歯科医師・小林瑠美さん「美しい歯は健康な<からだ>から」<後編>

特集/ニューノーマル時代のマウスケア

語り/小林瑠美さん(「ルカデンタルクリニック」院長)
小林瑠美さん

「患者さんの口の中を見れば、食べているものやからだの調子もわかる」という歯科医師の小林瑠美さんの「美の流儀」。前編では、腸活にハマり、乳酸菌を積極的にとって、からだの中からきれいをキープしているというお話をうかがいました。後編では、具体的なデンタルケア、大好きな料理や旅について、語っていただきます。

外出するときもフロスはマスト!

朝起きたら、軽く歯磨きをします。舌の表面もきれいに。これは、夜、寝ている間に増えたバイキンを、食事の前にきれいにすることが目的です。私は、朝はプチ断食で、前夜の食事から14時間くらいは腸を休めるために固形物はとらず、甘酒やトマトジュースなどの液体しかとらないんですが、旅先などで朝食を食べる場合には、食べ終わったらすぐに、フロスや歯間ブラシなどで大きな食べかすを取り除く。日中、外出先で食事後歯磨きができないような場合にも、とにかく大きな汚れだけはすぐ取るようにしています。

磨き残しは、48時間で歯石になってしまうんです。そして歯石は、大きく育ちながら菌の住みかとなって骨を破壊していく。だからできるだけ、歯石の元になるものは、早く取り除いたほうがいい。フロスはマストです。私が使っているのはオーラルケア社の「フロアフロス」というもので、糸が太く、口の中の水分を吸収してスポンジ状に広がるので、糸が細いものに比べて歯の間を動かす回数が少なくてすみ、効率的に汚れを掻き出してくれます。

歯ブラシも、2種類を使い分けています。歯ブラシと歯磨き粉は、たいていの方は1セットを使っていらっしゃると思いますが、実はそれぞれ「歯を磨く」ためのものと、「歯茎(はぐき)のケア」のためのものがあるんです。たとえば、歯茎のケアに適した極細毛の歯ブラシは、歯周ポケットや歯と歯の間に入り込みやすいけれど、歯の表面に付いた茶渋などの汚れをキャッチするのは苦手。逆に、ホワイトニングケアの歯ブラシは、コシがあって、面をとらえるのが得意だけど、歯周病ケアには向いていない。歯磨き粉も、歯周病ケアとステインオフを目的としたものは分けていて、研磨剤が入ったものは炎症のある歯茎には刺激が強すぎるので使用を控えたほうがいい場合もあったり…と、適材適所があります。

唾液の働きも大切なんです。お口の中は食事後は酸性に傾いてしまいますが、唾液がゆっくりと30分くらいかけて口内を中和して、口の中の汚れもきれいに洗い流してくれる働きがあります。ところが、食事後すぐに歯をしっかり磨いてしまうと、酸性の環境下で研磨剤によって歯を傷つけることになってしまいますし、唾液の力を弱めることになってしまいます。

だから夜も、食べ終わったらすぐにフロスや歯間ブラシで大きな食べカスを取り除いて置いて、唾液が中性に戻ってから、寝る前にゆっくり歯磨きするのが、マウスケアとしてはいちばんいいやり方ですね。

家族総出で味噌づくり! 料理を楽しんでいます

私は、料理をするのが大好きなんです。子どもがまだ小さいこともあって、よく一緒にいろんなものをつくります。腸活に欠かせない味噌も毎年手づくりしていて、今年は15kg仕込みました。寸胴や土鍋など、大きな鍋を総動員して大豆をゆっくり茹で、子どもたちがそれをワインの瓶の底で潰してと、家族総出でつくります。他にも鏡開きしたお餅をおかきにしたり、サンドイッチで切り落とした耳を揚げてお砂糖まぶして食べたり。

旅に行っても、地元のスーパーでご当地食材を買い込んでお土産にします。毎回、段ボール4箱くらい(笑)。そして帰宅後、旅先の食材を使って味を再現してみたり…。ふるさと納税の返礼品の毛蟹でお鍋をしたときには、一緒に大根をたいて味噌バター味にして、シメはラーメンに追いバター、さらにシメのシメで雑炊まで。家族と食を楽しむことがリフレッシュにもなっています。

夕飯後に、お酒を楽しみつつ、子どもと一緒に絵を描いたりも。クリニックにさりげなく飾ってある「がまくんとかえるくん」の絵は、私が描きました。

夜、子どもを寝かしつけた後は、そのまま布団の中でのんびり過ごす時間を大切にしています。季節を問わず、湯たんぽでおなかを中心にからだを温めることも大切にしています。

あとはお昼寝。勤務医時代から、10分でも15分でも、必ず横になるようにしています。短い時間ですが、頭がとてもクリアになります。

コロナ禍で、思いどおりにいかないことがたくさんある中で、自分のルーティンを守ることは、気持ちの安定にもつながります。マウスケアもそうで、マスク着用など環境の変化があっても、コロナ前と変わらず、しっかりと続けていくことが大切。考えてみれば、悪玉菌を自分の力で直接コントロールできるのは、口の中だけ。そしてそこから全身へと、美と健康が広がっていく。歯科医としてこれからも、そのお手伝いができればと思っています。

取材・文/剣持亜弥
撮影/高木亜麗
  • 小林瑠美(こばやし るみ) 2002年日本大学松戸歯学部卒業。鶴見大学歯学部口腔学顔面インプラント科を経て、2014年、東京・南青山に「ルカデンタルクリニック」を開業。株式会社RUGO代表取締役。二児の母でもある。
    TVや雑誌やラジオ、トークショーへの出演も多数。