猛暑後半戦の夏バテ対処法〜薬膳レシピ付き

薬膳の知恵で乗り切る!<前編>

記録的な暑さだった今年の夏も終盤にさしかかり、気になってくるのが夏バテ。そもそも夏バテとは、「からだに熱がこもって体温調節ができなかったり、屋内と屋外の気温差などで起こる体調不良のこと」。あなたも思いあたることはありませんか? そこで、薬膳の知識を取り入れながら、夏バテとそこからくる未病を防ぎ、からだを整える知恵をご紹介します。

❶からだの中の湿熱(※1)を取る

からだに「湿」がたまるということは、余分な水分が溜まる=むくむということ。からだの中を除湿し、こもった熱を取ることが大切です。緑豆、小豆、ハトムギ、とうもろこしなどが除湿にいい食材。熱を取る食材はなんといってもなす、きゅうり、トマトなどの夏野菜です。苦味のある苦瓜は湿も熱も取ってくれます。蕎麦と鴨も熱取り食材で、鴨南蛮は夏に食べるととてもよい薬膳料理です。ただし、熱を取るからといって、冷たいものの取りすぎには注意。胃腸にダメージを与えます。

※1 湿熱とは…高温多湿という日本の風土の影響を受けて、体内に不要な「水」と「熱」が溜まった状態のこと。体内のめぐりを邪魔して、さまざまな不調につながる。

おすすめ料理
とうもろこしとセロリの炊き込みごはん
…とうもろこしの芯も一緒に炊き込んで、塩で味を調えて。

とうもろこしとセロリの炊き込みごはん

<材料>
とうもろこし・セロリ……各1本
米……2合
酒……大さじ2
塩……小さじ2/3
水……2カップ
黒こしょう……適量

❷気(エネルギー)を補う

「気」とは、目には見えないけれど人間のからだに大切なエネルギー。屋内外の気温差にからだがついていかないと、気が消耗されます。気が減ってくると、疲れやすい、だるい、眠いなどの「だる重」症状が。

気を補う食材は、穀物、芋、豆、かぼちゃなど、ホクホク食材やキノコなど。アボカドや海老も補気し、胃腸をあたためてくれます。ミネストローネの材料をいつもより細かく切り、押し麦や大豆と一緒に柔らかく煮れば、気を補い、からだの熱を取る夏の最強スープになります。

おすすめ料理
かぼちゃと小豆のココナッツ汁粉
…ココナッツでかぼちゃとゆで小豆を煮て、はちみつで甘みをつけます。

かぼちゃと小豆のココナッツ汁粉

<材料>
かぼちゃ……100g(約1/10個分)
ゆであずき……1/4カップ分
ココナッツミルク……1カップ
はちみつ……適量
塩……少々

❸酸味をとる

酸味をとることにより、汗が止まらない、おなかをこわす=「漏れ」を防いで潤いを保つことができます。汗をかくことは体温調節をするために必要な機能ですが、過剰な発汗は気を消耗し、「だる重」の原因に。

朝ごはんの納豆に梅干しを加える、水を飲むときにレモンを絞る、いつものサラダのドレッシングに少し酢を足すなど。ちょい足しで工夫してみるといいですよ。

❹胃腸を調える

「湿」に弱い臓は「脾(ひ)」(※2)。日本は四方を海に囲まれている島国。日常的に湿の影響を受け、脾が弱い民族です。夏は湿度により胃腸が弱り、食欲が落ちて必要な栄養素やエネルギーが不足。体力も落ちてしまいます。

脾の働きを助けてくれる食材は、米、じゃがいも、山芋(長芋)、枝豆、オクラ、とうもろこしなど。少し甘みのある食材も脾の疲労回復をしてくれます。アボカド、海老、マグロ、きのこ類も一緒にとるとより効果が期待できます。

※2 脾…中医学の「脾」は一般的にいう脾臓のことではなく、胃腸を含めた消化器全般の機能をさす。食べ物の消化吸収を行い、栄養を全身を運ぶ働きをする。

おすすめ料理
アボカドとえびのサラダ とろろドレッシング
…すりおろした長芋にポン酢を混ぜてドレッシング仕立てに。

アボカドとえびのサラダ とろろドレッシング

<材料>
アボカド……1
無頭海老……10尾
山芋すりおろし……1カップ分
ポン酢しょうゆ……大さじ3
青のり……適量

  • 橋本加名子(はしもと かなこ) 料理研究家、栄養士、フードコーディネーター、国際薬膳調理師。タイ料理、ヴィーガンタイ料理、和食、発酵の料理教室「おいしいスプーン」を主宰。『老けない体をつくる! たんぱく質の10分おかず』(ART NEXT)ほか著書多数。新刊『魔法の万能調味料 玉ねぎ麹レシピ』(河出書房新社)が好評発売中。食べてからだを調える「養生・ベジ発酵薬膳クラス」、「ヴィーガンタイ料理・ベジタイ指導者クラス」各9月からスタート。
    サイト:「おいしいスプーン」oishi-spoon.com
    Instagram:kanakohashimoto1
文・写真/橋本加名子(料理研究家、国際薬膳調理師・栄養士)
デザイン/WATARIGRAPHIC