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  • 2024.03.20

右脳・左脳のバランスってなに? そこから起こるからだの不調とは

脳バランスを整える<前編>

右脳・左脳のバランスってなに? そこから起こるからだの不調とは

ーー姿勢が悪かったり、すぐモノにぶつかったり、ネガティブな思考に悩まされたり…と、病院に行くほどではなくても、心身に小さな不調がある人は多いはずです。もしもその原因が、「右脳と左脳のアンバランス」にあったら…? 「石井堂クリニカルオフィス」の石井克昇先生に、「脳バランス」について教えてもらいます。まずは自分の「右脳」と「左脳」の働きについてチェックしてみましょう。

脳バランスとは?「右脳」と「左脳」の働きはこんなに違う

私は長く接骨院に勤めその後開業しましたが、たくさんの患者さんを見ているうちにある疑問がわきました。「症状の出ている箇所に治療を施しても、なぜすぐによくならないのだろう」と。それを探るために勉強するうちに、「根本的な原因は脳のエラー」だと考えるに至りました。

私たちのからだの動きは脳によってコントロールされています。姿勢を保つことや肩を上げること、眼球の動かし方ひとつまで、あらゆることが脳からの指令によって行われます。からだだけでなく、論理的に考えることやポジティブな気持ちを感じるなど、思考や感情も脳のコントロール下にあります。ですから、これらの指令を出す脳の部位にエラーが起きれば、それは心身の不調となって現れます。

右脳の機能が低下すると左半身の感覚が鈍くなりますし、その逆も然り。そこで、私は低下しているほうの脳機能を活性化し、左右の脳機能の乖離を少なくすること、すなわち「脳バランス」を整えることで、心身の不調にアプローチしていくことを始めました。

その結果、重度の腰痛や耳鳴り、不定愁訴に悩む女性などさまざまな患者さんの症状に効果がありました。

大人になって「右脳」と「左脳」がバランスよく機能している人はほとんどいません。誰もが何らかの理由で、右脳の機能が左脳よりも低下したり、逆に左脳が働きにくくなったりあるいは両方の機能が低下したりとエラーを起こしています。ところが、残念ながらバランスが崩れたことを自覚している人はほとんどいません。

これには理由があって、人間には優れた補正能力があるので、からだの症状は自覚しにくいのです。たとえ動きにくい箇所があってもそれをほかの動きでカバーし、本人は不調に気づきにくい。これがとても厄介なところです。

言い換えれば、からだの不具合を自覚して病院で診断を受けるほどの場合、脳機能には大きなエラーが起きている可能性があります。

たとえ自覚がなくても、からだをひとつひとつ細かく見ていけば、誰にでもうまく機能していないところがたくさんあるはずです。右脳と左脳の機能の乖離が大きくなるほど、人生を生きづらいと感じてしまう傾向があります。まずは自身のからだのどこに不具合があるのかを知り、脳を活性化していくためのケアをすることが大切です。

怖いけれど知りたい…右脳と左脳の機能低下をチェック

さて、「右脳」「左脳」とはよく聞くと思いますが、その働きはどんなふうに違うのでしょうか。簡単に説明します。

右脳の働きは…

右脳の働きは…

・全体像を把握する
・大きい筋肉を動かす
・空間認知を行う
・感覚の感知に関与(嗅覚や味覚、聴覚から情報を受け取り、良し悪しを判断)
・危険なことからの回避行動
・恐怖や怒りを感じる
・ルーティンを嫌い、刺激を欲する

左脳の働きは…

左脳の働きは…

・全体像よりも細かいことにフォーカス
・楽器演奏や靴紐を結ぶなど小さな筋肉を動かす
・読み書き、話すこと
・数学やゲームなどのパターン認知
・ルーティンが好きで新しいことはあまり好まない
・目標達成のためのプロセスを考察

それぞれの項目を見るだけで、自身がどちらに偏っているかがわかったという人もいるかもしれません。では、からだに表れる症状から、右脳と左脳の機能をチェックしてみましょう。

右脳の機能チェックリスト






右脳の機能チェックリスト ayakono - stock.adobe.com

左脳の機能チェックリスト






左脳の機能チェックリスト R MACKAY - stock.adobe.com

さて、テストの結果はどうでしたか? それぞれひとつでもチェックが付いたら、機能低下の可能性アリです。

なぜ脳機能は退化してしまうの?

脳の機能が低下してしまう理由はひとつではありません。頭を強く打ったり振ったり、頭に直接ダメージを負う体験から起こることもありますし、事故や捻挫などからだへのダメージから起こることもあります。

患者さんに多いのは、捻挫の既往歴を持っている方ですね。自分では忘れてしまっているようなケガでも脳はしっかりと覚えていて、無意識にその箇所をかばい続け、使わないようにコントロールします。

なぜ脳機能は退化してしまうの? autumnn - stock.adobe.com

大きなケガをしてしまった場合、脳は防御反応を強く出します。たとえ筋肉や神経など組織が治ったとしても、ケガをしたときに発生したネガティブな感情はその後も根強く残り、その箇所を動かさないようにコントロールしてしまうのです。

からだの特定の箇所を使わないでいると、そこをカバーしようと別の筋肉が過剰に働き痛みが出たりと、からだのバランスは崩れ、指令を出す部位の脳も退化します。

また、脳がダメージを受けるのは、からだの痛みだけではありません。ストレスなど心へのネガティブな刺激によっても機能が衰えることがわかっています。

ですが、脳機能は一度低下したらそこで終わりではありません。回復のために必要なこと、それもとてもシンプルなやり方で、脳バランスは回復していきます。次回、そのためのエクササイズをご紹介します。

  • 石井克昇
  • 石井克昇 「石井堂クリニカルオフィス・石井堂街の接骨院」代表。
    柔道整復師。ICC国際コーチング連盟認定コーチ。アクティベータ・ネットワーク・ジャパン上級認定。アメリカやカナダで信頼を得ている施術法「アクティベータ・メソッド」を駆使した治療を行う。2012年、石井堂街の接骨院を開業。脳の記憶と条件付けが及ぼす心身の不調へのケアを専門とする。神経学、東洋医学、心理学、コーチング、脳の誤作動記憶の調整法(心身条件反射療法)を学び、不調な心身を健康へと導くセルフケア「脳バランス体操」を開発。治療院には一流アスリートやアーティスト、モデルなど多くの著名人も訪れる。
取材・文/大庭典子
イラスト/中根ゆたか
デザイン/WATARIGRAPHIC