からだの「水毒」には、消化のいい食材を

薬膳の知恵できれいに〜レシピ付き

からだの「水毒」には、消化のいい食材を

「夏も近づく八十八夜」(2025年の八十八夜は5月1日)が過ぎ、春から夏へと変わりゆく季節です。からだが重い、だるいと感じたり、頭が痛い、むくんで指輪が入らない、と感じることはありませんか?

急に湿度が高くなったために、からだが湿度調節できない、湿度についていけないことが原因かもしれません。

中医学では、「湿」がからだに溜まっている状態を「水毒」、あるいは「水滞」といいます。気・血・水の流れが滞りなく流れていることが健康であるとされていますが、からだの中に小さな「水たまり」ができて、それが流れずによどんでいる状態です。西洋医学の中毒とは違い、不要なものが溜まって、巡りをさまたげるという意味です。

私たちには先祖の代から長年住んだ場所の気候に応じて、その土地土地に合うようにからだがつくられています。しかし、昨今の気象異常で、日本は温暖化からさらに亜熱帯化し、高湿度な環境になってきました。

そもそも四方を海に囲まれて暮らしてきた日本人は、湿度に弱い民族です。この亜熱帯環境に私たちのからだが慣れるよう、からだが進化するにはかなり時間がかかるでしょう。進化することを待つことはできないので、積極的にからだから湿を取り除く対策を自ら行っていきましょう。

中医学では湿は「」に影響するといわれています。
中医学の「脾」は、脾臓のことではなく、胃・消化器系のことをいいます。

「脾」を守り、湿を取り除くには、
❶消化の良いものを食べる。
❷利水作用のあるものをとる。
❸汗をかく。
❹からだの深部を冷やさない。

この4つのポイントが重要です。

❶消化の良いもの
おかゆやうどん、たんぱく質類であれば、白身、赤身の魚や肉類、豆腐類などの大豆製品、バナナ、ヨーグルトなどです。

❷利水作用のあるもの
ハトムギ、冬瓜、小豆、とうもろこしなど。おすすめは、普段のお茶をハトムギ茶にすることです。

❸汗をかく。
お風呂に入る際に、湯船に10分以上浸かる。軽いウォーキングなどの運動をする。ヨガなどの腹式呼吸の運動をする。

❹からだの深部を冷やさない。
冷たいものを飲まない。生姜、大葉、ねぎ類、いわゆる「薬味」を多めに取る。

今回ご紹介するレシピはカツオの玉ねぎ大葉ドレッシングがけです。

今月のレシピ
カツオの玉ねぎ大葉ドレッシングがけ

カツオの玉ねぎ大葉ドレッシングがけ

<材料>(2人分)
カツオのお刺身……200g

玉ねぎ大葉ドレッシング
玉ねぎ……75g
大葉……10枚
塩……小さじ1/3
砂糖、りんご酢……各大さじ1
米油 または オリーブオイル……大さじ1・1/2

作り方
❶カツオは食べやすい大きさに切る。

❷玉ねぎ、大葉は粗みじん切りにし、その他のドレッシング材料とよく混ぜ合わせる。

❸❶を器に盛り付け、❷をかける。

カツオは、気血を補うとともに、胃・消化器系を整えます。お疲れ気味の方にもおすすめの食材です。玉ねぎ、大葉はともに気の流れを良くし、からだをあたため、消化を助けます。

旬の食材を食べて、日々のちょっとした工夫で、湿をからだから出して、快適に暮らしていきましょう。これがまさに薬膳です。

  • 橋本加名子(はしもと かなこ) 料理研究家、栄養士、フードコーディネーター、国際薬膳調理師。タイ料理、ヴィーガンタイ料理、和食、発酵の料理教室「おいしいスプーン」を主宰。『老けない体をつくる! たんぱく質の10分おかず』(ART NEXT)ほか著書多数。新刊『魔法の万能調味料 玉ねぎ麹レシピ』(河出書房新社)が好評発売中。食べてからだを調える「養生・ベジ発酵薬膳クラス」、「ヴィーガンタイ料理・ベジタイ指導者クラス」開催中。
    サイト:「おいしいスプーン」oishi-spoon.com
    Instagram:kanakohashimoto1
文・写真/橋本加名子(料理研究家、国際薬膳調理師・栄養士)
イラスト/いしわたりきわこ
デザイン/WATARIGRAPHIC