冬至(とうじ)/免疫力を高めながら春への準備

文/伊藤和憲(鍼灸師・明治国際医療大学教授)
イラスト/中根ゆたか
冬至(とうじ)

冬至といえば、一年のなかでも昼が短く、夜が長いことで知られています。夜が長いということは、東洋医学でいう「陰」が強く、「陽」が不足することにつながります。「陽」は太陽の光に代表されるあたたかいエネルギーなので、冬至のころはいちばんからだが冷える時期といえます。

外に出ることや運動の機会が減って、足腰が弱くなり、疲れやすくなるのを実感する人も多いでしょう。運動時間の低下は免疫力の低下につながり、インフルエンザなどの感染症ほか、さまざまな病気に発展しやすくなります。

寒くて暗い冬至ですが、暦の上では冬の折り返し地点でもあります。冬至の期間中に新年を迎えることもあり、新しいことに向かう気持ちをもちつつ、春に向けて営気を養う準備をしましょう。

冬至にケアしたいツボ

尺沢(しゃくたく)
位置:ひじを曲げたときにできるしわの真ん中で、太い筋の外側。
方法:イタ気持ちいい程度に5秒押して5秒離す刺激を1セットとし、5〜10回行いましょう。また、腕を伸ばして、ツボを軽くこりこりと押すのも効果的です。
効果:せきや鼻水、口やのどの渇きなどの風邪の症状の他に、ゆううつな気分や気が重い状態を軽くしたり、精神の高ぶりを静める働きがあるといわれています。こうした症状の予防として、毎日ツボ押しをすることもおすすめします。

尺沢(しゃくたく)


肺兪(はいゆ)
位置:頭を下に向けて首元あたりで骨がいちばん盛り上がるところを探します。そこから背骨の山を3つ下に移動し、左右斜め下・指幅2本のところ。
方法:自分で押す場合は仰向けになってテニスボールやゴルフボールなどで刺激をするとよいでしょう。またカイロやドライヤーでその付近を温めるだけでも効果的です。
効果:肺兪は「風邪」や「咳」などの呼吸器系の症状に効果的です。また、肺の力を高めて免疫力を上げることから、「アレルギー性鼻炎」や「花粉症」などにも効果的です。

肺兪(はいゆ)


井穴(せいけつ)
位置:爪の生え際の両角から2mmほど下。
方法:爪全体を挟み込むように刺激し、イタ気持ちいい程度に5秒押して5秒離す刺激を1セットとし、5〜10回ほど押すようにしましょう。薬指は交感神経を刺激してしまうため、それ以外の指を刺激しましょう。
効果:自律神経を整えて、免疫力を高めることができます。各指にはそれぞれ効果の違いがあり、親指はアレルギーの緩和・咳・喘息・肌荒れの緩和、人差し指は便秘解消・緊張緩和、中指は不眠・めまい・耳鳴りの改善、小指は動悸を抑える・肩コリの緩和に効果的と言われています。

井穴(せいけつ)
デザイン/WATARIGRAPHIC
  • 伊藤和憲
  • 伊藤和憲(いとうかずのり) 鍼灸師・明治国際医療大学教授・鍼灸学部長・鍼灸臨床部長
    1972年生まれ。鍼灸学博士。全日本鍼灸学会理事。明治国際医療大学鍼灸学部教授。明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科教授、同大学大学院研究科長。2012年~2014年、厚生労働省科学研究費助成事業 地域医療基盤開発推進事業「慢性疼痛患者に対する統合医療的セルフケアプログラムの構築」, 2014年~2015年同研究助成事業「鍼灸における慢性疼痛患者の治療方針ならびに医師との連携に関するガイドライン」の研究班班長を務める。また、2016年より過疎化対策の一環として京都府南丹市にて養生の体験教室「MIYAMA 森の湯治場」、さらには奈良県宇陀郡曽爾村の美人プロジェクトを監修。明治国際医療大学附属鍼灸センター長を務め、「はり・きゅう」の治療に当たるとともに、慢性痛患者のためにセルフケアを指導している。 https://www.yojyo1192.com/