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  • 2022.11.30

成分で読み解く、乾燥ケアアイテムの選び方

ボディの乾燥が気になる人へ 〜後編〜

成分で読み解く、乾燥ケアアイテムの選び方

寒さが厳しくなるにつれ深刻化するボディの乾燥。前編につづき、その対策を皮ふ科医の松浦佳奈先生に伺いました。

ボディケアも成分で欲しい効果を選ぶ時代

さまざまなタイプの乾燥ケアアイテムがあるなかで、どれを選べばいいか迷うところ。「同じボディの保湿ケアであっても、配合された成分の特性によって肌に対する働きが違ってきます」と松浦先生。その違いを覚えておくと、アイテム選びの指針になりそうです。

「一般的に、保湿成分は大きく二つに分類されます。一つは、水分を吸着して保持し、肌表面にある角層の水分量を高める『モイスチャライザー』。もう一つは、肌表面を油分のベールで覆い、内側の水分蒸発を防いでやわらかな肌へ導く『エモリエント』です」。主な分類は下記のとおり。

モイスチャライザー
ヘパリン類似物質、尿素、乳酸、アミノ酸、ヒアルロン酸、コラーゲンなど
エモリエント
ワセリン、スクワラン、セラミド、シアバターなど


「親水性にすぐれたローションやジェル、美容液などは『モイスチャライザー系』に、油分が多く含まれる乳液やクリームなどは『エモリエント系』に分類されることが多いです。テクスチャー技術が進化している近年では必ずしもこの限りではありませんが、こっくりとした重めのテクスチャーであるほど油分の配合量が多く、肌の保護効果も高めと考えて間違いはないと思います」

潤いを補うモイスチャライザー、潤いを逃さないエモリエント、どちらのタイプなのかを製品の成分表でチェックして。

話題の成分、“ヘパリン類似物質“をフカボリ!

話題の成分、「ヘパリン類似物質」をフカボリ!

数ある保湿成分のなかでも、ここ数年で一気に人気に火がついたのが、ヘパリン類似物質。その実力とは? 「ヘパリン類似物質はモイスチャライザーに分類される保湿成分で、皮ふ科では以前から乾燥肌の処方薬として使われてきた安全性の高い成分です。ドラッグストアなどで購入できるヘパリン類似物質入りの保湿ケアと医師の処方薬では配合量が異なりますが、とにかく肌への浸透性が高く、さまざまな剤形に配合できる柔軟性がある。肌への刺激が少なく、ベタベタしないので、老若男女に使いやすいのも魅力です」(松浦先生)

ヘパリン類似物質に注目が集まる理由は他にも。「水分を引き寄せてため込む親水性にすぐれ、スピーディに角層の水分量を増やすことができるため、シールド効果や抗炎症効果も期待できる。乾燥が進んだ冬のボディ保湿としてもおすすめの成分と言えます。ただし、血行促進効果もあるため、使用に注意が必要なケースも。肌の赤みが出やすい人や亀裂のような症状があるときは、事前に皮ふ科医に相談してください」

こちらも医師のお墨つき! 安定の保湿成分

多くの患者を診てきた松浦先生のお墨つき成分は、他にもいろいろ。「セラミドはエモリエント成分でありながら水分をはさみこむモイスチャライザーの性質も備えています。肌の細胞間脂質の構成成分の一つなので肌なじみがよく、誰が使ってもトラブルが起こりにくい万能性も希少。セラミドの合成を促すナイアシンアミドやビタミンB3などと一緒に使うと、より高い保湿効果が期待できます」(松浦先生)

「肌の構成成分という意味では、尿素も天然保湿因子の一種であり、肌を潤しながらやわらかくする効果にすぐれた成分。ハンドクリームなどに入っていることが多いですが、ピリピリとした刺激を感じる人もいるので注意が必要です」

エモリエント成分を代表する一つが、ワセリン。「昔からあるワセリンは安価で刺激感がほとんどなく、非常に使いやすいですが、一方でベタつきが気になる人もいらっしゃいました。現在ではベタつきなどが改善された低分子のワセリンも出てきているので、ぜひ試してみてください」

塗る量と回数こそ、ボディ保湿の最重要ポイント

塗る量と回数こそ、ボディ保湿の最重要ポイント

「ボディの保湿ケアで何より大事なのは、塗る量と回数です」と松浦先生。「皮ふ科では“ワンフィンガーティップユニット“と言って、指のひと関節分のクリームを手のひら2枚分の広さに塗るのが適量とされ、朝と晩の1日2回使うことが推奨されています。乾燥していると、こまめに保湿を繰り返したくなりますが、摩擦などの過度な刺激を与えるので塗りすぎはよくありません」

また、塗り方にも指導が。「ボディの保湿は面積が広いこともあって肌にクルクル塗り込んでしまう人が多いのですが、塗り込んだからといって浸透するわけではありません。からだの内側から外側へ向けて、シワに沿って置くようになじませることで、刺激を与えることなく肌を潤すことができます」

効率よくボディを潤すには、重ねづけもおすすめ。「のばしやすいジェルやローションタイプでしっかり水分を補い、とくに乾燥が気になるひじ、ひざ、かかとなどにはクリームやオイルを重ねるとよりしっとり潤すことができます」

ボディケアは自分をいつくしむ時間

「肌のコンディションは日々、変化します。からだの一番外側の臓器である皮ふは内面を写す鏡であり、体調の変化も如実に表れます。乾燥に気づかぬふりをしていると、たるみや黒ずみの原因になるだけでなく、バリア機能が低下してアレルゲンが入りやすくなり、皮ふ疾患につながることも。自分の肌と向き合い、触れることで、幸せホルモンの分泌を促せるという実証データもあります」(松浦先生)

まずは、朝晩の正しい保湿から。がんばりすぎて三日坊主にならないよう、お手入れのコツをマスターしましょう。見えないからケアしないではなく、見えないところも美しい「誇れる自分」であるために。

  • 松浦佳奈(まつうらかな)
  • 松浦佳奈(まつうらかな) 自由が丘クリニック 皮ふ科部長
    聖マリアンナ医科大学病院 皮ふ科医長を経て、2020年より現職に。シミやホクロ、ニキビなど、あらゆる肌の悩みに精通し、一人一人に寄り添った最適な治療や施術、スキンケアのアドバイスにも定評のある名医。美容成分にも明るく、症状に合わせて化粧水やクリームを調合するなど、ドクターズコスメの開発も手がける。
取材・文/田中あか音
イラスト/naohiga
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC