2023.07.20

【特集】今こそ摂りたいタンパク質!#02

栄養学博士に聞く/おとなの美と健康に。タンパク質の正しい摂り方・食べ方

女子栄養大学教授 上西一弘先生

筋肉だけでなく、肌や髪の毛、ホルモン、酵素、抗体、そしてメンタルに関わる脳内物質まで。タンパク質は人間のからだと心の健康の“元”となる栄養素です。しかし、現代人には不足している人も多いのだとか。毎回の食事でどのように摂っていけばいいのか、女子栄養大学の上西先生にポイントを教えていただきました。

摂りだめできないタンパク質は
1日3回の食事でバランスよく

タンパク質は、一度に多く摂っても体内で吸収しきれず、からだから排出されてしまうので、“摂りだめ”ができません。かつ、1回の食事で1日分をまかなうということもできません。1日の適切な摂取量を、朝・昼・晩の3回に分けて摂ることが大切です

タンパク質の1日の摂取量は「体重1kgにつき1.0g」程度を目安に

体重50kgの人なら1日50g。これを3回に分けて食事で摂ります。標準的な体重の人で「1食あたりタンパク質約20g」、と考えておけばよいでしょう。

重要な食品は肉類、魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品

「タンパク質を摂るには肉さえ食べていればいい」わけではありません。肉でも牛肉、豚肉、鶏肉、さらには部位によっても含まれる栄養素は異なりますので、ひとつの種類に偏らず、3食で幅広く摂ることを心がけましょう

タンパク質と一緒にビタミンB群・ビタミンD、鉄や亜鉛も摂りたい

エネルギー代謝に関わるビタミンB群、なかでも筋肉をつくるのにも必要なビタミンB6は、タンパク質と一緒に摂りたい栄養素。ビタミンDも、筋肉や骨を強くします。鉄や亜鉛などのミネラルも、タンパク質の合成に重要です。

タンパク質と一緒に摂りたい栄養素

タンパク質を効率よく!
おすすめのメニュー

タンパク質をバランスよく、効果的に摂るために、まずはご自身の日々の食事を見直してみましょう。

特に朝食はタンパク質が不足しがち。「朝タンパク」を意識して

3食のうちでは、特に朝食でタンパク質が不足しがちです。トーストとサラダとコーヒーで済まさず、卵や乳製品をプラスして。ヨーグルトにバナナを加えれば、ビタミンB群も摂れます。日焼け対策をしている女性はビタミンDが不足しがちなので、焼き鮭の和定食もおすすめですね。鮭でタンパク質とビタミンDが一緒に摂れます。

朝食で不足しやすいタンパク質

お寿司やお鍋、煮込み料理ならタンパク質をバラエティ豊かに

赤身、白身、青魚と、さまざまな魚を楽しめるお寿司は、タンパク質をバランスよく摂るのにおすすめです。あとはやっぱり鍋料理。肉や魚、豆腐など、いろんなタンパク源が入りますし、野菜もしっかり摂ることができます。ポークビーンズのような煮込み料理もいいですね。

タンパク質は安眠の元にも! 就寝前にはホットミルクを少し

更年期の女性には、睡眠の悩みを抱えている方も多いのでは。睡眠に関係するセロトニンやトリプトファンといった脳内物質も、タンパク質からつくられます。就寝前に胃に負担にならない程度にホットミルクのようなものを飲むのは、安眠につながります。

手軽な商品を活用して
タンパク質を安定摂取

タンパク質は、日常の食事のなかでも取り入れやすい栄養素だと思います。しかし、多忙だったり、体調が不安定だったりと、食事に手間をかけられない時もあるでしょう。そんな時は市販の商品や外食もぜひ活用してください。

種類も豊富! サプリメントや機能性食品も上手に取り入れて

「プロテイン」と聞くと、飲みにくそう、おいしくなさそうなイメージがあるかもしれませんが、最近ではさまざまな味のものが出ています。私自身、忙しくてお昼ご飯をちゃんと食べられないようなときは、スポーツドリンク味のプロテインを飲んでいます。高タンパクをうたったヨーグルトも、最近は増えています。市販の商品も補食として上手に使いましょう。

タンパク質が足りないと思ったら、ちょっとした「ごちそう」を

タンパク質不足で活力が落ちてきたな…と感じたら、いいお肉を食べたり、お寿司屋さんに行ったりと、ちょっと「ごちそう」感のある食事を楽しむことをおすすめします。タンパク質を補充できると同時に、ふだんと違う食事をすることで、気持ちもきっと上向きになるはずです。

更年期は、さまざまな体調の変化に見舞われますが、ここからあと40年、50年を健康に生きていくための大切なステージでもあります。タンパク質をしっかり摂って、からだにも心にも活力を!

  • 上西 一弘(うえにし かずひろ)
  • 上西 一弘(うえにし かずひろ) 徳島大学医学部栄養学科卒業。徳島大学大学院栄養学研究科 修士課程修了。1991年より女子栄養大学に勤務し、2006年栄養学部教授に就任。スポーツ栄養学の観点から、選手のパフォーマンスを上げ、勝てる身体づくりを科学的に研究している。『新しいタンパク質の教科書 健康な心と体をつくる栄養の基本』(池田書店)、『痩せる!リバウンドしない!たんぱく質量ハンドブック』『新ダイエットごはん:たんぱく質で痩せる&リバウンドSTOP!!』(ともに日本文芸社)などを監修。
取材・文/剣持亜弥
デザイン/日比野まり子
イメージイラスト/shutterstock.com