• Wellness
  • 2023.02.22

入浴をより充実させる4つのポイント

バスタイムは美養のゴールデンタイム<後編>

入浴をより充実させる4つのポイント

温熱効果やリラックス効果、疲労回復に冷え対策など、「湯船につかる習慣のある日本人でよかった〜」と思えるメリットが入浴にはたくさんあります。ならばそのよさを、存分に堪能したいと思いませんか? <前編>入浴がもたらす、からだや美容にいいことに続き、お風呂研究の第一人者として知られる日本薬科大学 特任教授の石川泰弘さんに、正しい入浴メソッドやバスタイムを有意義なものにする方法を教えていただきました。

POINT1
熱すぎてもダメ! ここちよい湯温で約15分、肩までつかる

「前編でもお話ししましたが、入浴による最大のメリットは、浮力・温熱・水圧の三つの効果です。この恩恵を最大限に得るためには、40℃前後の湯温で約15分、肩までお湯につかることが大切なんです」(石川さん)

40℃『前後』と幅があるのは、熱めのお湯が好きな人やぬるめを好む人など、ここちよいと感じる湯温が人それぞれ微妙に違うため。「目安として40℃に設定して沸かしたお湯に足を入れてみて、熱いと感じたら1℃下げる、ぬるいと感じたら1℃上げるというふうに調整しながら、自分なりのここちよい湯温を探してみてください。このとき最重視すべきは、肩までお湯につかって無理なく15分間入っていられること。この15分という時間がうっすらと汗をかいて血液循環が程よく高まり、免疫力がアップする『体温1℃アップ』の温熱効果につながるポイントです」

ぬるめの湯温にしてものぼせやすい人には、こんなアドバイスが。「湯船に長く入っていられないなら、5分入って少し休憩をはさむといい。ですが、入浴であたたまった血液が全身を巡り、筋肉層まであたためるまでには最低でも10分くらいは必要なので、合計で10分以上つかるようにしてみましょう」

反対に、湯温が高いのを好む人には注意してほしいことがあるそう。「熱いお湯なら、わずか数分でからだも熱く感じます。しかし、数分では末端まで血液がいきわたらず、血圧の変動も激しくなることからのぼせてしまいがち。芯まであたたまっていないので冷えるのも早く、温熱効果が続きにくいです。また、水圧が苦手だったり、肩までつかると苦しくなるようなら、お湯の量を減らしましょう。入浴中に心臓がドキドキし始めた場合は、無理は禁物。すぐに湯船からあがって休むようにしてください」

POINT2
食前食後すぐは避け、十分に水分をとって入浴を

食前食後すぐは避け、十分に水分をとって入浴を

効果を存分に得るには、入浴のタイミングもポイントの一つ。「お風呂に入るタイミングとして適さないのは、食事の直前直後です。理由は、本来なら消化に使われるはずの内臓を流れる血液が体表面に巡ってしまうため消化機能が落ちるから。食前なら30分以上前に入浴を済ませ、食後は最低でも1時間ほど休憩してから入浴するよう心がけるといいですね」(石川さん)

食事との間隔以外にも、夜の入浴では就寝時間との兼ね合いが大切に。「入浴後、1時間ほどかけて体温はゆっくり下がっていきますが、体温が下がるこのときが入眠しやすくなるタイミング。スムーズに質のいい眠りにつくためには、ベッドに入る時間から逆算して1時間前くらいにはお風呂から上がっているようにするのがおすすめです」

そしてもう一つ、入浴前に必ずしてほしいのが水分補給。「なぜなら、お湯につかって汗をかくことで、血液中の血漿の量が約9%減少するという研究データがあるため。血漿は血液の55%ほどを占める溶液で、からだに栄養素を運んだり、老廃物を肺や腎臓に運んで掃除をする大切な役割を担っています。この血漿の働きが落ちるのはもちろん、血漿の量が減ることで水分が抜けて血液がドロドロに……。こんな事態も、コップ1杯(200mL)程度の水を飲むことで防げます」。水分を補給していれば、入浴で汗をかいても血液はサラサラのまま。手軽にできることなので、毎日の入浴習慣にぜひ加えてみて。

POINT3
照明や浴室温度、香りなどバスルームの空間演出も大切

風邪のひき始めや冷え、花粉症対策にもなる入浴で健康促進

交感神経優位の緊張状態から解き放ち、副交感神経優位のリラックス状態へ身を置くことも、入浴が果たす大切な役割の一つです」と石川さん。「最近では、精神的なリラックス空間としてバスルームやバスタイムの演出を楽しむ人が増えてきました。例えば、照明の代わりにキャンドルを灯したり、音楽を聴いたり。または、観葉植物を飾ったり、好きなアロマオイルを垂らして芳香浴をしたり。家族とのスキンシップの場にもなるし、自分と向き合う瞑想の場にだってなる。いまやバスルームは、人を和ませるさまざまな空間になり得る時代。ぜひいろいろな工夫をして、リラックス効果を高めてみてください」

ただ冬場の注意点として、暖かいバスルームと寒い脱衣所の温度差は若い世代にとってもからだの負担になりやすいので対策を。「ヒヤッとする冷たい床や空気は、一瞬にしてからだをリラックス状態から緊張状態へと引き戻してしまいます。暖房設備などを上手に活用して、せっかくの温熱効果やここちよさを逃がさないように気をつけましょう」

PONT4
炭酸ガス系やスキンケア系など入浴剤を上手に使い分け

オン/オフの切り替えになる入浴は、質のいい睡眠へのプロローグ

バスタイムをより楽しむために、入浴剤を使っている人も多いでしょう。一方で、さまざまなタイプがあって迷ってしまうという声もまた多い。「市販の入浴剤の役割は、主にからだをあたため、痛みなどを和らげるといった温浴効果を高めることと、汚れを落として皮ふを清潔にする清浄効果を高めること。浴用化粧料の分類であれば化粧品と同じく、キメをととのえたり肌をしっとりさせるなどの効果があり、医薬部外品であれば、あせもや冷え改善などの効能がより細かく明記されているはずです」(石川さん)

入浴剤の種類は、成分や効能によって大きく5種類。「まず、主に温泉由来の硫酸ナトリウムや重曹などからなる無機塩類系。保温効果や清浄効果が高いのが特徴です。次に、お湯に入れるとシュワシュワするタブレット型や粒状の炭酸ガス系。血行促進や疲労回復効果が期待できます。そして、重曹にメントールなどの清涼成分を配合した、爽快感のある無機塩清涼系。生薬などが入った薬用系は、配合された成分によって独特の香りがあり、肌あれや腰痛、肩こりなど、緩和したい症状に合わせて選べるのが利点です」

残りの一つが、保湿成分などの美肌成分を配合したスキンケア系。「入浴中はからだの皮脂が溶け出してしまうので、肌が乾燥しがちな人には特におすすめです。保湿したくても手が届きにくい背中などにも、湯船につかるだけで保湿成分がいきわたるので、入浴後のボディケアが少し楽になります」

入浴を、健やかな心とからだのリズムづくりの一助に

「働き方が多様になったからこそ、休息のあり方にも目を向ける必要があるいまの時代。そんな中で、質のいい睡眠をとることや自分なりのリラックスの仕方があることは、以前よりずっと大切になってきています。入浴は、そのどちらにも大きく貢献できるメソッドの一つ。ぜひ効果的な入浴法を実践して、美を養い、毎日をここちよく過ごすためにからだのリズムをととのえてください」(石川さん)

  • 石川泰弘(いしかわ・やすひろ)
  • 石川泰弘(いしかわ・やすひろ) 日本薬科大学 特任教授、スポーツ健康科学博士。大手企業勤務時よりテレビや雑誌などのメディアを通じて入浴剤のメリットを啓蒙し、大ヒットシリーズを量産。温泉や入浴、睡眠に関する著書も多く出版し、全国で講演を行うかたわら、ラグビー日本代表チームをはじめ多くのトップアスリートに入浴や睡眠を取り入れたリカバリー法を指導。2022年より文部科学大臣認定 職業実践力育成プログラム漢方アロマコースの運営委員長に就任。
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取材・文/田中あか音
イラスト/Akira Ayumi
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC