2024.08.21

【特集】更年期世代に必要な「脂質」の知識 #05

油を賢く取り入れて、食生活で美しくなる

管理栄養士 伊達友美先生

管理栄養士として、これまで33年にわたってさまざまな人の食事をアドバイスしてきた伊達友美先生。食べたいものを制限するのではなく、代謝アップのための栄養をプラスしていくという指導をモットーにしてきました。更年期世代の女性は何を食べるべきか。脂質の視点から語っていただきます。

季節の魚介類には
良質なアブラが豊富

「人間は食べたものでできている」とは、まさにそのとおりで、さまざまな更年期症状は、日々の食事で改善できると私は考えています。まずおすすめしたいのが、魚介類です。それも「旬」の魚を食べることをおすすめします。もちろん、サバやサンマなどの青魚類もよいですが、味わいがやや苦手な人もいますよね。そんなときは旬の魚を選べば間違いありません。季節の魚は脂がのっていて、DHAやEPAの量も多く含まれるのです

あとはカキ、ホタテ、アサリなどの貝類もいいですね。意外かもしれませんが、イクラやタラコなどの魚卵も良質な脂が豊富なのでおすすめです。ただシーフードすべてにおいて大切なのが、フレッシュな状態で食べること。加熱すると酸化する可能性があるので、お刺身やカルパッチョ、お寿司など、生で食べるメニューを選ぶのが理想的です。

ナッツ、くるみ、干し柿も効能大!

あとはナッツ類ですね。ナッツはたくさんの種類があって、それぞれに含まれる油の種類が違います。「オメガ3系脂肪酸」をいちばん多く含むのはクルミ。よく見ると形が脳みそに似ているので、脳にいい影響を与えるといわれています。あとはピーナッツやカボチャの種、ピスタチオにも少量含まれていて、アーモンドやカシューナッツにはあまり含まれていないようです。ちなみにクルミは消化が難しいので、よく噛んでペースト状になってから飲み込むことを心がけてください。

あとはぜひフルーツをおすすめしたいですね。というのも果物の種には「オメガ3系脂肪酸」が含まれるからです。たとえばイチゴ、キウイ、いちじく、ドラゴンフルーツなど、つぶつぶの種をそのまま食べる果物をぜひ取り入れてみてください。

個人的に、日本が生んだスーパーフードは「干し柿」だと思っています。なぜかというと、柿は生で食べるときは種を捨ててしまいますが、干し柿は種ごと熟成させるので、種の油が果肉に染み出して、その油を丸ごととることができるからです。余談ですが、「柿の種」というお菓子は、干し柿の種の形を模しているそう。元は丸い種があそこまで細くなるのですから、栄養分が果肉に出ているイメージもしやすいでしょう。

注意すべき油、
そして注目すべき油は?

一方で、とるべきではないと考えている油も挙げておきます。それが#04でご説明した「飽和脂肪酸」にあたるココナッツオイルを、透明の液体状に生成、加工したMCTオイルです。一時期話題になったので、手元にある方も多いかもしれませんね。使い方に迷ったなら、ぜひボディオイルとして活用してください。飽和脂肪酸は皮脂となじみがいいので、カサカサした手やひじ、ガサガサのかかともしっとりケアできるでしょう。

最後に、私が今注目していて、かつハマっているオイルを紹介しましょう。それがカナダのカメリナ・サティバという植物の種子を原料にした「カメリナオイル」です。「オメガ3系脂肪酸」と「オメガ6系脂肪酸」をバランスよく含み、その比率は2:1。「オメガ3系脂肪酸」摂取を考えると理想的な油といえます。何より天然抗酸化成分のビタミンEがオリーブオイルの5倍以上。加熱しても酸化しにくく、常温で保存でき、冷蔵庫に入れる必要がありません。海外輸入食材店やネットスーパーで扱っているので、ぜひ探してみてください。

よい油は、
健康寿命を延ばしてくれる

2020年に厚生労働省が発表した、年代別「オメガ3系脂肪酸」摂取量は、かなり興味深い数字になっています。18~49歳の男性は2.0g、女性は1.6g、50~64歳の男性は2.2g、女性は1.9g、65~74歳の男性は2.2g、女性は2.0g。本来どの栄養素も、年齢とともに摂取基準量は下がっていくものですが、「オメガ3系脂肪酸」は、逆に上がっているのです。いったいなぜでしょうか。

理由は、脳に含まれる脂質の状態が脳機能に影響しているという研究発表があったから。アルツハイマー型認知症で亡くなった人の脳を調べたところ、「オメガ3系脂肪酸」が少なかったというデータもあります。脳の成分は水分を除けば、最も多いのが脂質、つまり油分だといわれています。脳は脂でできているので、そのモトになる食べる油が重要というわけです。自分の脳も自分の食べたものでつくられる。健康寿命を延ばし、生活の質を高めるためにも、よい油を選んでとるようにしましょう。

  • 伊達友美 管理栄養士、日本抗加齢医学会認定指導士、戸板女子短期大学食物栄養科ビューティ&ウェルネス講師。33年間、ダイエット、フェムケア、メンタルケアの食改善アドバイスを行う。制限型ではなく代謝アップ栄養をプラスする「プラス栄養メソッド®」が基本の指導法は女性を中心に人気。『女性の不調は「油+」でよくなる』(青春出版社)ほか著書多数。 伊達友美オフィシャルサイト

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構成・文/本庄真穂
デザイン/日比野まり子
イメージ写真・イラスト/stock.adobe.com