更年期を迎える女性が避けることができないのが、女性ホルモン分泌の乱れ。これまで疾患から守ってくれたエストロゲンが減少することで、「脂質異常症」というリスクを背負うことになります。そこで知っておくべきは、どんな生活習慣を意識すればよいのか、ということ。引き続き「あゆみクリニック」の宮沢あゆみ先生にお話を伺います。
脂質異常症は
生活習慣で予防することが可能
前回は、更年期世代の女性はエストロゲンの分泌が低下することで、コレステロール値の上昇をはじめとした「脂質異常症」など、「生活習慣病」と呼ばれる疾患にかかりやすくなることをお伝えしました。
さて、「生活習慣病」とはそもそも何でしょうか。「脂質異常症」「高血圧」「糖尿病」などを総称したもので、以前は「成人病」と呼ばれていました。ただ、これらはガンなどとは異なり、遺伝的な要素が少なければ、生活習慣の改善によって未然に防ぐことができるもの。そこで厚生労働省により、日々の生活において適度な運動と健康的な食習慣を心がけることによって改善可能な「生活習慣病」であると命名され、重点的に指導されるようになったのです。
最初に筋トレ、
その後に有酸素運動がおすすめ
では、具体的にどのような生活習慣を心がけるべきでしょうか。まず挙げたいのが、適度な「運動」です。それも、最初に筋力トレーニングを行うことをおすすめします。理由は、筋力がアップするとからだの基礎代謝が上がり、脂肪が燃えやすくなるから。まず代謝を上げてから有酸素運動を行うほうが効果的なのです。
有酸素運動としては、ジョギングやスイミング、エアロビクスなどがいいですね。ちなみに、15~20分で止めてしまうのはもったいないこと。できれば30分以上は続けましょう。というのも、運動で最初に使われるのは糖質で、脂肪が燃え始めるのはそのあとだからです。「つらいな」「もう止めようかな」と感じたら、ようやく脂肪燃焼のタイミング。そこでもうひとふんばりしてみてください。30分以上の運動を週に2回。それだけでからだに変化が出るはずですよ。
健診こそ、
生活習慣として取り入れるべき
もうひとつ、生活習慣に取り入れてほしいのが、健診です。できれば30代から、定期的に婦人科健診を受けるようにしましょう。更年期に差しかかると、乳がん、子宮がん、卵巣がんなど、婦人科疾患にかかるリスクが増大します。月経の乱れから子宮がんが発覚することもあり、40代、50代の健診は必須と考えてください。
また健診では、貧血の数値にも目を配るようにしましょう。貧血は免疫力を低下させ、からだの耐性をなくしてしまいます。結果、インフルエンザや風邪にかかりやすくなるだけでなく、頑張りが効かなくなる、だるくてやる気が出なくなることも。著しくクオリティオブライフ(生活の質)を下げてしまうものなのです。
もうひとつ、肝機能、腎機能の数値も重要です。なぜかというと、あらゆる薬は肝臓で代謝されるため、肝臓や腎臓の機能が悪いと処方する薬が限られてしまうからです。いずれにしろ更年期の女性はもちろん、プレ更年期の女性も将来を見据えて、生活習慣を少しずつ見直すようにしましょう。ホルモンバランスの乱れは、女性である限り避けられないもの。だからこそ早めの心構えと行動が功を奏するのです。
次回は「おとなの『脂質』は、食生活で変わる!」をお届けします。
- 宮沢あゆみ 医師・ジャーナリスト。早稲田大学第一文学部卒。TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ医学留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て、「あゆみクリニック」を開業。講道館柔道2段。 あゆみクリニック
デザイン/日比野まり子
イメージ写真・イラスト/stock.adobe.com
【特集】更年期世代に必要な「脂質」の知識(全5回)
- #01|更年期の女性のからだと「脂質」の基礎知識
- #02|おとなの「脂質」は、生活習慣で変わる!
- #03|おとなの「脂質」は、食生活で変わる!
- #04|いい油と悪い油の見分け方、教えます
- #05|油を賢く取り入れて、食生活で美しくなる