サスティナブルなランジェリー
文/武田尚子(ジャーナリスト)
ランジェリーのトレンドリーダーとして注目されているフランスのブランド「LIVY(リヴィー)」も、「ロイカEF」が使用されているイルーナのレースを起用している。モダンなグラフィック感覚のストレッチレースを使ったトライアングルブラレットが新鮮。
ファッション、ライフスタイルトータルで、昨今大きな課題となっているのが「サスティナビリティ(持続可能性)」です。出遅れた感のある国内のファッション業界でも、今年になって急に、この言葉が盛んに聞かれるようになりました。
グローバルなランジェリー業界では、すでに2000年代からエコフレンドリー、オーガニック、サスティナブルといった問題意識があらわれ、近年は当たり前のものとしてすっかり定着しています。
素材からの発信が広がる
ランジェリーの「サスティナビリティ」に関する発信元となっているのが、製品展に併設されるかたちで、年に2度パリで開催されるランジェリーの素材展・アンテルフィリエールです。持続可能、環境にやさしいという視点はますます重要になり、今年7月の同展では、あらゆる出展素材メーカーが実際にエコロジカルな製品を取り入れるようになったと発表されました。
レースから副資材まで多種多様な素材の中でも、伸縮性やフィット性に欠かせないスパンデックス(ポリウレタン弾性繊維)は、ファンデーションの基本ともなるもの。日本企業である旭化成の「ロイカ」は"プレミアムストレッチファイバー"として、近年、ヨーロッパ市場で人気を高めていますが、その中でも特に環境に配慮(リサイクルや土に還る分解性)した「エコスマート」グループ(日本では「ロイカEF」)が注目を集めています。生地メーカーやレースメーカー、またランジェリーブランドとの提携関係も増えて、一般消費者にもヴィジュアルに伝わるように進化しています。
多色展開が特徴の「COSABELLA(コサベラ)」のストレッチレースにも、ロイカV550が使用。
イタリアの有力ストッキングブランド「SARAH BORGHI(サラボルギ)」の商品にもロイカが使われている。
価値ある消費へとつながるもの
一方、製品アパレルのほうでも、この「サスティナビリティ」はもう避けては通れない課題といえるでしょう。
オーガニックコットンは2000年を超したころから徐々に増えたように思いますが、リサイクル素材を使用したものが登場するのはもう少し後になります。印象に残っているのは、2015年モードシティ展において、漁網のリサイクル素材を使った水着を発表した「AMA(アマ)」というブランド。当時は海洋汚染問題も今日ほど一般に知られていませんでした。
サスティナブルでエシカルな「Opaak(オパーク)」。当初からリサイクルレースなどを積極的に取り入れている。
また、2017年にパリに初出展してから連続出展を果たしている「Opaak(オパーク)」は、サスティナブルというミッションを見事にモードの魅力で伝え続けているランジェリーブランドとして注目されます。考えてみると先の水着ブランドも、共に環境問題の先進国であるドイツからの出展。しかも大手ナショナルブランドではなく、独立系デザイナーブランドの付加価値素材という意味でも共通しています。さらに「Opaak(オパーク)」の最新コレクションは、自然の中に身を置きセルフポートレイトで撮影を行う写真家「サスティナブルフォトグラファー」の写真によって、そのブランド哲学が表現されています。
サスティナブルフォトグラファー・KIMBRA AUDREY(キンブラ・オードリー)のセルフポートレイトによる「Opaak(オパーク)」最新コレクション。
このように、リサイクル素材など環境にやさしい素材を使用しているというだけではなく、「サスティナビリティ」も次の段階にきているように思います。物づくりの源泉に思いをはせ、無駄のない価値ある消費を促すのも、アパレルメーカーの役割となっています。
ヨーロッパのROICA(ロイカ)と強力なタグを組んでいるイタリアのレースメーカー、ILUNA(イルーナ)グループのレース。