2024.08.07

【特集】更年期世代に必要な「脂質」の知識 #03

おとなの「脂質」は、食生活で変わる!

「あゆみクリニック」 宮沢あゆみ先生

更年期にはこれまで女性の健康を守ってくれたエストロゲンが減少することによって、不摂生をしていなくても、コレステロールの値がグッと上がることも! 女性のからだと向き合ってきた「あゆみクリニック」の宮沢あゆみ先生に、脂質異常症を防ぐために、食生活で気をつけるべきことを教えてもらいました。

魚類性脂肪や食物繊維で
コレステロール対策を

若いときは、暴飲暴食やカロリー過多の食事をしても、脂質異常症のリスクを背負うことは多くありませんでした。ただ更年期を迎えたなら、その考えはもうNG。女性ホルモンの減少によって健康が守られなくなった今、食生活をしっかり見直す必要があるのです。

まず心がけるべきは、低カロリー、低脂肪食です。脂肪に関しては、動物性脂肪よりも植物性脂肪、また魚類性の脂肪をとるように心がけましょう。具体的には、肉や乳製品などの飽和脂肪酸はなるべく避けたほうがいいですね。不飽和脂肪酸と呼ばれるEPAやDHAは中性脂肪や悪玉コレステロールの生成を抑えてくれ、血液をサラサラにしてくれます。サバやイワシなどの青魚に含まれるので、意識的にとるようにしましょう。

また、心がけたいのが食物繊維です。野菜類、海藻類、キノコ類に含まれる食物繊維は、腸内でコレステロールの吸収を妨げる役割を果たします。腹持ちがいいのも特徴のひとつで、私はまず食事の最初に食物繊維をとることをおすすめしています。

日々の食事に欠かせないのが
大豆食品

加えておすすめなのが、大豆食品です。大豆に含まれているイソフラボンは「天然のエストロゲン」と呼ばれていて、体内で女性ホルモンと似た働きをしてくれます。さらに抗酸化作用もあって、血管の老化も防いでくれるので、その効用はぜひ味方につけたいところ。納豆、豆腐、豆乳、味噌などに含まれているので、日々の食生活にぜひ取り入れるようにしてください。

一方で注意したいのは、丼ものをかき込むような食事です。食べ始めてから脳の満腹中枢が刺激されるまでには20分ほどかかるといわれています。たとえば懐石料理などは、小皿で1品ずつゆっくりと出てくるため、そこまでの量を食べてないのに、おなかいっぱいになったと感じることはありませんか? 理想としては、まず食物繊維を最初にとり、少し時間をおいて大豆食品へと進み、そのあとにEPAやDHAなどを含んだ魚類をゆっくりと噛んで食べること。ぜひ日々の習慣にしてみてください。

更年期外来での症状の交通整理は、
健康への近道

もうひとつお伝えしたいのが、安易に市販のサプリメントを取り入れるのは注意が必要だということです。「更年期に効く」という謳い文句の商品もあるようですが、エストロゲン値を異常に上昇させ、不正出血などの副作用が出て、慌てて相談に来る方もいます。ホルモン系の薬剤は、医師の指導のもとで服用するようにしましょう。

40~50代の女性の不調は、身体のさまざまな部位で起こるものです。診療科でいえば、皮膚科、耳鼻科、眼科、婦人科、泌尿器科、心療内科まで、実に多岐にわたります。どこの科に行けばよいのかわからないとドクターショッピングをしてしまう女性も多いようです。

迷った場合には、最初に更年期外来を受診されることをおすすめします。ホルモンの数値を調べたのちに、失われたホルモンを補うことで症状が改善する女性もいます。また、ホルモン減少とは関係のない症状とわかり、別の診療科を紹介されて治療を受ける女性もいます。悩む前に、またやみくもにドクターショッピングを重ねる前に、まず更年期の専門医を訪ねて症状の交通整理をしてもらってください。それが適切な治療への近道となるはずです。

次回は、いい油と悪い油の見分け方を、解説します。

  • 宮沢あゆみ 医師・ジャーナリスト。早稲田大学第一文学部卒。TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ医学留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て、「あゆみクリニック」を開業。講道館柔道2段。 あゆみクリニック
構成・文/本庄真穂
デザイン/日比野まり子
イメージ写真・イラスト/stock.adobe.com