大人の女性に必要なエクササイズとは

特集/背中美人は肩甲骨から!

中村格子(整形外科医)
取材・文/大庭典子(ライター)

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短期エクササイズでバランスの悪いからだに!?

前回お伝えした"錆びついた"肩甲骨チェックの結果はいかがでしたか。なかには「ガーン...6つ全部当てはまった」という方もいるかもしれません。「一度錆びついた肩甲骨はもう戻らないの?!」と不安の声も聞こえてくるようですが、いえいえ、そんなことはありません! 「日常生活の意識を変えれば、からだも必ず応えてくれますよ」と中村格子先生。引き続きお伺いしました。

「"錆びついた"肩甲骨だからといって、一生改善されないわけではありません。ふだんから継続して動かせば、確実に状態はよくなります。このときに、要注意なのが"短期決戦"に持ち込まないこと。一定期間だけ、重点的にエクササイズを行って、「いい肩甲骨になった、はい、おしまい」では、結局何も残りません。時間が経てば元通り錆びつき肩甲骨に戻ってしまいます。大人の女性ならなおさらのこと。

20代のころ、短期ダイエットで10キロ痩せたとすると、実は筋肉5キロ、脂肪5キロの割合で減っているのが普通です。でも、このころは成長ホルモンもバンバン出てますし、代謝もいいので、仮にリバウンドしたとしても5キロ筋肉、5キロ脂肪、と痩せたときと同じくらいの割合で戻ります。ところが、30代、40代で同じことをすると、体はエイジングをしていますから、20代のころとは違う反応をします。リバウンドしたら、2キロ筋肉、8キロ脂肪、の割合で体重が増えたりと、短期的で無理なダイエットを繰り返せば、どんどんバランスの悪いからだになってしまうのです。

からだはライフスタイルの成績表

人のからだは、マラソンとは違います。ゴールしたら終わり、というレースではないのです。大人のエクササイズに必要なのは、継続できるかを見極める目。30代になったら、このエクササイズなら長く続けられるというジャッジを行い、いかに日常に習慣づけられるかが課題です。40代は、それをきちんと継続していくこと。エクササイズとの向き合い方が将来のからだをつくっていくのです。

ずっと継続するなんて大変そう、と思うかもしれませんが、何も全身の筋肉をフルで動かす必要なんてないんです。最大筋力の20~30%を毎日使っていれば、筋肉は下がりません。

肩甲骨の動きをよくするには"寄せて、下げる"が大事だと前回お話しました。毎日できることとして、歩くときに手を後ろに振るのも効果的でしょう。後ろに動かせば、姿勢もよくなりますし、エクササイズの時間を取らなくても歩いているだけで、肩甲骨にいい影響を与えられるのです。

最初は意識しながらでも、毎日行うことで徐々に"歩いているときに手を後ろに振らないと気持ち悪い"と感じるからだに習慣づけてしまえば、しめたものです。

背中をどれだけ使えるかというのは、若さの象徴でもあります。上肢をきちんと動かせていれば、心肺も使うので負荷も高く、心臓に近い分、全身に血行が巡るので、ダイエットにも効果的でしょう。

からだは必ずライフスタイルを反映するもの。どんな動きでどんな生活をしているか、24時間のうち睡眠を除いた18時間のからだの使い方を全て反映します。だからこそ、継続したエクササイズが大切なのです」 大人の女性のからだを美しく保つためには、エクササイズへの意識改革もとても大切なことなんですね。肩甲骨の錆びを撃退し、いい状態をキープし続ける、まずは歩き方から見直したいですね。

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中村格子(整形外科医・医学博士/国立スポーツ科学センターメディカル センター研究員/横浜市立大学整形外科客員教授) 横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院、自治医科大学、日光市民病院勤務などを経て、09年より国立スポーツ科学センターメディカルセンター研究員。横浜市立大学整形外科客員教授。年齢や体調に応じた「正しい運動習慣、食習慣」を提案。『Dr.中村格子の全身コンディショニングでマイナス10歳ボディー』(NHK出版)、『整形外科医がずっと教えたかった医者いらずの体の整え方』(講談社)など著書多数。新刊『DVD付き もっとスゴイ! 大人のラジオ体操 決定版』(講談社)も好評発売中。

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