2022.11.23

IoT展示会レポート・後編/歩き方をAIがコーチング。なりたい自分に近づく

前編は、「CEATEC2022」で京セラによって発表された「人間拡張」という研究成果についてご報告しました。『舞(まい)』というコンセプトのもと、発表されたテクノロジーの中でも、より強くコンセプトを表現しているのが、ワコールとの共同開発による「歩行センシング&コーチングシステム」です。

センサーをつけて歩行するだけで、速度はもちろん、揺れや視線の高さなども測定できる。さらに、イヤフォンから歩き方のコーチングも受けられる。 センサーをつけて歩行するだけで、速度はもちろん、揺れや視線の高さなども測定できる。さらに、イヤフォンから歩き方のコーチングも受けられる。

今の自分の歩き姿をタイムリーに診断

まずは、デモンストレーションを見てみましょう。頭・腕・足首の3カ所にセンサーをつけて歩行をスタート。同時に、「視線の高さ」「腕振り」「推進力」「歩幅」「左右揺れ」がディスプレイ上のタコメータに表示されます。

説明をしてくれたのは、村上エドワードさん(京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ 主幹技師)。 説明をしてくれたのは、村上エドワードさん(京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ 主幹技師)。 センサーは小型で軽量。歩行の速度はもちろん、揺れや視線の高さなども測定。 センサーは小型で軽量。歩行の速度はもちろん、揺れや視線の高さなども測定。

目指すイメージに合わせて歩き方をコーチング

今回の発表で注目が集まったのが、AIによる歩き方のコーチング。あらかじめアプリ上で自分の「なりたいイメージ」を選んでおくと、そのイメージに近づくための歩き方を、イヤフォンを通してアドバイスしてくれるのです。

村上エドワードさん(右)今の歩き方がどんなイメージに近いか、画面上の丸印で示される。写真の時点では、「しゃきしゃき きびきび」のイメージに近いと表示。歩き方が変わると丸の位置も移動する。

あらかじめ選べる「なりたいイメージ」は、「ゆったりしとやか」から「しゃきしゃき きびきび」など4種類。歩きながら、いま自分がどのイメージにいるのかがわかりつつ、目指すイメージに近づくための改善点も知ることができる。たとえば、「腕をもっと大きく振って」「歩幅を大きく」など、指示はとても具体的です。

鏡もカメラ撮影も不要で、小さな端末の装着と手もとのスマホだけで、診断からコーチングまで解決できる。美しさを手に入れる方法はいろいろだけれど、身軽で楽しみながらできるこんな方法があれば、運動嫌いの人でも継続できるかもしれません。

さらには、歩いている姿をアバターを通してさまざまな角度から見ることもできるとのこと。ゆくゆくは、自分の姿をしたアバターも実現できる(!)そうで、見るのが楽しみのような、怖いような…。

歩いた姿をアバターが画面上で再現してくれる。歩いた姿をアバターが画面上で再現してくれる。

歩行の結果からトレーニングメニューの提供も

この小型ウェアラブルセンサを1日つけて測定すれば、歩幅や距離などのデーターはもちろん、1日の中でどんな歩き方がどれくらいの割合で実践されていたかまで、結果として導きだされます。「しゃきしゃき きびきび」を自分では目指しているつもりでも、「よろよろ ふらふら」な時間帯が多いということも、あるかもしれません。

髙橋康輝(東京有明医療大学 保健医療学部 准教授)

このように、目指すイメージと現実の差をうめるため、ワコールが中心となってトレーニングメニューの開発も進行中。2か月間のプログラムを組んで実証実験も進んでいます。

自分で気づくのが難しい歩き方のくせや印象を、しっかりと分析の上、改善点を示してくれるのが、このテクノロジー。鏡のようであり分身みたいな最新技術は、これからの「美しさ」をつくるうえで、欠かせない存在となりそうです。

健康なだけじゃない、「幸せな人生」のためのテクノロジー

この研究は、京セラとワコールとの共同によるものです。その経緯と今後の展望を、今井 浩(ワコール 人間科学研究開発センター長)はこう語ります。

聴覚拡張ヒアラブルデバイス

「からだ文化研究プロジェクト」の中でも、京セラさまが推進する『人間拡張』(前編を参照)の考え方はとても重要なポジションをしめます。人間拡張といっても、広く考えれば、私たちが長年にわたって提供してきた『装うこと』『ファッション』も含まれます。『印象』『美しさ』といった曖昧なものを、技術によって具現化していく。とても意義のあることだと思います。京セラさまもワコールも、共に京都で創業した会社です。京都発の技術を、世界へ! 楽しみにしていてください」

この言葉に大きくうなづきながら、横山 敦さん(京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ所長)さんは、こう締めくくりました。

蒲池恒彦さん(京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ 主幹技師)

「医療や技術が進み、健康寿命が伸びた今。でも、ただ健康なだけではなくて、社会と関わり、貢献できてこそ、生きがいになるのだと思います。そのときに、今回紹介した技術がサポートします。それが実現してこそ、本当の幸せな人生ではないでしょうか。

それも、遠い未来の話ではありません。2023年以降、近いうちに実現を目指します。そして、気づけばいつの間にか生活の一部になっていた、となることを願っています」。

撮影/高木亜麗
デザイン/WATARIGRAPHIC

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