体温で変化してバストに「マッチ」する。自然体で過ごせるブラジャー「マッチミーブラ」

語り/北村典子(チーフデザイナー)、浅野華帆(デザイナー)、松本直之(MD)

ウイングのコンセプト「生活するからだと会話する」を形にした、画期的なブラが新登場! “ブラがわたしに合わせてくれる” 「マッチミーブラ」は、カップの間の前中心にしのばせた樹脂シートが、つけた人のからだの形に合わせてバストにぴったり沿うことで、より快適なフィット感が得られるというもの。その仕組みを、開発担当者にインタビューします。

体温で変化してバストに「マッチ」する。自然体で過ごせるブラジャー「マッチミーブラ」

体温を感知して変化する樹脂シートに注目!

――今回、ウイング初採用の樹脂シートを使っているそうですね。

北村 はい、それがこちらのメッシュ状の樹脂シートです。触っていただくと、体温に反応してこんなふうに変形するんですよ。このまま置いておくと自然に元の状態に戻ります。

肌に触れると体温に反応して変形するのが特徴。
肌に触れると体温に反応して変形するのが特徴。

――触るとじんわり伸びますね!

松本 そうなんです。これまでワコールにはこの樹脂素材を使用したブラジャーはありましたが、薄いメッシュ状に加工した樹脂シートは、ウイングがオリジナルで開発したんですよ。

浅野 このメッシュの樹脂シートを別の生地ではさむようにして、カップを支える土台となる前中心に使用しています。これはワコールの人間科学研究所で、ブラジャーの安定感と着用感の両立には「前中心がポイントになる」という考え方から別途開発を進めていたひとつの機能でした。

メッシュ素材を別の生地ではさんで前中心に使用。
メッシュ素材を別の生地ではさんで前中心に使用。

――この素材を前中心に使うことで、具体的にはどのような機能を発揮するのでしょう?

北村 着用すると樹脂シートが体温に反応して変形し、その人の体型に合わせてちょうどいい位置でとどまってくれるんです。本来はバージスライン(バストの底辺)にブラのワイヤーがぴったりと沿うことが理想なのですが、人によってバストの左右差や体型差があるため着用感がしっくりこない場合も。でも、「マッチミーブラ」は前中心が柔軟に変形して、左右どちらのカップにもフィットするというわけです。開発中に、このシートと伸びないシートそれぞれのブラジャーをつけて比較したところ、この伸びるシートを使ったものはからだに合わせて変形し、ワイヤーがバージスラインに沿ってフィットするので、2種類のブラジャーのカップの位置は大きく異なる結果になりました。


松本 前中心が伸びないブラジャーは着用感がしっかりするので、安定感や造形性が高くなりますが、この商品はそれとは逆の発想です。前中心に使われている樹脂シートが、横だけでなく四方八方に伸びるので、ソフトな着用感でありながらも、からだの形にフィットし、バストを適切な位置にキープします。シートが伸びすぎてもよくないので、肌側にはテープを使ってほどよい位置で止まるよう調整しています。前中心が固定されているブラジャーと比べると、実は動きやすく、息がしやすいというお声もいただきました。

浅野 また、カップにウレタン素材を使っていることで、つけたときにカップ部分が沈みこむ感じも、特徴的です。従来のブラジャーのカップに多い不織布とは違い、バストボリュームに応じてウレタン素材の接地面が反発するので、より一体感を感じられます。

バックの素材についても、ほどよいパワー感でつくっているので、しめつけすぎず、ゆるすぎず、ここちよく着用していただけると思います。

――開発で特に苦労されたことは?

北村 やはり前中心ですね。伸縮性のあるメッシュ生地にどんな生地を貼り合わせるかが難しかったです。繊細な素材なだけに、生地を合わせるときにかける熱の温度や秒数、地の目の向きもいろいろと試しました。

前中心の伸縮性のあるメッシュ生地にどんな生地を貼り合わせるかが難しかった

浅野 初めて使う素材ですので、洗濯耐性があるかどうかも入念にチェックしています。気温の高いとき、あるいは低いときにどんな状態になるかも調べました。

松本 そのような試験に加え、技術や縫製面でも現場で試行錯誤しながら開発に至った商品です。ウイングの核となる商品ですので、たくさんの方にご着用いただければうれしいです。

印象の異なる2パターンのデザインで展開

――2パターン各4色展開されているデザインについてお聞かせください。

北村 2パターンご用意したのは、より幅広い方に使っていただければという思いからです。需要の多いシンプルなテイストは意識しつつも、デザイン性を入れたり、素材感のあるパワーネットとチュールを組み合わせたりすることでおしゃれ感も演出しています。

浅野 レースタイプ(トップ画像)は、クリーム(CR)、グレー(GY)、オレンジ(OR)、ブルー(BU)の4色。編レースにボタニカルなプリントを施した彩りの華やかなものと、色使いはシンプルながらキャッチーなくすみ系カラーを採用したものがあります。ワイヤー部分のパイピングの色選びにも軽やかな印象になるようこだわりました。

北村 もうひとつのパターンがこちらですが、がらりと雰囲気を変えています。

手前から時計回りにグレイッシュブルー(GB)、ベージュ(BE)、紺(KO)、パープル(PU)。
手前から時計回りにグレイッシュブルー(GB)、ベージュ(BE)、紺(KO)、パープル(PU)。

松本 シンプルだからこそこだわって、ストラップも少し華奢な8mm幅のタイプを選びました。

ストラップも少し華奢な8mm幅のタイプを選びました。

浅野 ストラップの金具の色も変えているんですよ。ゴールドの金具を中心に、グレイッシュブルー(GB)のみシルバーを使っています。

生地のカラーに合わせて金具の色もアレンジ。
生地のカラーに合わせて金具の色もアレンジ。

北村 さらに、バックも少し違うんですよ。どちらも肌なじみのいい素材を選んでいますが、レースタイプはメッシュ素材で軽いつけごこちで、シンプルなタイプは上辺が折り返しのないヘム始末により背中の段差を軽減しますので、お好みで選んでいただければと思います。

バック素材もデザインに合わせて2パターン用意。
バック素材もデザインに合わせて2パターン用意。

ブラが、私に合わせてくれる!

――どんな方におすすめしたい商品でしょうか?

北村 ワイヤーブラに「痛い」というイメージがある方がいらっしゃれば、ぜひ試していただきたいです。人によってバストのサイズや左右差も違いますので、ぴったり合うものを探すのは難しいことだと思いますが、ネーミングの“マッチミー”のとおり、前中心の樹脂シートが体温で変形し、ブラがその人のバストにとってベストなカップの位置に合わせてくれて、なおかつその状態をキープします。

松本 リサーチ段階でも、理想のバストは「自分が自然体でいられるもの」と答えられる方が多かったので、圧迫感が少なく、動きが楽で長時間つけても快適な着用感を目指しました。実際にモニターさんからも「まるでつけていないみたい」というお声をいただきました。からだにとって快適さを軽減した商品だと自負しています。

浅野 おそろいのショーツもご用意しています。海外メーカーのレースを使い、バックのデザインにもこだわりました。

海外メーカーのレースを使い、バックのデザインにもこだわったおそろいのショーツ。

北村 「久しぶりに合うブラジャーが見つかった!」という方もいらっしゃるかもしれません。新しい出合いを喜んでいただければ何よりです。

デザイン性の高いショーツとのセットアップがおすすめ。
デザイン性の高いショーツとのセットアップがおすすめ。
  • 北村典子
  • 北村典子(きたむら・のりこ) 第2ブランドグループ ウイングブランド商品企画部 商品企画一課
    ワコール入社後、ワコールブランドのさまざまなブランドでチーフデザイナーの経験を経て、現在はウイングキャンペーンのチーフデザイナーに。
  • 浅野華帆
  • 浅野華帆(あさの・かほ) 第2ブランドグループ ウイングブランド商品企画部 商品企画一課
    ウイングにてキャンペーンブラジャー・ボトムのパターンを担当後、2016年よりウイングキャンペーンのデザインを担当。
  • 松本直之
  • 松本直之(まつもと・なおゆき) 第2ブランドグループ ワコールブランド商品営業部 商品営業一課
    ワコール入社後、販売課で9年間の量販店セールスを担当。現場の経験を活かし、2016年4月より「レシアージュ」のMDを務め、2019年4月より現職。
取材・文/シキタリエ
撮影/合田慎二