美しい肌のためにはしっかり栄養素を摂取すること、さらに朝ごはんを習慣化すること、それらの重要性を教えてくれたのが、管理栄養士の森由香子さん。今回はさらにテーマを深めて、たんぱく質についてのお話を伺います。森さんが提唱するキーワード「ダブルたんぱく」について、また簡単にできる料理まで教えてもらいました。
朝ごはんはパンとコーヒー。
それだけではNG!?
「#04にて朝ごはんの重要性についてお伝えしましたが、皆さんは朝ごはんにどんなものを食べているでしょうか。パンとコーヒーだけ、野菜ジュースだけ、菓子パンだけ、という人も少なくないかもしれません。でも実は、その内容では朝食をとっている意味がないといってもよいでしょう。食事の質こそが何より大事になってくるのです。
朝ごはんに欠かせない栄養素、それはたんぱく質です。たんぱく質とは、炭水化物、脂質とともにエネルギー産生栄養素のひとつです。細胞を構成する主要な成分であり、筋肉・臓器・皮膚・毛髪、ホルモン、酵素、抗体などの成分として、生命を維持するのに欠かせません。そのため、日々の食事で欠かさずとることが必須なのです。
高齢女性を対象にして、朝、昼、夜、3食のたんぱく質の摂取量と骨格筋機能との関係性を調べたところ、朝食で多くのたんぱく質を摂取している女性のほうが、夕食で多く摂取している女性よりも骨格筋指数が高いことがわかりました。更年期に入って筋肉量や骨量が気になっているならなおさら、たんぱく質たっぷりの朝ごはんが有効であることを理解していただけたでしょうか」

動物性×植物性の
「ダブルたんぱく」を味方につける
「では、どんな食品からたんぱく質をとると筋肉合成が高まるのでしょうか。近年の研究で少しずつ明らかになってきたのが、『植物性食品由来のたんぱく質と、動物性食品由来のたんぱく質をブレンドしてとることが、運動後の筋肉づくりに効果的である』という事実です。これは、植物性食品由来と動物性食品由来で、体内の吸収速度が異なることが関連しているといわれています。その差により、筋肉をつくる元となるアミノ酸(たんぱく質が分解されたもの)が長時間血液中に留まるため、筋肉合成がより促進されるのではないか、と考えられているのです。
そこで意識したいのが『ダブルたんぱく』です。動物性食品は必須アミノ酸や飽和脂肪酸、ビタミンB群、鉄分、亜鉛を多く含みます。植物性食品は食物繊維やカロテノなどの抗酸化物質が豊富です。このふたつを組み合わせることで、栄養素のバリエーションが広がるほか、アミノ酸バランスや腸内環境までもが整います。たんぱく質の代謝が効率的に行われて、鉄分の吸収もよくなります。つまりはいいことづくめなのです」
肉、魚、卵と大豆・大豆製品の
組み合わせを意識すればOK
「朝ごはんにおすすめのダブルたんぱくメニューを紹介していきましょう。難しく考えることはありません。動物性食品である肉、魚、卵のいずれかに、植物性食品の大豆・大豆製品食品を組み合わせればいいのです。王道は、ごはん、焼き魚あるいはお肉のソテー、豆腐のお味噌汁、サラダという和定食ですね。パン食の場合、ツナの水煮缶と野菜をサラダにしてトーストに乗せ、ゆで大豆入りヨーグルトを合わせてみてはいかがでしょうか。

また、肉豆腐や麻婆豆腐は、その1品だけでダブルたんぱくが叶う便利メニューです。挽肉と豆腐、おからを混ぜた豆腐ハンバーグや、ぶり大根に高野豆腐や厚揚げを加えた煮物などもいいですね。とにかく時間がない人は、究極のダブルたんぱくメニュー、納豆卵ごはんを覚えておいてください。
私たちのからだは、自分の食べたものでできています。食事の果たす役割は大きく、無意識に行なっている食生活、食行動は、良くも悪くも今後の健康に影響を与えるでしょう。だからこそ、『ダブルたんぱくの朝ごはん』で暮らしを豊かに。人生100年時代、この習慣で健やかなからだを維持していきましょう」
イラスト/いしわたりきわこ
デザイン/日比野まり子