料理研究家・柳澤英子さん<後編>適正体重とおいしい糖質オフ生活

特集/糖質制限、ホントのところ

語り/柳澤英子さん(料理研究家)
柳澤英子さん

糖質をゆるやかにオフしていく独自の食事法によって、1年間で26kgの減量に成功した、料理研究家の柳澤英子さんの「美の流儀」。前編では「やせて体調がよくなったことで、機嫌もよくなり、毎日が楽しく過ごせるようになった」と語った柳澤さん。後編では、ここ数年であえて体重を少し増やしたお話や、ストレスのない糖質制限を可能にしてくれるおすすめの食材や調味料、グッズについてうかがいます。

年齢や働き方の変化とともに“適正”体重に調整

52歳で体重をぐっと落とした後は、糖質制限をゆるめても、かつてのように激しくリバウンドすることはなくなりました。そして、60歳を迎えたときに、「これからは適正体重を意識しよう」と思ったんです。“美容”から“健康”へと、ウエイトをチェンジしようと。

WHO(世界保健機関)によると、肥満の判定基準になる体格指数のBMI値<体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)>が22を標準としており、最も病気になりにくい状態なのだそうです。当時、私は痩せ気味だったので、筋肉をつけて、少し体重を増やすことにしました。年齢を重ねてくると、痩せていると筋張って見えがちだし、私はキャラクター的に“薄ポチャ系”のほうが平和そうでいいかなとも思って(笑)。

適正体重は、年齢により、仕事により、人それぞれに違ってくると思います。30代で活動量の多い日常を送っている人なら筋肉もつけなくちゃいけないし。ひとりひとりに適正な数字があるはず。「調子はどう?」って自分と対話しながら生活していると、ベストな体重がだんだんわかってきますよ。結局はそれが、“元気で長もち”の秘訣なのではないでしょうか。

食材と調味料を上手に使って手軽に糖質オフ

糖質制限というと、食事に手間とお金がかかると思われがちです。確かにそういう面はあるのですが、私は職業柄、そして食への執着の強さから、同じものを食べ続けたくないので、お肉を食べたら次はお魚、そして野菜も日々種類や組み合わせを変えて料理します。しかもすごく面倒くさがりなので、簡単に! 食材や調味料を上手に使うのがポイントです。

最近ハマっているのは「昆布だし」。白だしよりも糖質が低くて、旨味もしっかりある。昆布ですから水溶性の食物繊維もとれます。炊き込みご飯や、洋風のパエリアにも、さまざまな料理に使えますよ。スプレータイプの「昆布の水塩」も重宝していて、「もうひと塩ほしいな」というときにシュッと吹き付ければ、減塩も叶います。

お酢もいいですよ。柿酢、紅酢、黒酢など、炒め物の最後にちょっとプラスすると、味が締まります。酢には食後の血糖値の上昇を緩やかにしてくれる効果もあります。

糖質制限での最大のポイントとなる「ごはんを減らす」ことについては、まずお茶碗を小さくする! そして、白米だけではなく、玄米、もち麦、こんにゃく米とのブレンドで、満足感をキープ。こんにゃく米はクセがあって苦手という話もよく聞きますし、私自身もそうだったのですが、「伊豆河童」というお店の「ゼンライス 乾燥こんにゃく米」に出合ってからは大好きに! もちもちしておいしいですよ。

麺も、最近はいろいろなメーカーから低糖質麺が発売されていますよね。私は豆100%のミツカン「ZENB NOODLE(ゼンブヌードル)」をリピートしています。パスタ料理のときはほぼこれですね。シマダヤの低糖質うどん「健美麺」もおいしい。

「食べたいのに食べない」のはストレスになるから、「食べてもいい」食材に置き換えていく。毎食ごとにそれを意識すると、そんなにお金をかけなくても、おのずと食事内容は変わっていくはずです。ちゃちゃっとできる簡単なレシピに、トマトや赤ピーマンなど、赤い色を足して元気をプラス! 日々そんなふうに食事を楽しんでいます。

ウォーキングで筋力アップ+気持ちもハッピーに!

コロナ禍になってから初めの1年は、もともとあまり動かない仕事だったことに加えて、外出の機会が激減し、筋肉量が落ちたのか、3kgくらい痩せたんです。でも、体脂肪率は増加。しかも足がパンパンにむくんで大変でした。外出制限がゆるんでから、1時間くらい歩いたり、ゆっくり走ったりするようになり、そうすると筋肉が増えて、結局今は、4〜5kg戻ってきた感じです。

本格的に歩き始めるようになってから、すすめられてはくようになったのが、ワコールのコンディショニングウェア「CW-X」です。足運びがよくなった感覚があり、気持ちよく歩けます。あわせてアップルウォッチも「もうちょっとがんばれ」と励ましてくれるので(笑)、素直な性格の私はどんどん歩く距離を伸ばしていき、今ではふくらはぎの筋肉もモリッとしてきたんですよ。そうなると、筋肉がポンプの役割をしてくれるから、足のむくみも解消。脚力がつけば転倒予防にもなりますし、以前は車で行っていたような距離のところへも歩いて行けば、「あ、あんなところに花が咲いてる」とか、「ここにカルガモがいたなんて!」とか、発見があって楽しい。いいことづくめです。

振り返ってみれば、ダイエットとリバウンドを繰り返していたときは、まるで自分をいじめているような食事や暮らしをしていました。「人からどう見られたいか」ばかりが気になっていた。今は、自分を大事にできていると実感しています。糖質制限をきっかけに、自分のからだと対話し、いたわりながら生活できるようになったんです。

そして、1食1食を大切にするようにもなりました。だって、一生のうち、あと何回食べられるかわからないけど、食事の機会は確実に減っていくわけですよね。その貴重な1回だと思うと、「なんでもいいや」ではすまされません(笑)。私は、食べることが大好きですから。

取材・文/剣持亜弥
撮影/高木亜麗
デザイン/WATARIGRAPHIC
  • 柳澤英子(やなぎさわ えいこ) 料理研究家・編集者。(株)ケイ・ライターズクラブ所属。sakamachi cooking lab.主宰。2011年、52歳のときに食を楽しむ独自の食事法を始め、1年後には26キロ減の47キロに。その後、リバウンドもなく、炭水化物の制限をゆるめても太りにくい体質と健康をキープ。忙しい人でも苦にならずにつくれる簡単レシピが好評。
    『ひとりごはん』『ふたりごはん』(ともに西東社)は続編含めて20万部超のロングセラー。『やせるおかず 作りおき』をはじめとする『やせおか』シリーズ(小学館)は累計260万部超の大ヒットに。近著は『料理のその手間、いりません』(小学館)、『柳澤英子のやせるおつまみ3行レシピ』(マガジンハウス)、『マンガでわかる ゆるくてもやせる!低糖質ごはん』(池田書店)、『ゆる糖質オフのダイエット鍋』(扶桑社)、『映える!おいしい!こんにゃく食堂 食べても食べても太らない』(小学館)。