お仕事シーン別・パンプスとのつき合い方

トラブルの予防&対処法も解説

語り/阿部 薫(新潟医療福祉大学 教授)
阿部 薫(新潟医療福祉大学 教授)

現代人の足の変化について教えていただいた<前回>に続き、現代のライフスタイルで私たちがパンプスを履くとき、どんなことに注意したらいいか、引き続き阿部薫先生に伺います。

デスクワークから営業シーンまで、働く女性たちの日常に合わせたアドバイスは必読です!

CASE1
デスクワークにはローヒールパンプスで
ひざの角度を調整

まず最初は、パンプスで出勤してそのままデスクワークをする場合。たとえば7センチヒールのまま椅子に座って作業をすると、ひざの位置が高くなり、股関節も通常より大きく曲げることになります。このように、ひざ関節・股関節が大きく曲がった状態を続けることは、とても疲れます。そのまま長時間続けていると、血の巡りが悪くなって、冷え・むくみにもつながってしまいます。

対策としては、ローヒールの靴をデスクにに準備しておいて、履き替えるという方法。それが難しいときは、椅子を高くして股関節・ひざ関節の角度が90度になるよう、工夫してみてください。椅子が調整できない場合は、クッションや座布団をおしりの下に入れて座面を高くするのもいいでしょう。

手前のグレーのパンプス(甲に飾り付き)、後方中央のブラックパンプス、ブーツは7センチヒール。ほかは5センチヒール 手前のグレーのパンプス(甲に飾り付き)、後方中央のブラックパンプス、ブーツは7センチヒール。ほかは5センチヒール

CASE2
営業ワークで足がくたくた…
インソールはもちろん、「足を冷やさない」工夫を

仕事で外回りをして、1日たつと足が痛くてたまらない…という場合。特に痩せ型の女性にあるのは、足の脂肪層が薄く、体重がダイレクトに足の裏の骨にかかってしまうということです。足裏のクッションが薄いので、クッション性のあるインソールを使うことが有効です。

営業ワークで足がくたくた… インソールはもちろん、「足を冷やさない」工夫を

さらに、足が冷えるとなおさら足の疲れを強く感じます。冷えを防ぐには、合成皮革よりも天然皮革のものを選んでください。天然の革には、断熱性、保湿性があり、外気の寒さを防ぐほかに、靴のなかで汗をかいたら、湿気を外に放出する役目ももちます。ちなみに、足は1時間あたり10ccもの汗をかいているんですよ。合成皮革のものは、この湿気を放出する機能がないので、汗をかいた靴のなかが湿ったままで、足先まで冷えきってしまいます。

また、足の保温のためには、ストッキングの上に薄手のソックスを履く(商談などに行く際は、直前にソックスを脱いでも)といった方法もぜひ検討してください。

CASE3
立って接客、プレゼン…ハイヒールを履きたいときは
替えの靴を持参して

百貨店の売り場で、人の目線の高さに並んでいるのは、たいてい7センチヒールです。やはりこの高さのヒールがいちばんきれいに、かっこよく見えるからでしょう。ふだんはスニーカーやローヒールを履いていても、人前に出るとき、気合いを入れるとき、ハイヒールを履くと気持ちもアガります。

ただ、足首が下を向き、つま先で全体重を支えるハイヒールは、疲れるのは当然です。かかとのほうに体重を乗せるようにして立てば、少しは楽になりますが、やはりおすすめは、勝負のときだけハイヒールを履き替えるという方法です。

サクセスウォークのパンプスは、かかとの骨の真下にヒールを設置。体重をしっかりと受け止め、足の前部分にかかる負担を軽減します サクセスウォークのパンプスは、かかとの骨の真下にヒールを設置。体重をしっかりと受け止め、足の前部分にかかる負担を軽減します

また、同じ7センチヒールでも、ソールのフロント部分に厚みのあるプラットフォームパンプスを選べば、前後差が少なくなり、足首への負担を減らすことができます。

また、同じ7センチヒールでも、ソールのフロント部分に厚みのあるプラットフォームパンプスを選べば、前後差が少なくなり、足首への負担を減らすことができます。

――さて、阿部先生からのアドバイス、最後は今の季節に起こりがちなトラブルに対する対処法です。

CASE4
かかとのガサガサは
ヒールを包み込むインソールで対策

空気の乾燥がはげしい冬は特に、かかとが固くなったりヒビ割れたり、ということが起こりがちです。原因は、かかとが靴のなかに押し込められて、体内の水分がかかとに回っていないことにあります。かかとにクリームなどを塗るのもありですが、内側が乾燥している状態では、なかなか解決には至りません。

まず試していただきたいのは、靴のなかでかかとを包み込み、圧力を分散してくれるヒールカップ形状のインソールです。かかとの周囲が高くなっていてすり鉢状なのが特徴です。かかとの摩擦や圧迫を軽減するので、これだけでもかかとガサガサの防止になります。

かかとのガサガサは<br>
ヒールを包み込むインソールで対策

CASE5
蒸れてにおいが気になる…
1日履いたら2日靴を休めよう

スニーカーやブーツを履き続けていると起こるのは、靴のなかで雑菌が増えてくるということ。足から放出された汗が乾かないと、剥落した皮膚(アカ)をエサに雑菌が繁殖してしまうのです。

足から出たアカは、靴下の繊維の目をかいくぐって靴のなかにたまっていきます。靴を丸洗いできるならいいですが、多くの靴はそうもいかないので、あらかじめ取り外しのできる中敷を入れておき、こまめに洗うか交換しましょう。

また、靴のなかにたまった湿気(汗)は、ひと晩では乾かないことが多いので、1日履いたら2日は休ませるようにしましょう。特に夏は靴が乾燥するよりも雑菌の増えるスピードのほうが早いので、乾燥は必須です。

――大きなトラブルになる前に、適切な対応で快適な足元を保ちたいもの。困ったとき、迷ったときには読み返して、正しく乗り切りましょう。

  • 阿部 薫(あべ かおる)
  • 阿部 薫(あべ かおる) 新潟医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健学専攻義肢装具自立支援学分野長(博士後期課程・修士課程)/リハビリテーション部義肢装具自立支援学科・教授。同大学院にて、靴とヒトの関係を科学的に研究する「靴人間科学」を担当している。
構成/ワコールボディブック編集部
デザイン/WATARIGRAPHIC