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  • 2023.01.18

一問一答! けがなく、楽しく走るためのヒント

ランニングに関する素朴な疑問をプロが解決!<後編>

一問一答! けがなく、楽しく走るためのヒント

やる気と走る場所さえあれば、いつでもどこでも始められるのがランニングのいいところ。ですが、体力的にキツそう……。いきなり走って、けがをしない? そんな不安がつきまとうのも事実。<前編>「そろえておきたいアイテム4選」に続き、<後編>の今回はランニング初心者の素朴な疑問やお悩みに一問一答。楽しく走るためのヒントを、マラソントレーナーの森田光希さんに教えていただきました。

Q1. ランニングはハードな気がして、体力に自信がないのですが……

最初は5分ランニングから。少しずつ走ることに慣れましょう

最初は5分のランニングから。少しずつ走ることに慣れましょう

「誰でも最初からスムーズに走れるわけではないですし、体力面を気にする必要もありません。体力がないから走れないではなく、走ることで体力アップを。少しずつ走ることに慣れていけるようにランニングメニューを立てて、一つずつ目標をクリアしていくと、自信も体力も自然についてきます」と森田さん。

「まずは2週間をワンクールとして、少しずつ走る時間をのばすメニューに挑戦を。続けるうちに持久力がついてきて、3ヶ月ほどで60分のランができるようになっていきます。体力がともなっていない状態でがんばって走ろうとしても、けがをしやすくなるだけ。そうなるとハードな記憶が刻まれて、せっかくランニングを始めても走ることが楽しくなくなってしまいます」

5分のランからスタート! 初心者向けメニューをご紹介。

最初の2週間:5分歩いて5分走る×6セットで60分
3〜4週目  :5分歩いて10分走る×4セットで60分
5〜6週目  :5分歩いて15分走る×3セットで60分

「このように走る時間を少しずつのばし、体力と相談しながらトレーニングしてみてください。この方法でだいたい3ヶ月くらい経つと、60分で8km前後を走るジョギングができるようになってきます。会話しながら走れるくらいのスローランニングから、あせらず楽しんでください」

Q2. ランニングとウォーキングはどう違うの?

違いは、活動量の大小。効率良くからだを動かすならランニング

「一般的に、どちらかの足が地面に接しているフォームのことをウォーキング、瞬間的にでも両足が地面から離れるフォームのことをランニングといいます。さらに、話せるくらいゆったりとしたペースで走ることをジョギング、またはスローランニングといい、それ以上の早いスピードならランニング、と区別されています。ランニングは軽いジャンプの連続と考えるとわかりやすいと思います」(森田さん)

ウォーキングもランニングも有酸素運動ですが、これらの身体活動量は厚生労働省が示す運動強度の単位「METs(メッツ)値」で数値化されています。METs(metabolic equivalent)は運動活動量の目安で、座って楽にしている状態を「1メッツ」の基準として、日常のさまざまな動作がどのくらいの運動量になるかを比較・数値化したものです。

METs(メッツ)値を比べると、ウォーキングは3〜4メッツ、ゆったりとしたジョギングは6〜7メッツ、ランニングは8メッツ程度とされ、スピードの違いによって運動活動量にも差が出ます。ちなみに、子供の頃からなじみのある「ラジオ体操第1」は4メッツです。

参照:身体活動・運動の単位(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/s1109-5g.html

「数値が示すようにランニングは活動量が多く、そのぶんカロリー消費も高いのがメリット。短時間で効率良くからだを動かせるので、運動の時間がなかなかとれない人にも向いています。一方、ランニングがハードに感じる人は、ジョギングやウォーキングからスタートを。軽めのウォーキングでも徐々に歩くスピードを早めてみるなどステップアップしていくと、いつの間にかジョギングができるようになり、やがてランニングも楽にできるようになっていきます。自分のライフスタイルに合わせて、気長に楽しみながら挑戦してみてください」

Q3. ひざや腰への負担が心配。けがをしない走り方とは?

ひざや腰への負担が心配。けがをしない走り方とは?

ひざや腰への負担が心配。けがをしない走り方とは?

歩幅はせまく、ピッチを速く、フォーム改善を

「ランニングは軽いジャンプの繰り返し。いかにからだに負担をかけずに軽やかに走るかがポイントです。そのためには、股関節をひらく角度を小さくして、深く踏み込まず、ひざの屈伸も浅めに。大事なのは、“ピッチ&ストライド“です。一歩一歩の歩幅はせまく、ピッチを速く。足を一歩踏み出したときに、つま先が視界に入らないくらいの歩幅をキープすることで、疲労感がたまりにくく、けがもしづらくなるはずです」(森田さん)

ランニングレッスンに参加する女性たちを見ていて気づくのは、歩き方に特徴のある人がとても多いことだそう。「長時間のデスクワークのせいか、前傾姿勢で背中が丸まり、ひざが前に出すぎた歩き方をしていたり。厚底靴などによる歩きぐせがある人は、反り腰で内股になり、つま先が内側を向いてしまっていたり。そんな姿勢のクセがあると股関節の踏ん張りがきかず、一歩踏み出すたびにからだが深く沈んでしまい、一歩のストライドが大きくなってぐらつきやすく、けがをしやすくなってしまうんです」。普段の姿勢や歩き方も意識して、ランニングフォームの改善に生かしましょう。

Q4. 走るときの正しい呼吸法は?

意識しすぎると逆効果。自然な呼吸で構いません

「以前はランニング時の呼吸法として、2回吸って2回吐く「スッスッ、ハッハッ」のリズム呼吸が楽だと言われていましたが、いまは特別な呼吸法を指導することはありません。呼吸の仕方を意識しすぎて、かえって息があがってしまう人が多いので、いつも通りの自然な呼吸のまま走るのが一般的になっています」(森田さん)

「途中で息が苦しくなってきたら、鼻からスーッと深く息を吸いこみ、ゆっくり長く、フーッと息を吐き切ってみてください。これをはさむことで息苦しさがリセットされて、呼吸が楽になる感覚があると思います。よりマニアックな話になりますが、息は「ヒー」「ハー」「フー」と吐き方を変えると肺の動かし方も変わるため、疲労感がやわらぐと言われています」。実際に走りながら試して、効果を確かめてみて。

Q5. 走る前後のウォーミングアップやクールダウンは大切?

走る前後のウォーミングアップやクールダウンは大切?

けがの予防、疲労回復のためにも省かず実践!

「まず事前のウォーミングアップは、無駄にけがをしないためにも不可欠です。筋肉のストレッチを必ず行うようにしましょう。私の普段のストレッチは、全身の筋肉をほぐす弾力ストレッチ。ランの推進力になる肩甲骨の可動域を広げて腕のふり幅を大きくし、足の運びをスムーズにするために股関節やひざ、太もも裏やふくらはぎの筋肉を伸ばしていきます。足を前後に大きくひらき、からだ全体を深く弾ませるように屈伸をして、筋肉を収縮させるのが柔軟性を引き出すポイントです」(森田さん)

ランニング後のクールダウンも、同じポーズでOK。ただし、からだを弾ませるのではなく、じんわり動かすのがポイントに。「ランニング後は筋肉が伸び縮みを繰り返したあとで疲労がたまっているため、腕や脚の筋肉をゆっくりグーッと引き伸ばします。運動で収縮した筋肉に、ピーンとまっすぐアイロンをかけるイメージ。腕を引き上げ、足裏までしっかりストレッチして、疲労感を流しましょう」。運動前は筋肉の覚醒、運動後は沈静と目的は異なりますが、どちらもすごく大事。ランニングとセットと考えて。

Q6. ランニングしていると胸やおしりの“ユレ”が気になるのですが……

ランニングしていると胸やおしりの“ユレ”が気になるのですが……

ウェアの力を借りて“ユレ”を軽減

前編でも話題に上がっていましたが、バストの場合は“ユレ”を抑えることが重要なポイント。「ランニング時、バストは大きく揺れています。ユレ軽減機能が付いたスポーツブラを着用して、バストをユレから守ることが大切です」(森田さん)

一方で、おしりも日々の“ユレ”によってたるむことがわかっています。「歩いたり走ったりするときは、おしりの筋肉のなかでも一番大きく、パワーも強い『大臀筋』という筋肉が使われます。正しい姿勢やフォームを心がけ、おしりに筋肉をつけていくのも“ユレ”対策の一つになると思います」

Q7. ずっと走っていると飽きてきそう……。マンネリ防止策は?

ずっと走っていると飽きてきそう……。マンネリ防止策は?

景色を変える、音を変える、ウェアを変える……楽しみ方はいろいろ

「ランニングはひたすら腕を振り、足を前に出し続ける単調な動作ですが、流れる景色や季節の変化を肌で感じることができるのは大きな魅力の一つ。日によってランニングコースを変えてみたり、寄り道をしてみたり。そんな工夫をしてみてはいかがでしょう。何か同時にできる楽しみがあると、飽きずに走れるのも確か。タイムアップしたいときはアップテンポな曲を、のんびり走りたいときはスローな曲をチョイスするなど、好きな音楽を聴きながら走ると退屈しないですよ」(森田さん)

モチベーションを保つために、好みのウェアをそろえるのも一つの手。「いまはさまざまな機能やカラー、デザインのランニングウェアがあふれているので選択肢もいろいろ。私自身も「このウェアを着てトレーニングする」という高揚感で、走るのが楽しみになることがあります」

気分を上げるという意味では、スポーツブラや機能性トップスにこだわるのもおすすめだそう。「私の場合、スポーツ用インナーをつけると胸がひらきやすくなってバストも上がるので、気持ちのスイッチが入る感じ。上半身が安定しやすく姿勢もととのうから、まさに背筋がピンとして気分も上がります」

ランニングがもたらす高揚感で毎日に楽しい変化を!

「ここ数年でランニングを始める人が増えていますが、ランニングならではの魅力は“高揚感”にあると思っています。軽いジャンプの繰り返しに例えられるように、おしりや太ももにある大きい筋肉を簡単に使えるランニングは短時間で代謝が上がりやすく、脳への刺激も伝わりやすい交感神経のオン/オフも切り替えやすくなるなど、気分的なメリットも多いです。そして、運動効率がいいのでダイエット向き(笑)。お正月太り解消に始めてみてはいかがでしょう」(森田さん)

寒さで代謝が衰え、運動量も減りがちな時季こそ、ランニングの始めどき。運動不足解消や体力アップ、気分転換にもなるランニングで、からだも心もあたためて。

※森田さんが着用しているウェアは「CW-X」。シューズは本人私物。

  • 森田光希(もりた・みき)
  • 森田光希(もりた・みき) マラソントレーナー。中学生の頃から陸上を始め、全国高校駅伝や全日本大学女子駅伝に出場。ブランクを経てランニングを再開し、現在はパーソナルトレーナーとして活躍している。「MAKE IT POSSIBLE」をスローガンに目標達成をサポートする「MIP」プロジェクトを立ち上げ、ランニング教室やマラソン教室なども開催。トレーニングを組みあわせ、けがなく走りを楽しむ指導が好評を呼んでいる。
    https://www.mip-run.com/
取材・文/田中あか音
撮影/新妻誠一
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC