2024.08.14

【特集】更年期世代に必要な「脂質」の知識 #04

いい油と悪い油の見分け方、教えます

管理栄養士 伊達友美先生

日常生活でどんな「油」や「脂」を摂取しているか、あらためて意識したことはあるでしょうか。実は、世の中にはよい油と悪い油が存在し、更年期を迎えた女性こそ、その知識を深め、日々の食事に活かすべきなのです。そこで管理栄養士の伊達友美先生に、どんな油をどのように取り入れればいいのか、具体的に指南してもらいました。

油は私たちのからだを動かすエネルギー

「女性の一生は油で決まる」。私は本気でそう考えています。まず女性のからだを司る女性ホルモン。そのモトはコレステロールで、脂質とたんぱく質などからつくられています。コレステロールというとからだによくないイメージもありますが、女性にとってはとても大切なもの。だからこそ、どんな油をどのようにとるかが大きく影響するのです。

女性ホルモンだけではありません。心臓は、ドキンドキンと動くたびに油を使っています。腸も同じで、ぜん動運動をするのに油を使います。油が足りなくなるとその動きが鈍くなるので、便秘の人は特に注意が必要ですね。皮脂のもとも、油です。肌の潤いは水分が重要といわれますが、水分をキープする「保湿力」にも油が重要。肌のハリツヤは、油が左右しているのです。

取り入れるべきは
「オメガ3系脂肪酸」一択!

ではさっそく、私たちが食生活でとるべき油について、上の図とともに説明しましょう。その見分け方のわかりやすい例が、常温で固まっているかどうか。固まっているタイプの脂質は「飽和脂肪酸」と呼ばれ、表のいちばん上に記されているものです。常温で液体の脂質は「不飽和脂肪酸」と呼ばれ、「一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)」と「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。「多価不飽和脂肪酸」はさらに「オメガ6系脂肪酸」と「オメガ3系脂肪酸」のふたつに分かれます。

では、どの油をとり入れるべきなのでしょうか。私は基本的に、からだの中でつくることができる脂肪酸は、口からとる必要はないと考えています。バターや肉の脂身、ココナッツオイルなどの「飽和脂肪酸」、またオリーブオイルなどの「一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)」、要は表の赤い線より上のものは、意識的に取り入れる必要はないと考えていいでしょう。

私たちがとるべきなのは、「多価不飽和脂肪酸」です。これらは体内でつくることができないので「必須脂肪酸」と呼ばれているほどです。まずひとつが大豆油やコーン油などに多く含まれる「オメガ6系脂肪酸」で、「リノール酸」とも言われます。ただ調理用に多く使われているので、それほど不足することはないと考えられます。

いちばん意識すべきなのは、ずばり「オメガ3系脂肪酸」で、「リノレン酸」と呼ばれるものです。えごま油、あまに油、しそ油などに多く含まれていて、体内でDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変わります。炎症を抑えたり、血液をサラサラにしたり、皮膚や粘膜を整えたり、女性ホルモンのバランスを調整したりなど、さまざまな健康効果があるといわれているのです。

毎日小さじ1杯半の摂取で十分

ただ、「オメガ3系脂肪酸」のえごま油、あまに油、しそ油などは、取り扱いに注意が必要です。非常に繊細な油のため、フレッシュボトルのものやアルミの分包タイプなどを選び、できるだけ酸化しないように気をつけましょう。封を開けたものは冷蔵庫で保管し、できれば1カ月半ほどで使い切ること。まとめ買いした未開封のものは、冷凍保存もおすすめです。

また、加熱すると一気に酸化が進み、炎症を大きくして、細胞を老化させる原因に。頭痛は頭の炎症、腰痛は腰の炎症、ニキビや赤み、かゆみは肌の炎症ですから、炎症トラブルをひどくしないよう、必ず生の状態で摂取しましょう。サラダのドレッシングなどにしてもいいですし、私は納豆やお味噌汁、煮物にさらりとかけていただいています。また、加熱調理にも使えるオメガ3リッチなオイル「カメリナオイル」も活用するとよいでしょう。

「オメガ3系脂肪酸」の1日に必要な量は、年代によって差があるものの、だいたい2グラム程度です。えごま油なら小さじ1杯ぐらい。意外に少ないですよね。良質なオイルは、そんなに大量に必要なものではありません。まずは少しずつ取り入れて、毎日の習慣にしてみてください。

次回は、油を賢く取り入れて、食生活で美しくなるアプローチについて、教えていただきます。

  • 伊達友美 管理栄養士、日本抗加齢医学会認定指導士、戸板女子短期大学食物栄養科ビューティ&ウェルネス講師。33年間、ダイエット、フェムケア、メンタルケアの食改善アドバイスを行う。制限型ではなく代謝アップ栄養をプラスする「プラス栄養メソッド®」が基本の指導法は女性を中心に人気。『女性の不調は「油+」でよくなる』(青春出版社)ほか著書多数。 伊達友美オフィシャルサイト

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構成・文/本庄真穂
デザイン/日比野まり子
イメージ写真・イラスト/stock.adobe.com