からだの不調の原因は『錆びた』肩甲骨?!

特集/背中美人は肩甲骨から!

中村格子(整形外科医)
取材・文/大庭典子(ライター)

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これ以上開かない!? きしんだドアのような肩甲骨

デスクワークで一日中パソコンと向き合っていたり、まめにスマートフォンをチェックしたりと、うつむく体勢が多い現代人のライフスタイルは、肩甲骨も歪みがち。「最近、猫背ぎみかも」「気づいたらスマホ片手に何時間も過ごしている...」なんて人、多いのでは?

「正しい位置に肩甲骨がないと姿勢も悪くなりますし、たるみ、肩こりなど、体は不調を起こしますし、美しさも半減しますよ」と中村格子さん。美しさや若さにも大いに影響のある肩甲骨。自分の肩甲骨が今どんな状態なのか、肩甲骨の"錆びつき度"のチェック方法や歪んだ肩甲骨の影響などを、整形外科医で国立スポーツ科学センターメディカルセンター研究員の中村格子先生にお伺いしました。

「肩甲骨は、鎖骨とつながっているだけの、いわば浮いているような状態の骨。ですから外側に開いたり、内側に寄せたり、上下に動かせたり、回せたり、と自在な動きができるのです。ところが、日々の生活で前かがみの姿勢ばかりを取っていると、肩甲骨は、開いたまま戻ってこられなくなったり、猫背によって、肩甲骨が上がりっぱなしで、下げる力が極端に弱くなっている人も。姿勢の悪い人は、肩甲骨を寄せる力、下げる力が弱い場合がとても多いのです。

肩甲骨は、体幹の上部の姿勢を決める骨でもあるし、肩の起点となる骨でもあるので、それが歪み始めると、肩甲骨についている僧帽筋(そうぼうきん)や肩甲挙筋(けんこうきょきん)などの周辺筋肉の動きも悪くなり、肩こりやたるみなどを引き起こす原因となってしまうのです。

肩甲骨は「寄せて」「下げて」

Image 180度開くドアを想像してみてください。毎日毎日180度開いたり、閉じたりを習慣的に行っていれば、ドアはきしんだり、錆び付いたりしません。ところが、あまり使わず少ししか開閉しない日々が続くと、いつのまにかドアは錆びてきしみ、180度全開にできなくなります。肩甲骨も同じ。錆びないためには、毎日、継続して動かすことが大切。前かがみで可動域の狭い使い方ばかりをしていると、いつの間にか、すべりの悪い"錆びた"状態の肩甲骨になってしまうのです」

"錆びた"肩甲骨...なんだかとても恐ろしい響きです。では、あなたの肩甲骨が錆びていないか、チェックしてみましょう。

Check 1 猫背と言われることが多い
Check 2 ブラジャーのホックを前側でつけて後ろに回すことが多い
Check 3 いつも背中の真ん中あたりにコリを感じる
Check 4 背中の対角線上で自分の左右の手をつなげない
Check 5 直角に曲げた腕の両肘を付けて、水平以上の高さにあげられない
Check 6 直立の状態でからだの後ろで両手を握り、握った手を腰骨の高さまで上げられない

ひとつでも当てはまったら、"錆びつき"肩甲骨の疑いアリ!です。まずは、日常的にできることから改善していきましょう。

「パソコンのディスプレイは40センチ程度の距離を置き、画面の上縁は目の高さ以下にすること。目線よりも上に画面があると、姿勢も悪くなってしまいます。スマホを触るときも、脇を閉めるように意識すると、肩甲骨の動きにもいい影響がありそうです。そして、肩甲骨を"寄せる""下げる"という動きを日常的に意識することが大切」。

「寄せて上げる」ではなく、肩甲骨は「寄せて、下げる」のですね(笑)。今日から意識していきます。

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中村格子(整形外科医・医学博士/国立スポーツ科学センターメディカル センター研究員/横浜市立大学整形外科客員教授) 横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院、自治医科大学、日光市民病院勤務などを経て、09年より国立スポーツ科学センターメディカルセンター研究員。横浜市立大学整形外科客員教授。年齢や体調に応じた「正しい運動習慣、食習慣」を提案。『Dr.中村格子の全身コンディショニングでマイナス10歳ボディー』(NHK出版)、『整形外科医がずっと教えたかった医者いらずの体の整え方』(講談社)など著書多数。新刊『DVD付き もっとスゴイ! 大人のラジオ体操 決定版』(講談社)も好評発売中。

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