• Wellness
  • 2022.10.26

常備調味料でできる温活&免疫力アップのスパイス美容

常備調味料でできる温活&免疫力アップのスパイス美容

暦の上では霜降を過ぎ、冬はもうすぐそこ。朝晩の肌寒さに加え、外気も乾燥しやすくなるこれからの季節、多くの女性が「冷え」に悩み、憂うつな気分を抱えがちです。そんな本格的な冬に備え、薬膳的な視点から手軽にできる毎日の温活&免疫力アップ習慣をご提案。それも、スーパーのスパイス棚で必ず見つかる常備スパイスを使うだけ。即時エネルギーを生み出し、気の巡りやリラックス効果を高めるなど、冬に役立つ身近な万能調味料の数々で目指す、冷えに負けないからだづくり。

国際中医薬膳師・漢方薬剤師で「手軽なズボラ薬膳」の提唱者、田村英子さんに伺いました。

調理の手間なし! 手軽なあたためスパイス

調理の手間なし! 手軽なあたためスパイス

「近ごろ人気の手作りカレーの香辛料としてもおなじみで、実は香りを楽しむスパイスとして飲み物にも取り入れやすいのがシナモン、クローブ、カルダモンの3種類」と田村さん。インドではコーヒーの粉にカルダモンの粉末を少量混ぜて淹れたり、メキシコではシナモンを煮出したお湯でコーヒーを淹れたりするのも一般的ですが、香りの強いスパイスをよりまろやかに味わう秘訣は…。

「水から煮出す方法です。3種類を全部入れて沸かしたお湯でチャイを作ったり、さらに煮詰めて炭酸水で割れば、最近はやりのクラフトコーラも作れます。寒い冬には、1日の始まりの朝にあたたかい飲み物としてからだに入れると巡りがよくなり活動的に。また末端まで冷えて眠れない夜なら、赤ワインに入れて煮出すことでからだが芯からあたたまる寝酒にも」

1人分(湯量150~180ml程度)の適量は、シナモンスティック1/2~1/3本、カルダモンは外殻を砕いて3粒、クローブ3粒を目安に、好みで分量調整を。クローブには、子宮をあたためる効果もあると言われています。

日頃から料理に使っているあのスパイスでも温活を

日頃から料理に使っているあのスパイスでも温活を

「特別なスパイスとしては意識していないくても、調味料としてよく使うブラックペッパーや唐辛子、ショウガなども、薬膳ではからだの上部にある肺や腎などの呼吸器系をあたためる生薬の仲間です」(田村さん)。なかでも唐辛子は冷えによるゾクゾク感、風邪の予防に。ショウガは鼻水対策に良いとされ、血行促進効果にすぐれたブラックペッパーは暑がり体質の人は量を控えめにするなど、注意点もあるほど。

「お料理で使うことが多いスパイスをあたため食材と合わせることで、温活パワーがよりアップします。相性がいいのは肉類(特に羊や鹿肉)、魚全般、海老やクルミ。また野菜なら、ブロッコリーやカリフラワー、キャベツなどを付け合わせに」。食事作りに手をかけられる休日などに試してみて。

冬に大活躍! リラックス系スパイスで“陽“エネルギーをチャージ

冬に大活躍! リラックス系スパイスで“陽“エネルギーをチャージ

「これから冬を迎えると、単なる冷えだけでなく、冷えから起きる免疫力の低下や、日照時間の減少などによる気分の落ち込みなどの問題も増えてきます」(田村さん)。そんな症状に気づいたときに、“ちょい足し“するだけで不安定な気持ちを和らげ、リラックス効果を与えてくれるのが、これらのスパイス。「どれもあたため効果だけでなく、滞りがちな気を巡らせて陽のエネルギーを引き出してくれます。心おだやかに過ごしたい夜に摂るのがおすすめ」。特に女性特有の生理前のPMS(月経前症候群)などにはサフランが、精神的なストレスや胃痛にはフェンネルが良いそう。

一見、使い方が難しそうなこれらのスパイス群も、“入れるだけ“で効能が引き出せて案外手軽。「ターメリックならお米と炊いてターメリックライスにしたり、フェンネルなら白身魚や鶏肉を焼くときの香りづけにしたり。八角は麻婆豆腐や角煮などと煮込むといいですね。またサフランなら紅茶に少量を入れる、バニラビーンズはチャイに足して」などなど…陽のエネルギーを引き出す裏技として備忘録に。

意外と知らない!? 身近なスパイスの活用法

意外と知らない!? 身近なスパイスの活用法

「薬味として使われることが多いシソやハンバーグなど肉の臭い消しに使われたりするナツメグにも、薬膳では意外な効能があるんです」と田村さん。

「シソには殺菌効果があって、香りによるリラックス効果も期待できます。風邪のときにショウガの千切りとシソ1枚にお湯を注いで飲むと、寒気をとることができます」。ここで気になるのが、赤ジソ&青ジソ(大葉)の使い分け。「実は、ポリフェノールの違いだけで、薬膳的には色による大きな効能の違いはありません。ただ、生の葉の方が発汗作用があるため、寒気を感じる“ぞくぞく風邪”には効果があります」

一方、甘い香りのナツメグは「加熱することで香りが引き立つので、下味をつけたり料理の隠し味的な使い方をするのが一般的。薬効としてはおなかの冷えを解消したり、腸内環境をととのえる下痢止めとしても知られています」。こちらは刺激が強いこともあり、大量に摂ると副作用の心配が。スパイスボトルなら、1~2振り程度で十分。過ぎたるは及ばざるがごとしと心得て。

あらゆるものには陰陽があると考える中医学では、スパイスは“熱エネルギーを巡らせ、からだをあたためる“陽の性質。あたためる陽の力が不足する冬に陽のエネルギーを巡らせることで、血行や代謝が上がり、体温の上昇や免疫力のアップも期待できると言われています。

心身が健やかなら、冬の邪気でもある風邪をひきにくくなったり、美容面でもくすみやむくみが解消されて潤いが巡りやすくなるなど、内面から生まれる美の連鎖が表情にも! これだけの好循環を生み出すきっかけになる常備スパイスの知られざるパワー、ぜひ余さず手に入れて、健やかな心とからだをキープして。

  • 田村英子(たむら・えいこ)
  • 田村英子(たむらえいこ) 国際中医薬膳師・漢方薬剤師
    薬膳教室「カラダを変える12か月のズボラ薬膳」主催。東京薬科大学薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務するも、東洋医学の可能性に惹かれ転身。漢方をはじめ、ホメオパシーや気功を用いた治療に携わること16年、オンラインや対面でのカウンセリングは延べ1万人を超える。現在は、ニールズヤード ホリスティックスクール講師として、定期的に女性向け講習会も行なっている。2023年1月21日(土)には、「for woman’s wellness 冬に溜まった老廃物をデトックス」を開催予定。
    https://zuborayakuzen.livedoor.blog/archives/16184800.html
取材・文/田中あか音
撮影/村松成美
デザイン/WATARIGRAPHIC