(けっかい)
足のひざの内側にあるお皿から、指3本分くらい上の場所にあります。親指でゆっくりと押すことで血流アップする効果があります。ぜひ習慣にしてみてください。
おすすめの食材は…
青魚、豆類、納豆、海草類、よもぎ、シナモン、紅花、しょうが、ねぎ、らっきょう、なす、黒糖
血行を促進し、からだをあたためる食材を摂取するとよいでしょう。気をつけるべきは、スイーツ、油物、アルコール類。血の巡りが滞る原因となるので、できるだけ避けて。喫煙はもってのほかです。
すこやかに暮らすコツは…
運動を習慣にすること
筋肉を動かすと、血の巡りもよくなります。ウォーキングやヨガなどの有酸素運動で、ぜひ気血を巡らせてください。それができない場合は、湯船に浸かりましょう。からだをあたためるだけでなく、水圧が加わることで、血行が促進されます。
- 有藤文香(ありとう あやか) 株式会社Xiang代表。星薬科大学卒業後、製薬会社でMRとして勤めたのちに渡英。東洋医学を取り入れたアロマセラピー代替医療を学ぶ。帰国後、漢方とアロマセラピーを融合させた「中医アロマセラピー」を体系化し、漢方クリニックを併設した総合サロン『Xiang』を設立。未病先防により、家庭の中から日本の医療を変えていくことをモットーに、中医アロマ・漢方薬・薬膳のコンサルティングなどを行うほか、スクールを主宰し、中医アロマセラピストの育成に力を注ぐ。 Webサイト:「中医アロマセラピーサロン シャン(Xiang)」 Instagram:「ayaka_arito」
撮影/高木亜麗
イラスト/中根ゆたか
デザイン/日比野まり子
【特集】ホルモンの変化と上手につきあう(全5回)
- #01|中医学の体質をチェックして、漢方&アロマでホルモンバランスを整える
- #02|生活に中医学の知恵を取り入れる、体質別アドバイス<ツボ解説付き>
- #03|俳優・熊谷真美さんが語る、心とからだに向き合う方法<前編>
- #04|俳優・熊谷真美さんが語る、心とからだに向き合う方法<後編>
- #05|製薬会社に聞いたホルモン治療最前線