夏に欠かせない水分補給を、より涼やかに。日本茶専門店に教わる、水出し茶の楽しみ方

夏に欠かせない水分補給を、より涼やかに。日本茶専門店に教わる、水出し茶の楽しみ方

暑さもいよいよ本番。ひんやり冷たい飲み物がおいしくなる季節がやってきました。水分補給は欠かせないけれど、暑い日はお湯を沸かすのもちょっぴり億劫。水分は摂りたいけれど熱いお茶では汗をかいてしまいそう……。そんな季節は、水で茶葉を抽出する、水出し茶が重宝します。水出しのお茶といえば麦茶が定番ですが日本茶でも美味しいアイスティーを楽しむことが可能。今回は、高級抹茶の産地として知られる宇治市にある日本茶専門店<売茶中村(ばいさなかむら)>さんに、日本茶で作る水出し茶の楽しみ方を教わりました。

茶葉本来の旨みと甘みが凝縮
夏こそ飲みたい、清涼感満点の水出し茶

茶葉本来の旨みと甘みが凝縮 夏こそ飲みたい、清涼感満点の水出し茶

梅雨から夏、汗がじんわりと滲みはじめる時期に暑さで乾いた身体を美味しく潤してくれる水出し茶。
「水で入れたお茶は、お湯で出すときよりも苦味成分であるカテキンが抽出されにくいのが特徴。ゆっくりじっくり、低い温度で時間をかけて抽出することで、茶葉本来の甘みや旨みも感じやすくなります。やわらかく丸みのある味に仕上がるので、日本茶の苦味が苦手という人にも飲みやすいですよ」
と、<売茶中村(ばいさ なかむら)>の店主・中村栄志さん。
熱を加えずに抽出するので、美肌作りに欠かせないビタミンCやリラックス成分と言われるテアニンが壊れずに残るのもポイント。カフェインも少ないため、就寝前に飲んでも安心というのもうれしいところです。

美味しい「水出し茶」をたのしむために
覚えておきたい淹れ方のポイント

美味しい「水出し茶」をたのしむために覚えておきたい淹れ方のポイント

「どんな茶葉でも水出し茶をたのしむことができますが、おいしさにこだわるならいつもより上質な茶葉を使うのがポイント。特に“深蒸し茶”は、水からでも短時間で抽出でき、茶葉の旨みをそのまま味わうことができます」。

おすすめは深蒸し茶とのことですが、もし浅蒸しの茶葉を使うときは抽出時間を長く(6時間程度が目安)すればおいしく仕上がるそうです。

使用する茶葉の量は、お湯出しの1.5〜2倍ほど。水700mlに対して10〜15g程度が目安です。冷水ポットに茶葉を直接入れて、その上から氷をポットの上までたっぷりと敷き詰めます。

使用する茶葉の量は、お湯出しの1.5〜2倍ほど。水700mlに対して10〜15g程度が目安です。冷水ポットに茶葉を直接入れて、その上から氷をポットの上までたっぷりと敷き詰めます。

ポットにミネラルウォーターを注ぎ、冷蔵庫で1時間以上冷やせば完成。

ポットにミネラルウォーターを注ぎ、冷蔵庫で1時間以上冷やせば完成。お茶の成分が下に沈んでしまっていることもあるので、定期的に軽く振るとより早く成分を抽出することができます。

美味しい「水出し茶」をたのしむために覚えておきたい淹れ方のポイント
美味しい「水出し茶」をたのしむために覚えておきたい淹れ方のポイント

今回はフィルター付きのポットを使っているので茶葉をそのまま入れていますが、ない場合は飲むときに茶こしでこしたり、茶葉をお茶パックに入れて使用したりしてもOKです。

また、作った水出し茶は早めに(24時間以内が目安)飲みきる・常温で保存しない・容器を清潔に保つなど、安全面のポイントも抑えておきたいところ。「宵越しのお茶は飲んではいけない」と古くから伝えられている通り、お茶はお湯や水に入れてから痛むのが早いという特徴が。ポイントを抑えて、おいしく安心していただきましょう。

気分を変えたいときに、おすすめの水出し茶アレンジ

気分を変えたいときに、おすすめの水出し茶アレンジ

水出し茶にちょっぴりアレンジを加えたいときは、すっきり爽快な「緑茶ソーダ」はいかがでしょうか? 少し濃いめに抽出した水出し茶を用意して、グラスに注いでおいた炭酸水の上からそっと流し込むだけ。水出し茶のまろやかな甘みと旨みに炭酸の清涼感が重なって、暑い日や気分を切り替えたいときにぴったりの爽やかな一杯が完成します。

みずみずしい飲みごこちで、心身の潤いを補ってくれる水出し茶。おいしい一杯と一緒に、蒸し暑い夏をここちよく過ごしましょう。

みずみずしい飲みごこちで、心身の潤いを補ってくれる水出し茶。おいしい一杯と一緒に、蒸し暑い夏をここちよく過ごしましょう。

今回、お話を伺った<売茶中村>は高級抹茶の産地として知られ、多くの茶店が軒を連ねる京都・宇治に昨冬誕生した製茶場を備えた日本茶専門店。

今回、お話を伺った<売茶中村>は高級抹茶の産地として知られ、多くの茶店が軒を連ねる京都・宇治に昨冬誕生した製茶場を備えた日本茶専門店。宇治の老舗茶商の流れをくむ家に育ち、鹿児島のお茶農家で7年半修業を重ねた店主の中村栄志さんが、「生産者や製茶場で働く人など、ごく限られた人しか知らない “揉みたて” のお茶のおいしさを広く知ってもらえる場所を作りたい」と、オープン。店内で購入できる茶葉は常時10種類前後。「作り手の顔が見える茶葉をお届けしたくて」と、中村さん自ら生産者のもとを訪ね、生育環境や品質が優れた茶葉を厳選。製茶場でそれぞれの茶葉の持ち味を生かすよう製茶したものばかりです。また、店内にはサロンも併設。揉みたての煎茶を筆頭に、ブレンド煎茶やほうじ茶、抹茶のラテなど、さまざまなお茶をその場で楽しむことができます。

日本でもここだけという、製茶場併設のお茶処。

日本でもここだけという、製茶場併設のお茶処。「気温や湿度によって機械の設定を変更。さらに茶葉の状態を確かめながら、時間や温度を調整していきます」と中村さん。自前の製茶場を備えるからそこ出来る細やかな対応が、おいしい一杯を生み出します。

売茶 中村

売茶 中村
ばいさ なかむら

住所

京都府宇治市宇治蓮華49

電話番号

0774-26-4082

営業時間

12:00~18:00

定休日

不定休

取材・文/下川あづ紗
撮影/わたなべよしこ
構成/梅原加奈
デザイン/WATARIGRAPHIC