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  • 2024.03.13

人物も夜景も「映える」写真が「間違いなく」撮れる、超ディレクション術

プロに学ぶスマホ撮影テクニック<後編>

人物も夜景も「映える」写真が「間違いなく」撮れる、超ディレクション術

プロのフォトグラファーによる、スマホでより上質の写真を撮るテクニックの後編は、人物や風景について。(前編「ものの撮り方」はこちら

よくあるケースは、顔が小さく見えるように上から撮ったり、明るさが足りないからと照明の下に立って撮ったりすること。さて、これは正解なのでしょうか? フォトグラファーの遠藤素子さんによると、「撮る人、撮られる人の双方が気をつけるべきポイントがある」とのこと。キーワードは、「ディレクション」にありました。(使用機種:iPhone14)

被写体も大喜び! 映える「ディレクション」

ライター:後編は人物をきれいに撮る方法を教えてください。友達と出かけると、よく「写真を撮ってもらえる?」とお願いされます。写真を撮った後の本人チェックの時間ほど、ビクビクする瞬間はないです。

遠藤:うまく撮れないと関係性によっては気まづい雰囲気になりますよね(笑)。では、カフェで座っている設定で撮ってみましょうか。いつもご友人を撮るとき、どんなことを意識していますか?

ライター:明るいところがいいと思うので、ライトの真下に被写体がくるよう、座り位置を可能な限り微調整しますかね。あと、下から撮ると二重あごも気になるので、とりあえず上から撮ります。

遠藤:なるほど、では一度その方法で撮ってみますね。はい、チーズ!

ライター・リョソン自身のディレクションで、遠藤さんに撮ってもらった自身の写真。 ライター・リョソン自身のディレクションで、遠藤さんに撮ってもらった自身の写真。

ライター:すごく微妙な写真、こんなはずでは…。

遠藤:ライトの真下は、いちばん選んではいけないポイントです。だってほら、写真を見たらわかるように目の下に影が入ってしまって、顔が暗く見えますよね。あと、できるだけカメラの位置は被写体の目線と合わせて撮ること。

ライター:間違いだらけでした。ポーズもどうしたらいいかわからず、とりあえず手をテーブルの上に置いてみたのですが、不要に手が目立っている…。

遠藤:ポージングは、意外と撮る人がディレクションしたほうがよかったりするんですよ。たとえば、顔のまわりに手があると、きれいに見えますよ。では、手を顔の近くに持っていってもう一度座ってみてください。目線はカメラ、あごだけ少し斜めに向けてみましょうか。はい、チーズ!

遠藤さんがディレクションし撮影した、ライター・リョソンの写真。 遠藤さんがディレクションし撮影した、ライター・リョソンの写真。

ライター:同じ場所で撮ったのに全体的に明るいし、何よりも顔色がよく見えますね! 手も顔まわりにあることで、全体的な余白のバランスがよく見える気が。

遠藤:ポージングまでディレクションしてくれる人はなかなかいませんよね。ぜひこれからは、顔の角度や手の位置を調整してあげてくださいね。

それから、服の色も大事です。基本、好きな服でいいのですが、写真のためにあえて避けるとしたら真っ黒、真っ白。真っ白は、室内での撮影の場合はOKです。今日のリョソンさんの服はクリーム色のニットなのでセーフですが、日差しの強い場所だと真っ白は「白飛び」してしまうのでお勧めしません。白い服を着て外で撮影したい時は、ニットなど光をあまり反射しない素材にしましょう。覚えておいてくださいね。さらにその人にピッタリの色は、パーソナルカラー診断などで見つけたらいいと思います。

ポイント①
ライトの真下は選ばない。顔に影が落ちないところを見つける

ポイント②
カメラの位置は被写体の目線に合わせて調整

ポイント③
ディレクションは大事。顔まわりに手を持っていくと簡単に盛れる

ポイント④
きれいに写りたい日は真っ黒と真っ白の服は避ける

立ち姿をきれいに撮りたい! プロ直伝「ポージング」

ライター:人物を撮るときに意識するのは、①ライト、②カメラの位置、③ポージング。ポーズって、こんなに大事だったのですね。立っている人を撮るときも同じですか?

遠藤:基本同じです。立っているときは、腕とウエストの間に隙間をつくると、やわらかい雰囲気になりますよ。では一度そこに立ってみてください。はい、チーズ!

遠藤さんが撮影した写真 遠藤さんが撮影した写真

ライター:腕に隙間? と思い恐る恐る腕をずらしてみました(右)が、こんなに変わるのですね! 1枚目(左)、腕をもう片方の手で握っている写真は全体的に力が入って窮屈な印象です。

遠藤:1枚目のような腕をギュッとからだにくっつけてるポーズは、細く見せようとやりがちなのですが、二の腕が押さえつけられてかえって太く見えてしまうことがあります。腕をからだから離すのは、こういった意味もあります。手の位置がいかに重要かわかりますね。せっかくなので外でも撮ってみましょうか。

ライター:外で撮るときは、何を意識すればいいでしょうか?

遠藤:まずカメラを傾けず、水平になっていることを意識してください。これは風景を撮るときにも使えるテクニックです。例えば、リョソンさんが過去にSNSに上げていたこの京都の写真、きれいなのですがちょっと傾いていますよね。

京都の写真

遠藤:同じ場所でも、下の写真は水平になっていてきれいに見えます。橋も真ん中にきていて、情報がまとまっていますね。

京都の写真

ライター:確かに1枚目は何かしっくりこないなと思っていたら、微妙に傾いていたからなのですね。

遠藤:水平がわかりにくいときは、ぜひ使っていただきたい機能があります。(iPhoneの場合)設定アプリを開いて「カメラ」を見つけてください。

設定アプリを開いて「カメラ」で「グリッド」を有効にする

遠藤:そして、「グリッド」を有効にさせてください。「グリッド」をオンにしたら、カメラを開いたときに縦と横の線が2本ずつ入った状態になります。

グリッドをオンにしたときの画面 グリッドをオンにしたときの画面

遠藤:これはテクニカルな「構図」を活かした撮影に役立つのですが、初心者の方はこの線があると、水平がわかりやすいので便利です。

ライター:こんな設定があるのですね。

遠藤:では撮ってみましょうか。1枚は、両手で髪を耳にかけるポーズで。もう1枚は、体ごと斜めに向けて、視線も上にしてみましょうか。はい、チーズ!

ポートレートモードで奥行きを活かして撮影

ライター:どちらも素敵ですよね。右の写真はからだが斜めになっているので歪んだ仕上がりになるかと思いましたが、ちゃんと背景が水平なのでドラマチックに見えますね。

遠藤:奥行きを活かして撮ってみました。これも上から撮るより、カメラの位置を目線より少し低めにして撮っています。ポートレートモードで撮ってみたのですが、背景がきれいにぼけるのでいいですね。iPhoneを持っている人はポートレートモードも活用してみてもいいですね。

ポイント⑤
立っているポージングは腕とウエストの間に空間をつくる

ポイント⑥
iPhoneの設定で「グリッド」を画面に入れて水平を意識

ポイント⑦
外で人物を撮る場合はポートレートモードも活用

超簡単! 夜景を撮るときのカメラセッティング

遠藤:ちなみに、夜景の撮り方は簡単です。都内は夜景の見えるビルが多いですからね、ぜひ覚えておきたいところです。

ライター:簡単に撮れる方法があるのですか!? いつもガラスに自分が写ってしまったり、部屋のライトが反射したりして微妙なショットになるんですよね。どんなテクニックなのですか?

遠藤:スマホをね、こうするんです!

スマホを窓ガラスにくっつける方法。 スマホを窓ガラスにくっつける方法。

ライター:窓にスマホをつけるだけ? それだけですか、一度撮ってみますね!

ライターリョソンが撮った夜景の見えるホテルバーで撮った夜景。 ライターリョソンが撮った夜景の見えるホテルバーで撮った夜景。

ライター:自分の影や部屋の反射がまったくない! 欲を言えば東京タワーの位置を調整したいですが、これは席選びが肝になりますね。

遠藤:少し高度なテクニックですが、もしこの席で東京タワーをきれいに入れたかったら、スマホの左側を3ミリほどガラスから離します。できた隙間に室内の光が入らないように、指などでふさいでください。次回は、試してみてくださいね。窓ガラスを傷つけないように、丁寧につけて撮ってみてください。周囲の邪魔になっていないかも気をつけながら。

ポイント⑧
室内からの夜景撮影は、スマホを窓にくっつけて

――撮る側のディレクションや場所選びが、これほど写真の仕上がりに差が出るとは、大きな発見でした。いや、なんとなくはわかっていたけれど、やるべきことがはっきりわかって、とてもスッキリ。特に撮る側の「ディレクション」は、人物撮影においては大事なテクニックでありコミュニケーション。写真がレベルアップしたら、お出かけの思い出もグレードアップしそうです。

  • フォトグラファー・遠藤素子さん 東京造形大学にて写真と出会い、全く考えてもいなかったカメラマンの道へ。撮影対象は人物を中心に料理、風景など多岐にわたる。キャリア20年。ポートレイトでは、その人らしさを感じつつもその人の新しい一面を写し出すことを信条としている。
取材・文/ぺ・リョソン
デザイン/WATARIGRAPHIC