
「いつも自分の写真に納得がいかない」。SNSを中心に写真を撮ったり見られたりすることが増えた今、誰もが「自分史上最高の自分」を写真におさめたいはず。なのに、写真に撮られることに抵抗があったり、セルフィーでしか満足できなかったりする人も多いのでは。
ポートレート写真家のJo Moriyamaさんのインタビュー最終回では、「好印象をつくる写真の撮られ方」を聞きます。ライターRによる実践ポートレート(before/afterに注目!)もご紹介します。
写真を撮る前の簡単テクニック
ライターR「先日、ビジネスシーン用に写真を撮ってもらう機会があったのですが、どれも不自然な表情で“思っていたのと違う”」と落ち込みました。これ、何がいけないのでしょうか」
【アドバイス前】

(上の写真を見て、以下Joeさん)
全体的に力が入った状態に見えます。左の写真は顔と肩に力が入っていますね。目が見開いていて、自然な表情とは言えません。右側の表情もぎこちなさがあって自信がないように見えますね。
ビジネスシーンでは、「この人に相談したい」「話してみたい」「会ってみたい」と思ってもらうことが大事です。人間味のない人に、愛着や共感は生まれませんよね。「その人らしさ」を引き出すことで、好印象を与えることができます。
こういうときは、目を一度ぎゅっとつむると、目の力が抜けます。また、撮影場所に少しでもスペースがあれば、3メートルほど離れたところから歩いて来て、笑顔でカメラに向かって振り返ると、自然な表情になります。
右の写真も、後ろでぎゅっと腕を持ってしまっているので、「苦しい印象」になってしまいます。写真から「安心感」は感じられませんよね。
では、一度撮ってみましょう。まずは後ろを向いて、笑顔で振り返ってみてください。目は大きく見せないこと。すでにまつ毛エクステで大きくする工夫はできているので、目が細くなることは気にせず、笑ってください!
【アドバイス後1】

表情がやわらかいのはもちろん、からだの力も抜けていて自然体ですね。それでは、少し下も向いてみましょうか。目をつぶってみてもいいですよ。
【アドバイス後2】

目線を変えるのも、テクニックのひとつです。カメラに慣れていない人は、目線を外して撮り始めるのもいいかもですね。慣れてきたらカメラのほうを「ふと」向いてもらって、シャッターを押すといいでしょう。
次は手を後ろにして、右斜めを見てみましょう。目に力が入っているときは、ぎゅっとつむってから開く! です。
【アドバイス後3】

いい写真が撮れましたね。手を後ろに回しても、過去の写真と比べて苦しくないように見えます。
カメラに慣れていない人だと、レンズの前に立った瞬間、緊張して「本来の自分の姿」とは違う感じに写ってしまいます。ポーズにこだわりすぎたり、無意識にカッコつけようとすると「非日常」な姿に。
撮影では、イメージして臨むのもテクニックのひとつ。カメラの前にいると考えず、「幼なじみに会っているとき」や「大好きなパートナーと一緒にいるとき」を想像して立ってみましょう。
特に、好きな人といる自分は「自然でいちばんかわいい」はず。そんな表情をいつでも引き出せるようになると、いい写真も増えてくるはずです。ぜひ、実践してみてください。
動画で「自分らしさ」を引き出す裏技
ライターR「写真を撮られるときのテクニック、とても勉強になりました。では動画の場合はどうすればいいでしょうか? 結婚式のビデオレターなど、カメラの前に立ってお祝いの言葉を伝えることがあるのですが」
今って、便利なことにスマホで撮ったら、簡単にトリミングできますよね。それを生かすのです。
録画ボタンを押した瞬間に「おめでとうございます!」と挨拶から始めなくていい。例えば、「おはようございます!」とか言ってみてください。第一声は緊張しやすいため、よく発する言葉をまずは元気よく言ってみる。それに続けて、しゃべってみては。いらない部分は、あとからカットすればいいだけです。
また、録画ボタンを押したらすぐにカメラの前に行かず、少し離れたところから歩いて、録画中にカメラの中に入ってくるのもいいでしょう。
最初からカメラの中にいると、顔もからだも硬直しやすいです。この「ポッと出演」は、結構おすすめです。

写真を通して「自分に向き合う」
今まで何万人と写真を撮ってきましたが、撮影中に涙を流す人もいました。自分が無意識にカバーしてしまっていたものを取っ払って、写真を通して本当の自分自身を見つめることができたとき、込み上げてくるものがあるのでしょう。自分と向き合うことで、今まで見えていなかった自分を見つけられるのです。
撮影では、自己肯定感が低い人ほど、変化が見えやすいですね。before/afterの違いが大きいので、その分感動も高まるのでしょう。
一方、自分に自信がある人は「自分が思う正解」を取り外さなければいけないので、その分自分らしさを出すことが難しいです。
セルフプロデュースは、メイクやファッションによる工夫ももちろん必要なのですが、普段から自分と向き合い、自然体でいることが何よりも重要です。
人間味あふれるあなたが、いちばん美しいということを忘れないでほしいです。
――セルフプロデュースとは、「自然な自分らしさを知ることから」と、Jo Moriyamaさん。「自分らしさ」をカバーせず、いかに個性、人間味を引き出せるかを考えることで、美しい印象を与えることができるのだとわかりました。
膨大な情報やアドバイスであふれる今、見失ってしまった「自分らしい」「美しさ」の概念を取り戻せるお話の数々。何度も読み返してしっかり身につけたいものです。
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Jo Moriyama(ジョー・モリヤマ)
ポートレート写真家、表情の専門家。
1978年、ハンガリー人の母と日本人の父のもと、ベルギー・ブリュッセルで生まれる。幼少期をベルギーとスイスで過ごし、多国籍の環境で国際感覚を養った。14歳で日本に移住し、鎌倉で過ごす。2003年世界中を旅した写真を見た友人のすすめで写真家を志す。独立後、芸能人や著名人のポートレート写真家として、国内外のファッション誌に携わる。最新著書『美しい表情は人生を変える』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、表情の演出方法からメイク、ヘアスタイルのアドバイスなどまで役立つセルフプロデュース術が満載。
オフィシャルサイト:
https://www.world-jomoriyama.com/
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写真提供/ジョー・モリヤマ
デザイン/WATARIGRAPHIC