「美しい佇まい」を楽しみながら身につける「ボディケアツーリズム」。ワコール人間科学研究開発センターが、道後温泉（愛媛県松山市）と連携し、「美しさ」をつくる科学的なメソッドの仕上げ旅として観光・湯治体験を組み合わせた、2カ月間のプログラムです。昨年のツアーをブラッシュアップし、実用化に向けた実証実験第2弾が始まりました。9名のモニターが参加して行われた2カ月間の内容をレポートします。
まず自分のからだを知ることからスタート
3Dボディスキャナーでの測定。ワコール新京都ビルにて。
このプログラムの趣旨は、筋肉などからだを整えることで、「自分に自信をもつこと」「自然できれいな動作」を目指すというもの。美の価値観が変化し、プロポーションだけではない美しさが求められる今（対談「SNS時代の美しさ」参照）、ひとりひとりの個性を生かそうというねらいが、根底にあります。
今回のボディケアツーリズムでは、日常での立ち振る舞いに加えて、和装でも美しい振る舞いを発揮できるようにするのが目標。2カ月後に一同が滞在する道後温泉で、浴衣を着て温泉街を歩く（それも美しく！）ために、プログラムが組まれました。
それには、まず自分のからだを知ることから。9月上旬、ワコール新京都ビルに集合したモニターは、計測専用着に着替えて、サイズ計測をスタート。全国のワコール主要店舗で展開しているセルフ計測サービス「3D Smart&Try」の3Dボディスキャナーを使って、全身のボディ形状とサイズの計測を行います。かかる時間はたった3秒。「美しい佇まい」を導き出す科学的メソッドのベースとなりますが、これらが後にどう変化するのかも、気になるところ。
歩行姿やお辞儀姿も動画で記録
床の直線にそって何度か往復し、その歩き姿を動画で記録し分析。
和装での動作を想定して、正座とお辞儀の姿も動画で記録・分析。
静止した姿を撮影するだけでなく、「ふだんの動作」を動画でチェックして、改善につなげていくのが、このプログラムの大きな特徴です。直線に沿って歩く姿を記録する歩行計測、さらにバランスをチェックする動きの計測、そして和装を想定しての正座やお辞儀姿のチェック。この時点ではまだぎこちなかったお辞儀姿の参加モニターたち。これが、どれほど様になるかは、次回のレポートで。
最後に、研究員によるヒアリング。生活環境や運動習慣はもちろん、からだの悩みや目指したい自分の姿などもじっくり対話をしながら聞いてもらえるのが、うれしいところ。ここで話した「自分がどんな佇まいでありたいか」は、ここから2カ月の間の自身の指標にもなります。
計測結果をもとに、ひとりひとりに合わせたエクササイズ開始
計測してから10日後。計測結果のフィードバックと、道後温泉に行くまでの2カ月間に実践するエクササイズが発表される日。ワコール新京都ビルにもう一度、参加モニターが集まりました。
ここから2カ月のエクササイズの目的を再確認するとーー。ひとつは「日常での歩行、立ち振る舞いの安定性」。もうひとつが、今回ならではの「浴衣を着て立つ・座る・歩く」といった動作の習得。浴衣を着る道後温泉では、舞踊家・梅川壱ノ介さんと共に日本舞踊を舞うというワークショップも予定されています。この日は梅川さんから「みなさんの成果を道後で拝見するのが楽しみです」との動画メッセージも届き、参加者のやる気を後押ししました。
梅川さんから参加モニターへの動画メッセージ。
さて、ここからエクササイズの実践編。目的とする「美しい歩行、立ち振る舞い」のためには、まず「呼吸を意識すること」「体幹の前側を意識すること」と説明してくれたのは、今回のエクササイズ指導の山本邦子先生。
アスレティックトレーナーの山本邦子先生。Kyoto MBM Laboを主宰する。ワコール人間科学研究開発センターと共に、モニターの分析やエクササイズ指導を行う。
正しく深い呼吸ができているか、腹圧を安定させるために体幹の前側は垂直になっているか、山本先生は自身が手本を見せつつ、モニターひとりひとりのチェックも丁寧に。最初は感覚がわかりにくかった人も、繰り返すうちにコツをつかんで、第三者の目からも体幹が安定してくるのが、よくわかります。
運動は自分を知るいいツールです
8種類のエクササイズは、いくつかの基本動作は同じでも、人によって少しずつ内容が異なります。モニターそれぞれに提案された8種類のエクササイズを、このあと道後温泉に行くまで実施していくことになります。週3回・1回約30分、軽く息があがるくらいの内容ですが、これがからだにどう変化をもたらすか、自分への期待がふくらみます。
ちなみに、実証実験第1弾のボディケアツーリズム（2021年）では、エクササイズを実施したモニター７人の「からだが改善した」率は100％だったそう。
「運動は自分を知るいいツールです。どんなことでも、からだが感じていることはすべて正解。個人の感覚を楽しんで」とエールを贈る山本先生。参加当初は少し不安だった人も、この日だけで自信をつけ、姿勢もしゃきっと改善されていたのが、印象的でした。
次に集合するのは6週間後ですが、その間、オンラインでのエクササイズチェックがあったり、オープンチャットで質問や感想をやりとりしたり。無理なく習慣化できるサポート体制も、参加者にとっては安心材料です。
6週間後、和装で美しく見せるためのエクササイズを追加
エクササイズをそれぞれ自宅で実践して6週間、基本の「軸づくり」ができてきたところで、わからなかった点を確認しあったり、エクササイズが順調にできている人は、動作の強度をアップさせたり、少しずつ内容の調整が行われました。
そして6週間後のこの日、全員のエクササイズメニューに新たに加わったのが、「浴衣を着てきれいに立つ・座る・歩く」ための「和装エクササイズ」。浴衣や着物を着たときでも美しい佇まいを実現するのは、今回の大きな目標ですが、そのためにどんなことが必要か、まず山本先生からレクチャー。
和装での歩き方の基本はすり足。また、立つ時・座る時の動作も、洋服のときとは異なります。どのポーズも、初回に教えてもらった「体幹の前側」を引き続き意識しながら行うことが大事で、そうすると冬目前というのにからだはぽかぽか。新しい宿題を持ち帰り、次は2週間後に再度集合。からだがどう変化したか、そこで2度目の測定が行われます。
2度目の測定は、初日と同様に3Dボディスキャナーでボディの形状とサイズの測定、動画による歩行姿や立ち・座りなどの測定、バランスチェックを実施。初回と2度目の測定でどう変化が出たかは、次週の道後温泉滞在時にフィードバックされます。それぞれ、「からだの軸ができてきた」などの変化を感じつつも、測定結果にどう表れているのか、気になるところです。
＊このプロジェクトは「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」という街の取り組みの一環で、ワコールのグループ企業である東京・南青山のスパイラル／株式会社ワコールアートセンターが、アート活動とともに推進しています。詳しくはこちらで ＞
＊＜後編＞に続く（12/28更新予定）
デザイン／WATARIGRAPHIC
