成長ホルモンのシャワーでキレイになる!

特集/眠りと美の深い関係

先生/内海裕子(睡眠改善シニアインストラクター)
取材・文/大庭典子(ライター)

Image 「日本人の睡眠時間は世界でもワーストクラス」「日本人の3人にひとりは睡眠の悩みを抱えている」
...なかなか悩ましい日本人の睡眠事情。しかも、睡眠は量だけでなく、その質次第で仕事の効率も美容の効果にも大きな差が生まれるそう! 引き続き、睡眠改善シニアインストラクターの内海裕子さんにお伺いしました。

徹夜明けの表情が5~6歳老けて見えるそのワケは...

まず覚えていてほしいのは、脳の休息は睡眠からしか取れないという事実。瞑想してもボーっとしてみてもダメ、脳を休息させ、回復させる方法はただひとつ、睡眠なのです。

そして、脳は、からだすべての司令塔です。睡眠不足の状態は、すなわち脳が休まっていないということですから、当然、疲れた脳では、筋肉への制御や指令も鈍ってしまいます。徹夜明けの顔がたるんでいたり、締りがないように見えるのは、疲れた脳が引き起こす現象なのです。

眠り始めに"成長ホルモン"が多量に出ている!

そして、睡眠は肌のハリや艶にも大いに影響を与えています。そのメカニズムを説明する前に、一晩の睡眠のリズムについて簡単に説明をします。レム睡眠とノンレム睡眠という言葉、聞いたことがある人も多いですよね。

レム睡眠とはRapid(急速) Eye(眼球) Movement(運動) sleep の頭文字を取ったものですが、その名の通り、急速に眼球が動いている状態。心をメンテナンスし、記憶を整理固定し、脳を活性化させる眠りです。

ノンレム睡眠とはレム睡眠の逆で、眼球が急速に動いていない眠り。脳を休息させ、からだの修復再生を促し、しっかり休んでいる状態です。

人は眠りに入ると、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返します。その周期は平均すると約90分と言われており、たとえば6時間睡眠の人だったら、4周期を経て朝を迎えるというわけです。

また、一晩の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を単調に繰り返しているわけではなく、眠り始めに深い眠りが訪れ、そこからゆるやかに少しずつ浅い眠りになっていき、朝を迎えます。眠り始めに深い睡眠が訪れる、ここがとても大事なポイント。

そう、この入眠直後の深い睡眠時こそ、お肌を美しくするゴールデンタイム。深い睡眠が肌のキメの細かさや弾力や艶を引き出してくれるのです。それはなぜでしょう。

それには"成長ホルモン"が大いに関係しています。成長ホルモンとは、肌の再生や修復を担い、弾力のある肌を保ち、潤いをもたらし、疲労回復させてくれる、まさに若々しさや美しさには欠かせない大切なホルモンのこと。

この成長ホルモンが一日のなかでいちばん出るのは、入眠直後の深い睡眠時。入眠後"深い眠り"に達したことを合図にして、からだは、成長ホルモンを一気に多量に分泌します。

いつまでもうとうとした状態でなかなか熟睡できないという人は、成長ホルモンがだらだらと出た状態で、深い睡眠なら短期間に多量に出るはずのその恩恵を十分に受けられません。

よく夜10時~2時が肌のゴールデンタイムと言われていますが、この時間帯に眠ることが大事なわけではなく、何時であろうが、成長ホルモンがたくさん出ている入眠直後に熟睡できるような眠りをとることが大事なのです。質のいい睡眠で成長ホルモンシャワーを浴びて、肌艶のいい美しい女性でいたいですよね。

睡眠不足は太るモト?!

睡眠不足のときに妙にお腹がすくという事態は身に覚えがある方も多いはず。実は、睡眠不足は太りやすいというデータがあります。コロンビア大学が行った32~59歳の男女8000人を対象にした疫学調査では、睡眠時間が7~9時間の人に比べて4時間以下では73%、5時間以下で50%、6時間以下で23%も太りやすいという結果に。

睡眠不足になると、からだの中では...
◆食欲を抑え、代謝を促進するホルモン「レプチン」が減少
→食べたい衝動が強まり、代謝は悪くなる
◆食欲を高めるホルモン「グレリン」が増加
→食欲が増進

こんな事態が起きてしまうのです。表情の美しさ、肌のハリや弾力、さらにはダイエットにまで、睡眠の量と質はこんなに密接に関係があるのです。睡眠をないがしろにして、真の美しさは叶いません。ぜひ、見直してみてくださいね」

睡眠を満足に取らずに高い美容液を塗ってみたり、眠らない方がカロリーを消費して痩せそう...と夜遊びをしてみたり、どれもこれも本末転倒ですね。どんな美容液にも勝るとも劣らない「成長ホルモン」のシャワーを浴びて、食欲も抑え、生き生きとした表情で生活できたら...夢は膨らむばかり。睡眠の奥深さを実感したところで、これからはいよいよグッドスリーパーになるための実践編へ!

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内海裕子 睡眠改善シニアインストラクター、早起きコーディネーター、睡眠健康指導士、睡眠環境診断士の資格をもち、自由大学にて「睡眠学」の講師として教鞭を振るう。朝からはじまるライフスタイル提案サイト「朝時間.jp」元編集長。睡眠に関する正しい環境や生活習慣の提案やアドバイスをメディアや講演を通じて広めている。著書に『快眠のための朝の習慣・夜の習慣』(白川修一郎氏監修/大和書房)等多数。
公式HP
http://hirococoro.com/

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