産前産後のからだを考えた、快適さの工夫がいっぱいの2WAY「ロンパースパジャマ」

語り/西村恵美(デザイナー)、久保良允(営業)

これまでベビー服のイメージがあった「ロンパース」を、妊娠中から産後まで着られるパジャマとして視点を変えて開発。裾の部分をとめて2WAYで使える機能性、世界的トレンドやリラックスウェアとしても使えるデザイン性など、商品誕生に至るこだわりを紹介します。

産前産後のからだを考えた、快適さの工夫がいっぱいの2WAY「ロンパースパジャマ」

世界的トレンド「ロンパース」スタイルをマタニティパジャマに反映

――2022年春、新しいタイプのマタニティパジャマが登場するそうですね。

西村 そうなんです。ボーダーがカジュアルなタイプ(上の写真左)と、フェミニンなタイプ(上の写真右)をご用意しました。2020年春夏シーズンにマタニティパジャマの展開は始まっていましたが、今回はヨーロッパでもトレンドになっている「ロンパース」――海外では「Romper」(ロンパー)――のスタイルを意識して、さらに機能性やデザイン性を追求しました。

西村 恵美(デザイナー) 西村 恵美(デザイナー)

久保 こちらが2020年春夏シーズンに発売したマタニティパジャマです。このときは「ロンパース」とはうたっていませんでしたが、股下がホックでとめられる仕様は、ロンパースならでは。ルームウェアとしても着られるデザインということもあって、売り上げが好調でした。

2020年春夏シーズンに登場したマタニティパジャマ(MFT251)。股下がとめられるスタイルの最初の商品。2022年3月には新色が加わる。 2020年春夏シーズンに登場したマタニティパジャマ(MFT251)。股下がとめられるスタイルの最初の商品。2022年3月には新色が加わる。 久保 良允(営業) 久保 良允(営業)

――ベビー服などでは「ロンパース」という言葉をよく聞きますが…。

西村 たしかに、新生児のころに使うベビー服に対して使われる「ロンパース」は、みなさん耳慣れているかと思います。肌着とパジャマの機能を兼ね、おむつ替えが頻繁な時期はワンピースのようにも着られ、足をよく動かすようになると股の部分をボタンでとめて使える2WAYが特徴です。

久保 おうち時間の増加によって、大人も若い世代も楽ちんな「ロンパース」のよさに気づき、昨年あたりから世界的にインスタグラムなどで広がりました。こんな流れを取り入れて、2022年春からはマタニティパジャマの概念をやぶる「大人用のロンパース」として展開することに。マタニティパジャマへのニーズが多い「前開き」や「長めの裾」など、これまでの条件はふまえつつ、かゆいところに手が届くよう必要な要素を詰め込みました。

西村 日中はお部屋の中でワンピースのように着て、横になるときは股のところをホックでとめるとずれ上がりにくいので便利です。

股下がホックで簡単にとめられるのが特徴。 股下がホックで簡単にとめられるのが特徴。

オールインワンとして使えて、さらにずり上がりにくい裾の工夫も

――2022年春夏シーズンの新作のポイントを、それぞれ教えてください。

久保 こちらのカジュアルなボーダー柄は、夏用です。生地は綿素材で涼しく過ごしていただけます。デザイン面では、半袖のフレンチスリーブや、ひざ丈がポイントですね。

ロンパースパジャマ(MFY325)。カラーはブラウン(BR/左)、紺(KO/右)の2タイプ。 ロンパースパジャマ(MFY325)。カラーはブラウン(BR/左)、紺(KO/右)の2タイプ。

西村 そしてこちらがフェミニンなタイプ。5分袖で着丈は120センチのロング丈です。リラックスウェアとして着ていただけるようにネック部分や背中にギャザーを入れたり、フロントのホック部分が目立ちすぎてカジュアルにならないように小さくしたりするなど、デザインを工夫しました。オフショルダーもポイントです。

ロンパースパジャマ(MFY326)は、くすみカラーのブラウンピンク(BR/左)と落ち着いたトーンのグリーン(GR/右)。ワンピースとして着用した状態が左、股下のホックをとめたオールインワンの状態が右の写真。 ロンパースパジャマ(MFY326)は、くすみカラーのブラウンピンク(BR/左)と落ち着いたトーンのグリーン(GR/右)。ワンピースとして着用した状態が左、股下のホックをとめたオールインワンの状態が右の写真。

西村 股下のホックをとめなければワンピースのように着られて、玄関先にも出られるデザインを意識しました。前でも後ろでも結べるリボンは、アウターっぽさを出すために同じ素材でつくっています。

リボンは前でも後ろでも結ぶことができる。 リボンは前でも後ろでも結ぶことができる。

久保 共通する大きな特徴は、股下のホックをとめてパンツスタイルにできるだけでなく、サイドのホックをとめてパンツの裾幅を縮められるというところです。オールインワン・サロペットと呼ばれるものもありますが、それらとは違って、股下を開けられるのでトイレのときも便利に使っていただけます。

サイドのホックをとめれば、足を上げ下げしても裾がずり上がりにくい。 サイドのホックをとめれば、足を上げ下げしても裾がずり上がりにくい。

西村 マタニティ期の方は、おなかが大きくなってくると横向きで寝るのがラク。そんなときにひざを上げたりしても裾がずり上がりにくいように、という配慮です。この機能性で、意匠登録もしています。マタニティ期の間、トイレが近くなってもスムーズに外すことができます。実際にモニターさんからも「着脱が簡単ですね!」とコメントをいただきました。

久保 ウエスト部分もしめつけないので、リラックスしていただけると思います。産前産後のサイズ変化を考え、M~Lサイズに対応しています。バストのサイズ変化も考え、ウエストまわりだけでなく全体的にゆったりとしたつくりにしています。

西村 また、ポケットがついているのもポイントですね。入院期間のちょっとした移動にスマートフォンや、ベビー用のガーゼを入れたりできて便利です。さらに、どのタイプにもバストのサイドに授乳口をつくっています。

小物が出し入れしやすいサイドポケット。 小物が出し入れしやすいサイドポケット。

環境に配慮したBMPコットン生地は肌ざわりがよく丈夫

――フェミニンなタイプの生地は、環境にも配慮されているそうですが?

久保 フェミニンなタイプの生地には、今回初めて出合ったBMPコットンを採用しました。よく知られているオーガニックコットンは有機栽培が主な基準ですが、これはちょっと違っていまして。オーストラリア綿の中でも、農薬の使用を最小限に抑え、水の使用効率を最大化するなど、環境に配慮し生産されたBMP(ベスト・マネジメント・プラクティス)という栽培方法の綿なんです。

ロンパースパジャマ(MFY326)に初採用したBMPコットンは、やさしい肌ざわり。 ロンパースパジャマ(MFY326)に初採用したBMPコットンは、やさしい肌ざわり。

西村 赤ちゃんも触れる生地ということで、肌ざわりも重要ですよね。この生地はバイオ加工を施すことで、生地表面もキレイになって、やわらかく、手ざわりもいいんですよ。それに、通常綿は染色すると黄みがかってしまうことが多いのですが、こちらはとても発色性がよくて。事前に色の候補をしっかり検討したうえで試作用に染色したところ一発で決まりました。ロスを出さない、エコな商品づくりができたと思います。カラーは、マタニティ期の方が好まれるやさしい色目で、メイクをされていないときでもお顔が暗くならないようにと考えました。

久保 「洗濯しても、ほかの綿と比べてしっかりしている」というお声も届いているので、たくさん使っていただきたいですね。ぜひ、2人目、3人目…のベビーにも続けて着用していただければ、うれしいです。

  • 西村恵美(にしむら・えみ)
  • 西村恵美(にしむら・えみ) 第2ブランドグループ ファミリーウェア商品営業部 商品企画課
    1983年に入社し、ワコールブランドデザイン課 ランジェリーデザインを担当。出産後、ワコール人間科学研究所でパターン作成や研究業務を経て、1995年ファミリーウェア営業部に。マタニティインナーを中心に、デザイン・機能開発を行う。現在は、マタニティインナー・パジャマ・ベビー肌着のチーフ・デザイナーを担当。プライベートでも出産・育児を経験し、自らの経験も活かして、プレママ・産後ママの悩みを解消するよりよい商品を開発するべく日々奮闘中。
  • 久保良允(くぼ・りょうすけ)
  • 久保良允(くぼ・りょうすけ) 第2ブランドグループ ファミリーウェア商品営業部 商品営業課
    2007年入社。人事という異色の経歴でスタートしながら、2010年に婦人肌着の部門にて商品MDを担当。2014年に現ファミリーウェア商品営業部に着任し、マタニティ・ベビー商品を中心に担当。ファミリーウェア全体のMD統括を担いながらマタニティウェアを担当。プライベートでは二児のパパ。
取材・文/シキタリエ
撮影/合田慎二
デザイン/WATARIGRAPHIC