2023.10.25

【特集】おとなの白髪問題、何が正解? #04

美容エディター・毛髪診断士 伊熊奈美さんに聞く、「白髪ケアの4ステップ」&「ヘナ最新事情」

美容エディター・毛髪診断士 伊熊奈美さん

「肌にいいことは髪にもいい。だからスキンケアを頭皮&ヘアケアに応用してあげましょう」。そう話すのは、美容エディターで毛髪診断士の伊熊奈美さん。そこで「洗浄」「保湿」「紫外線ケア」「血流ケア」と4つの項目を立てて、おとな世代のケア方法を指南してもらいました。さらに話題を呼んでいるヘナ染めについても、じっくりお話を伺います。

おとなのためのヘアケアSTEP.1「洗浄」

毎日、優しく、正しく洗う

基本的にシャンプーは髪ではなく、頭皮を洗うことを意識してください。なぜなら頭皮は生きていて、新陳代謝をしているけれど、髪の毛自体はすでに代謝をやめていて、内側からよくなることはないからです。濡らすことでキューティクルが開き、染料や栄養が流れ出てしまうことも考えると、髪をゴシゴシと洗う必要はありません。ただ頭皮の汚れはていねいに落としたい。そこでおとな世代の最適解となるのが、洗浄力のマイルドなアミノ酸系シャンプーです。

さらに大切なのが、正しいシャンプー方法。まず最初にブラッシングして、からまりをほどき、ほこりを取って、汚れを浮かしておきましょう。次に予洗いです。シャワーは必ず手持ちにして、前・横・後ろからと、さまざまな角度から髪をかき分けて頭皮に当てるように。これだけで汚れはかなり落ちるはずです。

そしてシャンプー剤を手に出したら、少量の水でのばし、軽く泡立て、手全体になじませてから、顔にクリームを塗るときのように、数か所に分けて置いていきましょう。襟足、左右の耳の周囲、生え際、そして正中線。全体になじませたら、左右の生え際から手を入れ、下から上に指の腹でジグザグと頭皮を中心に寄せるようになぞり洗いをします。頭頂部で指を組んだら、あとはすーっと引き抜くだけ。これを洗い残す場所のないよう、繰り返します。指を引き抜くときに泡が全体にゆき渡ることで、髪の汚れは十分に落ちます。あくまで洗うのは頭皮なのです。

下から上に頭皮を寄せるようになぞり洗いをして(写真上)、頭頂部で手を組み(写真下)、引き抜くだけ。

おとなのためのヘアケアSTEP.2「保湿」

頭皮のうるおいアップを意識して

頭皮は皮脂量が多く、髪で覆われているため、肌よりは乾燥しにくい部位ですが、保湿の役割も果たす女性ホルモン、エストロゲンが減っていくおとな世代は、それでも乾燥するもの。加えて重力を受けて内側の真皮は薄く、弾力がなくなり、ますます乾燥が進んでいきます。そこでおすすめなのが、頭皮への「保湿」です。

ここ数年で充実し始めた、頭皮用の化粧水や美容液をはじめ、頭皮専用ではなくても、スプレーやミストタイプに見られるとろみのない化粧水でもOK。タオルドライしたあとや、朝のブラッシングの前に「保湿」を意識すると、髪の立ち上がりがよくなるなど、メリットが感じられるはずですよ。また、シリコンが入っているトリートメントは髪にだけ付けるのが鉄則ですが、最近はノンシリコンで頭皮を保湿するタイプのものも出ています。おとな世代は、スキンケアと同じく頭皮のうるおいも大切なのです。

おとなのためのヘアケアSTEP.3「紫外線ケア」

物理的にシャットアウトを!

最近の研究では、紫外線A波(UVA)は、髪の毛を貫通して、頭皮にまで届くことがわかりました。紫外線カットのスプレーなどもありますが、髪の毛を触れば取れてしまうことも。帽子や日傘などで、物理的に遮ることが大切です。

おとなのためのヘアケアSTEP.4「血流ケア」

おとなのブラッシングはスキャルプに

健康的な髪を育てるために必要なのが、血流ケア。そのためにぜひ習慣にしてほしいのが、ブラッシングです。それも上から下へと髪の毛をとかすのではなく、下から上へと頭頂部に向かって血液を流すようにするのが有効。おとなのブラッシングはスキャルプにアプローチすべきなのです。

頭の筋肉は側頭、後頭、前頭のみで、頭頂部にはありません。ということは、頭頂の“カッパのお皿”部分には太い血管が流れておらず、あるのは毛細血管だけ。なのでそこに向かって血液を流すことを意識しましょう。下から上に、頭部全体にバッテンを描くような感じでブラッシングを。朝と夜の習慣にしてみてください。

おとなのためのヘアケア<番外編>
「ヘナで染めるという選択肢」

強くて太い、健康的な髪を取り戻す

このところ世代を問わず、話題を呼んでいるのがヘナ染めです。私自身も現在はヘナを取り入れて白髪染めをしています。ただヘナには、メリットとデメリットがあるので、ヘナに興味がある人はぜひ知っておいてください。

(伊熊さん提供)

まずいちばんのメリットは、アレルギーが出にくいということ。ヘナ単体であれば99%アレルギー反応が出ないと言われています。ただ、ダークトーンにするためインディゴ等をミックスする場合は、アレルギーの発生率がやや上がります。またキューティクルを開いて化学染料を入れるのではなく、上から植物染料をコーティングするというやり方なので、髪が太くなり、ハリとコシが出ます。染めるたびにツヤが増すなんて、うれしい限りですよね。

一方のデメリットは、一度ヘナを始めると色が抜けづらくなり、カラーチェンジが難しいという点。最初は色が入りにくいものの、一度入ると抜けづらいという特徴があるのです。脱色しても予期せぬ色になるので、カラートーンを明るくすることは特に難しいですね。また品質により染まり方に差があることも。インドやスリランカ、モロッコなど、原産地の製品が多いのですが、国産を選ぶこともできます。

  • 伊熊奈美(いくま・なみ)
  • 伊熊奈美(いくま・なみ) 美容エディター・ジャーナリスト。公益社団法人 日本毛髪科学協会 毛髪診断士 認定指導講師、社団法人 国際毛髪皮膚科学研究所 毛髪技能士。 20年以上にわたり、美容分野の記事を編集、執筆、監修。特にヘアケアに精通し、毛髪科学に基づいた知見を生活に取り入れるメソッドに定評がある。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号! いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)、『脱白髪染めのはじめかた でもいきなりグレイヘアは無理!』(グラフィック社)。 Instagram:「namiikuma_hairista
構成・文/本庄真穂
撮影/高木亜麗
ヘア&メイク/コンイルミ
デザイン/日比野まり子

【特集】おとなの白髪問題、何が正解?(全4回)