産後の授乳によってサイズ変化が大きいバストのために新登場した「とろけてバストになじむブラ-産後-」。画期的な新素材が体温に反応してからだになじみ、サイズ変化に対応します。そんな新素材のヒミツや開発の裏側を聞きました。
体温に反応してからだになじむシートがバストのサイズ変化に順応
――新しい産後用ブラ開発のきっかけを教えてください。
西村 産後のお母さまたちのお声を聞かせていただくと、みなさん口をそろえておっしゃることがありまして。それは、一日に何回も授乳をするたびにバストの大きさが変わるため、授乳後にブラジャーの上辺が浮いてしまうというものでした。また、お仕事に復帰されてそろそろ授乳回数が減ってきたというときに、バストの上胸がさびしくなるというお声もありまして。
勝田 授乳中のブラジャーや、産前からお持ちの下着ではサイズがなかなかしっくり合わないということで、何かできないかと考え素材探しが始まりました。
――画期的な新素材との出合いがあったとか?
西村 そうなんです。先ほどのお悩みについて考えていく一方で、弊社の人間科学研究所の研究発表で知った新素材があり、なにか料理できないかな?と(笑)。こちらのシートなんですが、ぜひ触ってみてください。
勝田 素材だけを見ると、これを肌着に使うの?と思ってしまいますよね。28℃くらいからだんだん体温になじんで、形が変化する、三井化学様の「HUMOFIT(ヒューモフィット)®」という素材です。
「HUMOFIT」は三井化学株式会社の登録商標です。
――指で触れている部分からやわらかくなりますね!
西村 そうなんです。バストは左右差もあるので、使えるのではないかとひらめきました。体温でバストのボリュームの変化にあわせてなじむ、今までにないアイデアです。とはいえ、素材ありきではなくお客様が着用されたときのことを考え、肌ざわりに違和感が出ないようまずはラミネートをほどこしました。さらにその上からもう一枚、ブラジャーの裏打ちに使っている素材を包むようにかけることで肌あたりをよくしています。
――いつもとは違う苦労があったのでしょうか?
勝田 そうですね。先ほどのラミネートをかけるのも温度変化があるため現場で試行錯誤しましたし、縫製時も手が触れたり摩擦によって変形するので工夫が必要でした。
西村 縫製の方法も通常と異なる部分がありまして。最初は、上辺もすべて縫製していたのですが、素材のよさを生かし、やさしくなじんでくれるよう最小限の縫製にとどめています。
勝田 珍しい素材ですので想像しにくいかと思い、体温でどのように素材の状態がかわるのかをお伝えするツールを店頭にご用意しています。実際に変化を実感していただければ。
――モニターの方の反応はいかがでしたか?
西村 今回は、バストサイズの異なる複数のモニターの方にお願いして、例えばブラジャーサイズがC70の方が着用したあとにD70の方に着けていただく、さらにその状態でC70の方に戻す…という方法をとって産後のバストを再現しました。着用感を「とろけるという表現がぴったり」と言っていただき、そのままネーミングになっています。
授乳しやすい工夫や気分の上がるデザインもポイント!
――授乳しやすい工夫がされているとか?
西村 そうなんです。3/4カップですが、ワイヤーを端まで入れていないので、このように折り曲げるだけで簡単に授乳ができます。以前、お客様のお声から生まれた発想なんですよ。授乳回数を想定したテストもクリアしています。
勝田 Gカップ以上の方は、ワイヤーの長さが必要なため同じような使い方はできないのですが、その代わりにストラップ自体を外さなくていいようにホックを付けることで工夫しています。これがあることで、カップがストラップから離れすぎず、授乳後は楽に着けなおすことができます。
西村 ストラップですが、マタニティ用は通常のものより幅を広めにつくっています。乳腺が張るとバストが重くなり、ストラップが細いと肩が疲れてしまうので。
――レースやチュール使いが印象的ですね。
西村 レースの下にヌーディなカラーを入れて、レースを際立たせたデザインもポイントです。サイドにかぶせたチュールは、これがあることでシェイプした印象になるんです。どんなに機能性があっても、やはりデザインがかわいくないといけませんよね。フェミニンでモダン、気分が上がるよう意識しています。
――カラー展開について教えてください。
勝田 以前はマタニティ用としてはなじみが少なかったのですが、今では産後商品の主力カラーとなっているBL(ブラック)をはじめ、明るくフェミニンなイメージのRP(ロマンピンク)、最近人気のおしゃれなBE(ベージュ)をご用意しました。
――おそろいのショーツについても教えてください。
勝田 ショーツはジャストウエストで、おなか部分に伸びない裏打ちを使用し、おなかをすっきり見せます。テープが直接肌にあたらないよう、またアウターにも影響がでないようにしました。大転子(だいてんし)という脚のつけ根の出っ張った部分をサポートするように設計しているので、骨盤サポートもできます。
西村 段差がつかないように編み方を変えて、強弱のグラデーションをつけているんです。そうすることで、見た目もエレガントですし、おなかに圧がかかりすぎないので産後すぐにはいていただけるのが魅力です。ブラジャーもショーツも、産後のお悩みの解決方法が増えたことをお伝えできればうれしいです。
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西村恵美(にしむら・えみ)
卸売事業本部 ファミリーウェア商品営業部 商品企画課
1983年に入社し、ワコールブランドデザイン課 ランジェリーデザインを担当。出産後、人間科学研究所でパターン作成や研究業務を経て、1995年ファミリーウェア営業部に。マタニティインナーを中心に、デザイン・機能開発を行う。現在は、マタニティインナー・パジャマ・ベビー肌着のチーフ・デザイナーを担当。プライベートでも出産・育児を経験し、自らの経験も活かして、プレママ・産後ママの悩みを解消するよりよい商品を開発するべく日々奮闘中。
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勝田恭平(かつた・きょうへい)
卸売事業本部 ファミリーウェア商品営業部 営業課
2012年入社。ファミリーウェア事業部の東・西販売課を経て百貨店セールスとして現場経験を積み、2020年4月に本社商品営業部へ異動。現在はマタニティインナーとベビーのMDを担当。
撮影/合田慎二