2022.04.27

モデルKIKIさんが訪ねる研究の現場#02/正しい姿勢ってなんだろう?

モデルKIKIさんが訪ねる研究の現場#02/正しい姿勢ってなんだろう?

「美しい佇まい」プロジェクトの研究現場に、モデルKIKIさんが訪問するシリーズ。「いい姿勢ってどういう状態?」という疑問で終わった前編。後編では、建内先生とワコールが共同で行っている「動きで身体を整える研究」について、また、ひとりひとりにとっての美しい佇まいを実現する独自の方法が、明らかになります。

前編はこちら>

「いい姿勢」とは、どういう状態?

KIKI 姿勢についてどのような研究をされているのでしょうか?

建内 今取り組んでいるのは、ワコールがもっている姿勢やプロポーションなどの外見的な指標と、私たちが行ってきた身体機能の研究を生かしたもの。姿勢と身体機能にどんな関係があるのかという研究です。

これまでは、動きの能力が低いというと、筋力が弱いとか関節が硬いことが大きな要素とされてきました。けれど、実はそれだけでなく、からだつきや姿勢、バランスも関係あるのではないかと考えています。「身体能力を高めるためにも、姿勢を整えることが大事」という、これまでに言われてなかった観点での分析をしています。

建内宏重先生(京都大学准教授) 建内宏重先生(京都大学准教授)/理学療法士、博士(人間・環境学)。リハビリテーション領域での診療と研究を行う傍ら、理学療法その他関連専門職に対して講演やセミナー活動も行う。著書に、『姿勢と歩行』(三輪書店)、『股関節』(ヒューマンプレス)など。

KIKI 身体機能と姿勢に深い関係があるのですね。では、いい姿勢とは、いったいどんな状態なのでしょうか?

建内 いい姿勢を定義するのはとても難しいんですよね。腰や頭の位置、背筋が曲がっていないかなど、ある程度の指標はありますが、全ての人にとっていい姿勢をひとつに決めるというのは、難しいです。その人それぞれでいい姿勢が異なることもあり得るからです。たとえば、横から見てまっすぐに立っていても、本人が無理をしていたら、見る人からも窮屈そうという印象が残ってしまい、いい姿勢には見えません。

そもそも無理をした状態は、一見いい姿勢であっても、ずっとは続きません。むしろ、ひとつの姿勢でい続けるのは、からだにはよくない。それよりも、適度に姿勢を変える人のほうが腰痛になりにくかったり、からだもいい状態を保ちやすいのです。

ですから、いい姿勢を言葉にするなら、「からだの一部分にストレスが集中することがなく、適度に姿勢を変化させられる余裕がある」ということではないでしょうか。「からだの整った機能」と「姿勢のバリエーション」がカギです。

KIKI なるほど、ひとつの型にはめればいいというわけではないのですね。

左から
KIKI(モデル) 建内宏重先生(京都大学准教授) 坂本晶子(ワコール人間科学研究開発センター主席研究員) 左から
KIKI(モデル) 建内宏重先生(京都大学准教授) 坂本晶子(ワコール人間科学研究開発センター主席研究員)

筋力や柔軟性、バランス能力が姿勢をつくる

坂本(ワコール) 私たちもお客様の美しい姿勢へのニーズの高さから、姿勢に着目した商品を多く開発しています。姿勢について改めて考えると奥深いんですよね。「正しい」姿勢ならば、ある程度定義することができます。ただ、主観的な判断の入る美しい姿勢となると、その人が思う美しさはひとつではありませんし、いろいろな美しい姿勢があるのだと思います。

たくさんある美しい姿勢の共通性として、先ほど先生がおっしゃった「整った機能」と「姿勢のバリエーション」があります。では、美しい姿勢をつくるための「整った機能」とは何かといえば、筋力や柔軟性、バランス能力が重要な要素となることがわかりました。それらを整えながら姿勢を整えていくことで、その人自身にも余計な負荷がかからず、また人から見ても素敵だと思われる姿勢になるのではないかと思っています。

建内 骨の形が違えば姿勢や動き、ふるまいも変わりますから、「無理をしていない」こと、つまりその人にとって「理にかなっている」ことが大事なのだと思います。

坂本晶子(ワコール人間科学研究開発センター主席研究員) 坂本晶子(ワコール人間科学研究開発センター主席研究員)/入社以来、ベビーからジュニア・マタニティ・シニア世代まであらゆる世代の人体計測を担当。その後、製品開発課で「スタイルサイエンスシリーズ」の開発、姿勢美研究などを経て、さまざまな商品開発に携わる。

1段ずつ階段をのぼるように、からだの変化を実感

KIKI 姿勢やふるまいなどすべてを含んでいるものが、今回のプロジェクトでもある「美しい佇まい」ですよね。

KIKI(モデル) KIKI(モデル)/武蔵野美術大学建築学科卒業後、モデル・女優・写真家として多方面で活躍。エッセイ寄稿や紀行文の執筆なども手がける。著書に『美しい山を旅して』(平凡社)、『山が大好きになる練習帳』(雷鳥社)、『山・音・色』(山と渓谷社)など多数。

建内 美しさはひとつではなく、何通りもある。だから、美しい佇まいを目指すといっても、全員に同じプログラムを提供するのは違うと思うんです。

ある簡単な動きを観察して、そこからタイプ分けをして、各タイプの筋力や柔軟性、バランス能力などの特徴から、タイプに応じたエクササイズを提案する。「バランス能力が低めの方のためには」、「腹筋が弱めの人には」と、「あなたの美しい佇まい」に適したエクササイズを、オーダーメイドのように提案できればと思います。

●バランス能力チェックにKIKIさんもチャレンジ!

前後左右に不規則に動く台の上で、重心を移動させながらバランスを取る。簡単そう見えて、「意外に難しい!」(KIKIさん) 前後左右に不規則に動く台の上で、重心を移動させながらバランスを取る。簡単そうに見えて、「意外に難しい!」(KIKIさん)

「美しい佇まい」=「なりたい自分」の実現に向けて

建内 さきほどKIKIさんに体験していただいたのは、姿勢の安定性を見るものです。重心を動かしながら、それに合わせてどこまでからだを移動させられるか測ります。

KIKI 意外と難しかったです。

建内 KIKIさんは、前側のバランスが少し弱いようですね。これは足首の硬さも関係しているかもしれません。

KIKI (データを見て)本当だ。足首の硬さなんて今まで気にしたこともありませんでした。今回は特別な機械で体験しましたが、簡単な動作チェックや自撮り動画で、自分のからだを知ることができたら、いいですね。「美しい佇まい」プロジェクトのサービスが完成したら、どのように活用してもらいたいですか?

坂本(ワコール) 美しい佇まいとは、突き詰めて考えていくと、「なりたい自分になる」ことだと思っています。ひとりひとり、自分にあった憧れの姿を実現できるようなサービスに仕上げたいです。

KIKI 自分が変わったと実感できるには、どれくらいの日数がかかりますか?

坂本(ワコール) エクササイズの取り組みの中では、からだが変わったことに気づくのには、2ヶ月くらい必要です。ですので、半年や1年くらいかけて1段ずつ階段を上がって、美しい佇まいを実感してもらえたらと思います。

建内 海外のデータですが、65歳以上の人でもエクササイズで猫背が改善したというエビデンスがあります。それには、筋力トレーニングや柔軟性の改善、自分の姿勢への意識などが必要になります。その人が目指す美しさに向かっていくというのは、日数をかけてもやる価値があるのではないかと思います。

坂本(ワコール) 美しい佇まいに憧れると言っても、何をしていいかわからない人も多いと思うんです。ですが、その人の動きから計測し、提案することができれば、本人も「美しい佇まい」への道筋を見つけやすくなると思います。サービスのローンチを、楽しみにしていてください。

「型にはめるのではなく、個性を生かすサービスに期待」(KIKIさん)

KIKI(モデル)

「バランス感覚をチェックしつつ、自分のからだを客観的に知ることができるのは、なかなかできない体験です。これが身近で簡単にできたら…と考えると、とても興味深い。そして、それがどんなエクササイズとなって提案されるのか。プログラムの実現が、今からとても楽しみです」


取材・文/大庭典子
撮影/石川奈都子
デザイン/WATARIGRAPHIC

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