清水焼の郷、清水焼団地で京都の手仕事の魅力に触れる

清水焼の郷、清水焼団地で京都の手仕事の魅力に触れる

整う、味わう、きれいをみつける ワコールボディブックと歩く京都 Vol.3

歴史と伝統をつなぐ街、京都。京都はそれと同時に、新しいものを迎え入れ、こころづくしでおもてなしをしてくれる懐の深い街でもあります。さまざまな魅力を持つこの街は、実はワコールボディブックを運営するワコールの本拠地。ワコールボディブックの“地元”だからこそ知る、気取らずに、素のままで楽しむことができる京都へご案内します。京都には、からだとこころを美しく整えるヒントがたくさん詰まっています。Vol.3では、京都の伝統工芸品である清水焼の窯元や問屋が多く集まる山科の「清水焼団地」へ。2021年4月にリニューアルオープンした「TOKINOHA Ceramic Studio」さんを訪れました。

清水焼を新たな視点で伝える「TOKINOHA Ceramic Studio」へ

清水焼を新たな視点で伝える「TOKINOHA Ceramic Studio」へ

光がたっぷりと差し込む穏やかな空間に並ぶのは、シンプルな造形にこだわり、色や質感によって様々な表情を見せる器たち。「清水焼」と聞くと、京料理などで使われるきらびやかな絵付けの器をイメージしますが、こちらに並ぶのは無地ですっきりとした形のものが中心。日々の料理に馴染み、引き立ててくれる、控えめなデザインが印象的です。

清水大介さん、友恵さん。陶芸家の家に生まれ、京都の作家の元で修業後、独立。2009年、同じく陶芸家の奥様・友恵さんと工房を始め、2011年から清水焼団地にてアトリエ&ショップ「TOKINOHA」をスタート。2021年春にそれまでそれまで離れた空間にあったショップと工房を一体化した「TOKINOHA Ceramic Studio」をオープン。 清水大介さん、友恵さん。陶芸家の家に生まれ、京都の作家の元で修業後、独立。2009年、同じく陶芸家の奥様・友恵さんと工房を始め、2011年から清水焼団地にてアトリエ&ショップ「TOKINOHA」をスタート。2021年春にそれまで離れた空間にあったショップと工房を一体化した「TOKINOHA Ceramic Studio」をオープン。

「僕たちが目指しているのは、作品とプロダクトの中間のような存在の器。料理を盛り付けることで完成する、そんな器を理想としています」。そう話すのは、代表の清水大介さん。陶芸家として独立後、作家として作品を発表していくなかで「作家の個性や世界観を追求するうちに、使う人や使いごこちを無視したもの作りをしているように感じはじめて。棚に飾られる“作品”としての器ではなく、“使われるための器”を作ろうと考えたのが『TOKINOHA』誕生のきっかけでした」。
無駄を削ぎ落としたミニマルなデザイン。土の質感や釉薬の色の重なりによって様々な表情を描く器たち。料理をぐっと引き立てて、手持ちの器にも馴染み良い。抜群の使い勝手の良さが支持を集め、多くの飲食店や料理家がオリジナル器の制作を依頼、遠方から足を運ぶ愛用者も多いそう。
2021年には、「作り手と使い手の距離が近づくことで、良い相乗効果が生まれたら」との思いから、離れていた工房とショップを一体化した「TOKINOHA Ceramic Studio」をオープン。従来の器店にはない、様々な“体験”が得られる空間へと一新させました。

TOKINOHA Ceramic Studio TOKINOHA Ceramic Studio

作陶風景を間近で眺める工房一体型ショップ

ユニークなのは、ショップと工房をガラス窓一枚で隔てた間取り。
「イメージしたのは、ベーカリーやケーキ屋さんのような厨房と店舗が一体型になった作り。器がどうやって作られているのか、どんな人が作っているのか。また、職人には、どのような人が器を求めているのかを互いに認識できる空間にしたかった」と清水さん。ガラス越しに職人たちが作業する姿を目にすることができ、さらに作り手から直接器の特徴や使い方などを聞くことができる。「お店で器を買う」こと以上に、作品との距離がぐっと縮まる気がします。

窓越しに職人の作業風景を見ることができます。焼成前の器が見られるのも貴重。

窓越しに職人の作業風景を見ることができます。焼成前の器が見られるのも貴重。

清水さん夫妻も職人とともに作陶を行います。

清水さん夫妻も職人とともに作陶を行います。

木を配したモダンな店内では、シンプルで料理映えするデザインが特徴の「shiro-kuro」、鉱物のようなゆらぎのある表情が楽しめる「copper」など、趣の異なる10のシリーズを展開。商品は実店舗と直営のオンラインストアを中心に販売し、店舗でしか手に入らない商品も。

ころんとした形とまろやかな色合いが美しい「tetra」シリーズ。

ころんとした形とまろやかな色合いが美しい「tetra」シリーズ。コーヒーカップ3,520円、ボウルS1,980円、プレートL6,380円など。

珍しい「楽焼体験」ができる1Dayレッスンに挑戦する

珍しい「楽焼体験」ができる1Dayレッスンに挑戦する

工房では、作陶のプロセスを体感できる1日体験を実施。ロクロを使って器を造形する「電動ロクロ体験」に加え、当日作品を持ち帰ることができる「楽焼体験」(50〜60分8,800円、ドリンク付き)も開催されています。
「陶芸は成形後の作業が多く、体験したあと自分の手元に作品が届くのは、2ヶ月後ということも。体験したときのワクワク感や感動が薄れてしまわないうちに、作った作品を手にしてほしい! そんな思いから生まれたのが『楽焼体験』です」

体験では仕上げまで職人さんがマンツーマンでレクチャーしてくれます。

体験では仕上げまで職人さんがマンツーマンでレクチャーしてくれます。まず、職人が作った素地から好きなデザインを選び、その後、釉薬を選んで塗ります。釉薬の塗り方によって、焼き上がりの表情も様々。今回選んだ釉薬は、薄めに塗ると緑がかった色に、濃く塗ると青く、塗らずに燻した部分は素地の黒が出てくるそう。

釉薬を塗った器を楽焼専用の窯に入れ、10分後に火バサミを使って取り出します。

釉薬を塗った器を楽焼専用の窯に入れ、10分後に火バサミを使って取り出します。

用意しておいた新聞紙の上に着地させると器の温度によって炎が上がります。

用意しておいた新聞紙の上に着地させると器の温度によって炎が上がります。

燃え盛る炎にバケツをかぶせて燻します。

燃え盛る炎にバケツをかぶせて燻します。

一定の温度まで冷ましたら、バケツを開いてご対面。想像通りの色合いに仕上がっているかどうかは、完成したときのお楽しみ。

一定の温度まで冷ましたら、バケツを開いてご対面。想像通りの色合いに仕上がっているかどうかは、完成したときのお楽しみ。

フードスタンドで“陶芸”を味わう体験もできる

フードスタンドで“陶芸”を味わう体験もできる

ショップに併設のフードスタンドでは、粘土や釉薬といった陶芸の要素をイメージした、ユニークなオリジナルドリンクやデザートが出迎えてくれます。泥のようなインパクト抜群のビジュアルに驚くこちらは、「陶芸スタジオで粘土を飲む体験ができたら面白そう」との発想から生まれた「トキノドロ」880円。プロテイン、バナナ、ごまなどで作られたスムージーで、ほのかな甘味と香ばしさが癖になります。容器に使われている粘土は、器作りで実際に使用されているものだそう。

「トキノスミ」770円は、釉薬原料の灰に着目したドリンク。

「トキノスミ」770円は、釉薬原料の灰に着目したドリンク。竹炭やザクロ、ジンジャーなどを炭酸で割ったもので、見た目に反して飲みごこちは爽やか。凍らせた陶片を氷代わりに使うなど、随所に陶芸家としてのアイデアが光ります。

清水焼の可能性をさらに深堀する、セミオーダーシステムも

清水焼の可能性をさらに深堀する、セミオーダーシステムも

さらに、元は飲食店の方のみを対象としていた器のオーダーメイド生産を一般の方にも開放。ショップ2階のオーダーメイド専用ギャラリーにある500点以上の器から、好きな色や形を組み合わせて自分だけの器をセミオーダーできるという、ほかにはない取り組みが話題を集めています。(オーダーメイドの詳細は要問い合わせ)

ギャラリーに並ぶのは、これまでに飲食店などのオーダーで作られた器のサンプルたち。様々なデザインを眺めつつ、自分だけの器のイメージを相談できます。

ギャラリーに並ぶのは、これまでに飲食店などのオーダーで作られた器のサンプルたち。様々なデザインを眺めつつ、自分だけの器のイメージを相談できます。

京都 村上開新堂 むらかみかいしんどう

土や釉薬のバリエーションを表したサンプルチップ。選ぶ土や釉薬によって色々な表情が生まれます。

「清水焼は決まった技法や陶土などの縛りがなく、京料理や茶の湯の文化から発展してきた自由度の高い焼きものなんです。そして、お店のあるこの地域が「清水焼団地」と名付けられたのは、地名として名前が残ることで、清水焼の文化を後世に伝えていきたいという願いが込められていると聞きました。この場所で、こんな清水焼もあるよと提案していくことで、お客さんや次世代の作り手に清水焼を知ってもらいたい。それが伝統を繋いでいく過程になればいいなと思っています」と清水さんは話します。

「見る」「買う」「味わう」「体験する」。様々なアプローチから器や陶芸をより身近に感じることができる「TOKINOHA Ceramic Studio」。足を運ぶことで得られる、新しい出合いと体験が待っています。

TOKINOHA Ceramic Studio
トキノハ セラミック スタジオ

住所

京都府京都市山科区川田清水焼団地町8-1

電話番号

075-632-8722

営業時間

10:00~18:00

定休日

火曜休

TOKINOHA Ceramic Studio
取材・文/下川あづ紗
撮影/わたなべよしこ
構成/梅原加奈
デザイン/WATARIGRAPHIC