深い呼吸、美しい姿勢は肩甲骨から!

特集/背中美人は肩甲骨から!

山口光國(理学療法士)
取材・文/大庭典子(ライター)

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肩甲骨、肋骨を動かして、深い呼吸を

美しい動作をつくり、骨盤の動きまでもよくしてくれるなんて、ありがたい肩甲骨...と腕まわしエクササイズに励む毎日ですが、実は、肩甲骨の動きは呼吸とも大いに関わりがあるのだとか。引き続き、山口光國先生にお話をお伺いしました。

「肩甲骨は、筋肉を介して肋骨の上に浮かんでいる状態。なので、肩甲骨と肋骨の関係は相乗効果で、どちらかの動きがよくなれば、連動してもう片方もよくなります。肩甲骨の動きをよくするため、深い胸式呼吸を練習してみましょう。呼吸というと、リラックス効果の高い腹式呼吸ばかり意識しがちですが、ピラティスで行うような深い胸式呼吸で肋骨を動かせれば、おのずと肩甲骨の働きもよくなります。

現代人に多い前に縮こまった姿勢の浅い胸式呼吸では、肋骨の動きをよくすることはできません。おなかと背中をくっつけるようにして、胸郭を横に広げたり、上に持ち上げたりするイメージで息を吸ってみてください。

なかなか難しいという方は下着の力を利用するのもいいかもしれません。深い呼吸を促し、肋骨に働きかけるようにつくられた『シャキッとブラ(シャキッと構造)』は、自然と背筋も伸びて正しい姿勢がとれるようになります。

エイジングが早く進みがちな肩甲骨は、ふだんからマメに動かすことが大事。前回のエクササイズに加えてもうひとつ簡単なポーズをご紹介します。イラストのように手を合わせて両サイドから力を入れてください。力を入れたままの態勢で5~10秒間とめてください。ポイントは、力を入れたまま数秒間止めた状態を維持すること。

動かしてすぐ戻して、という運動では、力を入れたときは筋肉が固くなるけれども、戻したとたんに緩んで、元の位置に戻ってしまいます。ところが、このエクササイズのように力を入れた状態で数秒止めると、腕を放したあとも筋はすぐに緩まずに、その固さを維持します。緊張させた状態を保つことで筋の固さをからだが覚えるんです。

せっかくのエクササイズが胸の垂れる原因に?!

よくフィットネスクラブなどで見かけるのですが、"肩甲骨の可動域を広げましょう"といって、上から下にバーを引き付けたり、上から下に向かって、筋に負荷をかける運動をしている人がいます。女性は特に筋肉の動く方向に注意してください。上から下に筋を動かせば、筋は下がる方向に働くということで広背筋はつきますが、筋の作用方向につられ胸の位置はどんどん下がってしまうことになりかねません。反対に下から上に引き上げるような筋肉の動きは、バストアップにもつながります。

スキンケアで皮膚の状態をよくすれば、からだも変わる!

皮膚の状態がいい人は筋肉の状態もいい、これはアスリートや患者さんを見ていて感じることです。運動をしていても、スキンケアをしている人としていない人では、スキンケアをしていない人のほうが、筋肉がたるんだり、落ちやすい傾向に。皮膚は"第2の筋"とも呼ばれ、皮膚がたるむと、内側の筋肉もそれに引っ張られて落ちてしまうと言われています。

筋肉がしっかり動いている人の皮膚は艶があってとてもいい状態です。お風呂あがりなどボディ用の保湿クリームを塗って潤いを与えてください。 背中に塗ろうとする体勢は、おのずと肩甲骨も動きますしね(笑)。

背中など、自分ではケアしづらいところはプロの手に頼るのも手。可能ならば、月に一度くらいエステに行くこともおすすめです。"心の緊張もからだの緊張も筋の鎧となって現れる"とは精神分析家のウィルヘルム・ライヒの言葉ですが、エステで心も皮膚も筋肉もリラックス状態にするのは、美しいからだづくりにとても有効なのです」

スキンケアがスタイルアップに重要だとは目からウロコが落ちるよう。美しい後ろ姿、きれいなしぐさ、動きのいい骨盤、深い呼吸を手に入れるためにも...肩甲骨美人を目指して、ますますエクササイズに気合いが入ります。

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山口光國
(セラ・ラボ代表/理学療法士)
日本サッカーリーグの日立製作所(現 柏レイソルズ)にFWとして入団。故障から21歳で引退し、現職へ転身。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院を経て、'05年より横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)にフィジカルコーチとして就任。現在はさまざまなジャンルのアスリートをサポートするほか、全国各地で講演、セミナー活動も行う。

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