むくみを決めるのは運動量

特集/むくみの正体に迫る!

先生/新見正則(愛誠病院上野クリニック血管外科
静脈瘤センター顧問。帝京大学外科准教授)

むくみを決めるのは運動量 ----デスクワークや立ち仕事の女性を悩ませる脚のむくみ。夕方になると足がパンパンで靴がきつく感じることも。でも、疲れて帰ってきてマッサージするのは億劫だったり......。ケアの必要性を感じながら、なかなか習慣化できない人が多いのではないでしょうか。今回は、血流のエキスパート、愛誠病院上野クリニックの新見正則先生に、正しい知識と解決法を教えていただきます。まずは、むくみの原因をおさらいしていきましょう。

1日3〜4時間、同じ姿勢をしていれば誰でもむくむ

心臓から送り出された血液の一部が、動脈からにじみ出て組織間液となり、全身の細胞に酸素や栄養分を届けています。運搬を終えた組織間液は、二酸化炭素や老廃物を回収しながら静脈を通して心臓に戻るのですが、静脈の流れが滞ると組織間液は余分な水分となって、たまってしまいます。この状態がむくみです。脚の場合、すねの内側を指で強く押し、10秒たっても指の跡がついている人はむくんでいるといえます。地球には重力があるため、3〜4時間座りっぱなしや立ちっぱなしでふきらはぎを使わなければ、余分な水分が下(脚)にたまるのは当然のこと。

男性に比べ女性のほうがむくみやすいのは、筋肉量が少ないからと言われていますが、実は筋肉量はあまり関係ありません。ふくらはぎの筋肉を収縮させて静脈内の血液を押し上げているため、筋肉が衰えれば押し上げる力も弱くなりますが、押し上げるのに必要な筋肉は微々たる量で実は十分なのです。筋肉がある程度ついている人は、そうでない人に比べ運動量が多いはず。つまり、筋肉の量が多い、少ないではなく、運動量が多ければむくみにくい。そう解釈するのが正解です。

注意すべきは片脚だけのむくみ

むくみを放置しても健康に悪影響を及ぼすことはありませんが、朝起きたときもむくんでいたり、片脚だけむくむのは病気のサインかもしれません。なんらかの原因で静脈の弁が壊れて血流が滞り、血管にコブができる下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)はむくみに加え、脚が重だるい、ピリピリとした痛みなどの症状があります。放置すると色素沈着や湿疹を起こす可能性も。

怖いのは、下肢などの静脈に血栓(血の塊)が生じる静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)です。長時間同じ姿勢でいることで血流が悪くなり、血が固まりやすくなります。さらに、はがれた血栓が血液の流れに乗って肺に到達すると、呼吸困難や心肺停止を招くこともあるのです。全身がむくんでいる場合は、腎臓や肝臓が弱っている可能性もあるので、病院で調べてみてください。

----新見先生いわく、むくみに限らず、"むくんでいる気がする"といった"気がする病"が増えているのだとか。気にしすぎるのもよくありませんが、脚が太く見えるのは女性にとっては死活問題! ということで、次回は簡単で効果てきめんなむくみ対策を教えていただきます。
新見正則

新見正則 愛誠病院上野クリニック血管外科 静脈瘤センター顧問。帝京大学外科准教授。医学博士。2002年、国内初の保険診療でのセカンドオピニオン外来を始める。漢方医として血管、漢方、未病、冷え症の各外来も担当。『下肢静脈りゅうを防ぐ、治す』(講談社)、『仕事に効く!モダン・カンポウ』(イースト・プレス)など著書多数。

取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ