ラクに着用できるアイテムとして定着してきたブラトップですが、ラクさを求める一方で、既存のブラトップに対する悩みの声も…。そこで、やさしいつけごこちを追求した「ハグするブラ」の快適さはそのままに、機能的な構造で不満に対応する「ハグするブラトップ」が誕生しました。チーム一丸となって生み出した、これまでにないブラトップを目指したものづくりの魅力に迫ります。

伸縮性のある高ストレッチ素材で
きれいなバストシルエットと追随性を叶えるブラトップ
――新商品「ハグするブラトップ」開発のきっかけを教えてください。
星加 「ハグするブラトップ」は、中長期開発としてじっくりと時間をかけて開発してきたアイテムです。ブラトップへのお悩みや不満をふまえて、ワコールブランド史上最高の商品を! という意気込みで、ブラジャー担当者とランジェリー担当者による熱いブレストからスタートしました。
プライス ブラトップへのお悩みや不満を調査すると、「バストが下がって見える」「(バストの)ホールド感がなく頼りない」といったお声が上がってきました(※)。これらの課題に対応するために、「ハグするブラ」とは違うブラトップならではの構造を考えるところから始めました。
※調査方法:ワコールHP内アンケート調査(複数回答) 調査期間:2024年2月 調査対象:女性513名

――ブラトップへのお悩みに応える商品に仕上がったということですね。
杉本 はい。最大のポイントは、ハグストレッチシートとリフティングシートを採用したことです。ストレッチ性のある土台に重ねたハグストレッチシートがからだを包み込み、まるでハグされているようなここちよさを叶えました。また、肩まで続くリフティングシートでバストを引き上げることで、ブラジャーを着けているようなバストの立体感ときれいなシルエットを保ってくれます。


星加 日常生活においてブラトップにおける着崩れを解消するためにまずは運動してもずれない構造について考えました。腕を上げたときにカップまわりの布が一緒に動くとバストの変形に対応できにくいため分離構造としました。表の生地をどこまで縫い込むかで、バストシルエットが変わるためどこを止めればフィット感を維持したまま美しい形を保てるのか、ということも課題でした…。
大江 また、カップ周辺を従来通り縫製で考えていたのですが、そうすると厚みが出たり、見た目が古めかしくなったりして、社内では昭和っぽいと言われてしまい…。そこで、縫製ではなく接着で問題を解決できるのではと思いつき、接着技法と全方向ストレッチ素材で、ずれ上がりにくく着装感のよい仕様にし、左右分かれたカップではなく、一体型カップを一から成型することになりました。そのカップをデザインに落とし込むのが本当に大変でした。

“世にないものの開発”を目標に
アイデアを持ち寄るものづくり
――チームで開発を進めるにあたって、どんなメリットがありましたか?
杉本 見た目にこだわる企画・営業と、構造を第一に考える開発・設計とが協力して、よりよいものを追求することができました。

プライス 例えば、バストを引き上げる機能を重視するがゆえに、試作ではカップが少し見えていたんです。営業の立場として、これは見逃せません!“吊り顔”といって、店頭に並べたときにどんな見え方をするかは、商品を販売する上で重要なポイント。機能的にどんなに素晴らしくても、手に取ってもらわないと伝わりません。見た目にいいものとわからないといけませんし、まずはかわいく見えることが大事です。イメージできないとお客さまはフィッティングしようと思ってくださらない。
杉本 それに関しては、ネックラインを上げることで調整しました。ベーシックでシンプルだけど安っぽく見えないスクエアネックで、アウターから見えすぎない絶妙な高さになっています。また、見た目という点でいうと、見えてもおしゃれなネックの縫製始末と裾のカーブラインにもこだわりました。薄すぎず厚すぎない絶妙な生地感と相まって、アウターライクに着ていただける一枚になったと思います。

プライス 加えて、洗濯後のねじれが起きないようにとリクエストしました。この問題解決は、設計を担当した大江の腕の見せどころです。
大江 至難の業でした(苦笑)。中が分離しているぶん、どうしても洗濯するとカップ部分が絡まりやすくなってしまいます。防止策としてテープで一点留めをしてみたのですが、肌あたりの良さと、見た目をシンプルにフラットにつくりたいという思いから、本体と内蔵構造をつなぐ山型の形状を考えました。

星加 実は、お求めになりやすい価格設定も当初から目標のひとつでした。工程数は価格に比例するため、よりシンプルに! という共通認識は全員にあったと思います。だからこそ叶った、4000円台。これは、自信をもっておすすめできる点のひとつです。

随所に見られるワコールの技で
ベネフィットのある商品に
――ハグストレッチシートとリフティングシートのほかに、どのような特徴があるか教えてください。
杉本 一体型カップの下部にぽこっと山があるのがわかりますか? この土台があることで、ラクなのにしっかりと支えてくれる安定感が生まれました。歪みにくく、バストがこぼれにくいのです。

大江 また、トップの位置を従来のブラトップよりも高い位置に設定しているため、ブラジャーを愛用している人にも、最初のブラトップとしてお試しいただけると思います。

星加 「ハグするブラトップ」の最大の魅力は、“ラクして快適”です。
快適を追求するため、何度も何度も設計、技術、技術開発、営業と論議しベストを探る作業が続きました。
着用感の良さにこだわり肌あたりを意識し、線でなく面で支える方法で着くずれるといった不具合を解決しました。知識と知恵を終結したワコールのプロ集団だからできる開発品になっています。
杉本 実は、裏打ちのハギは背中の中心線のみ。それも直接肌にあたらない箇所です。縫製ではなく接着したことで、肌側がフラットで着装感も安定し、ハグされているような着ごこちになっています。

大江 一体型のカップは谷間の深さをミリ単位で検討しました。美しいラインと機能的なラインの両方を兼ね備えるよう、切って縫ってを繰り返しました。リフティングシートの位置もつけては試着して直して…を何度も行いました。今までの知識と経験が通用しない作業だったので、あえてパターンは引かず、手探りで進めていました。

プライス その甲斐あって、ネットに入れて洗濯機洗いができ、ラクに着られるブラトップに仕上がりました。生地がよく伸びるということは接着が剥がれやすくなるということでもありますが、そこは設計の力で耐久性をクリアすることができました。
星加 バストの大きさ、体型、身長や年齢が異なるさまざまなモニターの方々にフィッティングを依頼しました。その際に「自分のサイズ(G70)ではブラトップは無理だと思っていたけど、フィットしてラクに着られる」「ブラトップはバストにカップが乗っているだけというイメージだったが、ブラジャーみたいにフィットしているのにラク」といったうれしいお声をいただきました。
杉本 「ハグするブラトップ」は、トップとアンダーの差が大きい方でも着くずれしにくいので、これまでブラトップをあきらめていた方にも届くといいなと思っています。

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プライス美佐依
マーケティング本部 IWブランド統括部 ワコールブランド 企画MD課
ワコール入社後、材料・生産管理を経験。その後、MDとして「アキュート」「ルーチェスト」の20代を中心としたブランドから、マチュア層以降に向けた「グラッピー」や、「ブライダル」「シモーヌペレール」などを経て、2023年4月より「ワコール_ベーシックニット」のMDを担当。
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杉本知子
マーケティング本部 IWブランド統括部 Yueブランドチーム
ワコール入社後、ランジェリーパタンナー、ニットチーフデザイナー、ブラパタンナー、開発担当を経験後、2024年4月より「ベーシックニット」と「ベーシックショーツ」のチーフデザイナーを担当し、2025年4月より「Yue」のチーフデザイナーを担当。
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大江淳子
SCM本部 生産・商品開発統括部 商品開発部 設計二課
ワコール入社後、ランジェリーパタンナーを担当。その後ランジェリーパターンチーフとしてワコールブランド全ブランドを経験。中長期開発メンバーの設計担当として「ハグするブラトップ」を開発。2024年からワコールブランド・GOCOCiのランジェリーパターンリーダー。また、アウターメーカーとのコラボ商品設計担当。
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星加真美
マーケティング本部 IWブランド統括部 ワコールブランド 商品企画課
ワコール入社後、「ー5歳着やせ」「肌リフト」などの機能性ボトムのチーフデザイナー、百貨店ブランド「パルファージュ」のデザイナーを経て接着商品「GOCOCi」のチーフデザイナー、中長期開発を担当し、「ハグするブラトップ」の開発に携わる。2025年4月からは「ワコールブランドコレクション」と「&RECOVERY」のチーフデザイナーを担当。
撮影/合田慎二
デザイン/WATARIGRAPHIC