• Wellness
  • 2023.06.21

知りたい、低気圧頭痛のメカニズム

雨が降る前に頭が痛くなるのはどうして? <前編>

知りたい、低気圧頭痛のメカニズム

雨の日の朝、きまって調子が悪い…台風が近づくとなんだか頭が重たくなる…「ちょっと疲れているだけかも」「風邪のひきはじめかな」とだましだまし付き合っているいやな頭痛や身体のだるさ。それは低気圧頭痛が原因かもしれません。最近、認知されはじめている〈気象病〉。雨が降る前後など気圧が上下する不安定なタイミングで頭が重く、ズキズキ痛む低気圧頭痛は〈気象病〉のひとつ。なぜ、頭が痛くなるのか、どんな人が〈気象病〉に当てはまるのか。7年前に「気象病・天気病外来」を開設し、5000人以上の患者を診てきた、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅 司先生に話を伺いました。

雨が降る前に頭痛やめまいがする人は要注意です

そもそも、気象病とは何なのでしょうか。

気象病とは、気圧や気温、温度など、気象変化によって引き起こされる心身の不調のことをいいます。症状としては、頭痛、倦怠感、首や肩まわりのこり、めまい、低血圧症などがあり、症状は人それぞれで多岐に渡ります。その中でもやはり、頭痛を訴える方が多いです。また、低血圧症は特に女性に多く、もともと低血圧の人は、気圧の低下によってさらに症状が悪化し、朝起きられないという人も少なくありません」

このような症状はなぜ起こるのでしょうか。

「気象変化によるからだの不調は、気圧の変化によって起こります。飛行機に乗ったときのことを考えるとわかりやすいです。離陸するとき(気圧が急低下する)や着陸するとき(気圧が急上昇する)に耳がキーンとなったりこもった感じになったりします。これは、耳の鼓膜の内側にある内耳が気圧の変化の影響を受けて起きるもの。もともと人間のからだには、1㎡あたり10トンもの大気圧がかかっているんですよ。普段はからだが慣れているので何も感じませんが、天気の変化によって気圧が急に下がると、からだにかかっている圧力のバランスがくずれて、飛行機に乗っているのと同じようにバランスが一時的にとれなくなってしまう。低血圧の人は、その影響で血の巡りが悪くなり自律神経が乱れ、さまざまな不調が出てしまうんです。気圧が急に下がるのは雨が降る前です。だから、そこでみなさん頭が痛いと感じるんです。症状が出やすい季節としては梅雨や台風のシーズン。そのほかにも季節の変わり目など自律神経が乱れやすい要因が重なると、不調を訴える人が増える印象がありますので注意してほしいですね」

雨が降る前に頭痛やめまいがする人は要注意です

気圧変動による不調に悩む人の8割が女性

気象病の患者さんの約7~8割は女性だそう。なぜ女性のほうが多いのでしょう。

「一つには女性ホルモンが関係しています。女性の場合は、生理周期や更年期などにより女性ホルモンの変動があり、それでそもそも体調の浮き沈みが大きい。気象病と女性特有の不調は症状が似ている部分もあり、ふたつが重なることで症状がひどくなってしまうことも。また、女性は男性よりも貧血や冷え性が多いため、もともと頭痛やめまい、首肩こり、倦怠感などの体調不良を起こしやすいため気圧変動の影響を受けやすいのです」

とはいえ、最近は男性の患者さんも増えているのだとか。

「コロナ禍によってデスクワークが増え、同じ姿勢を長時間続けることで首肩こりが起こりやすくなっているからではないでしょうか。また、スマホやパソコンの使いすぎで姿勢が悪くなっていることも一因です。猫背やストレートネックによって骨格がゆがむと、自律神経のバランスが悪くなり、気圧変化の影響を受けやすくなるんですよ」

原因がわかれば対策もできる! おすすめは気圧予報アプリ

どんよりとした天気の時に起きる、いやな頭痛の原因は〈気象病〉なのかも……。頭痛と気圧の関係を知っていれば、上手に対策をとることもできそうです。気圧変化の予測を知って対策することが肝心。そんな時に役立つのが、久手堅先生も推奨する気圧予報アプリ。

原因がわかれば対策もできる! おすすめは気圧予報アプリ

おすすめは『頭痛ーる』というアプリ。体調不良が起こりそうな時間帯の確認や、痛み・服薬記録ができる気象病対策ができます。1週間先の予測を見ることができるので、自分の体調や生理周期などと合わせて考えながら、仕事や旅行などのスケジュールをたてることなどできると思います」

人によっては、学校や会社に行けないなど、日常生活に支障をきたすほど重い人もいるそう。しかし、実は〈気象病〉は正式な病名ではありません。病名がないため診断基準もあいまいで、不調だからと病院に行っても「これは病気ではない」「診断がつかない」と言われてしまうことも。時には、ストレスや心の問題では…と言われてしまうこともあります。

「気象病はさまざまな症状があるので、うつや不安などの症状が出やすいこともあります。だからといって気の持ち方でどうにかなるものではありません。気象病は、気象変化によって心身が不調になってしまうこと。それを理解し、症状があることを受け入れることを第一にしてください自分でこういう天気の時は、頭痛が出やすい、具合が悪くなりやすいとわかっていれば、予防も対処もしやすいはず。天気との付き合い方を考えてみてください」

<後編>では低気圧頭痛をはじめ〈気象病〉との上手な付き合い方を教えていただきます。予防法や気をつけたい生活習慣など知っておけば、体調変化と上手に付き合えそう。6月21日公開の「低気圧頭痛との付き合い方」をお見逃しなく!

  • 久手堅 司(くでけん・つかさ)
  • 久手堅 司(くでけん・つかさ) せたがや内科・神経内科クリニック院長。医学博士。気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」監修医師。「自律神経失調症外来」などの特殊外来を立ち上げ、「気象病・天気病外来」ではこれまで5000名を超え、患者目線で行う診察とわかりやすい解説がSNSやメディアで話題を呼んでいる。著書に『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)、『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』(クロスメディア・パブリッシング)など。
    https://setagayanaika.com/
    https://twitter.com/kudekentsukasa
取材・文/石井栄子
イラスト/naohiga
構成/梅原加奈
デザイン/WATARIGRAPHIC