漢方薬剤師・樫出恒代さんのいい汗をかく10の秘訣<後編>

特集/いい汗悪い汗

語り/樫出恒代さん(漢方薬剤師、漢方ライフクリエーター)

古典から漢方を学び、すこやかな心とからだづくりをサポートする樫出恒代さん。後編では、夏の汗対策から、いい汗をかくための気力の養い方まで伝授します! 漢方薬剤師・樫出恒代さん

Secret6
夏の汗が冷えを招きます

「これからどんどん気温も高くなりますね。夏は汗をかいたほうがいいのですが、すぐに拭くこと。たとえば、通勤中に汗をかくなら、ブラジャーとボトムの背中側にミニタオルを挟んで、汗を吸い取る工夫をするのも効果的。オフィスに着いたらタオルを外せば、身につけているシャツが必要以上に濡れずにすみます。すぐに汗が乾くキャミソールなどもありますし、かいた汗をそのままにしないことが大切です。夏は暑さと冷えの繰り返しが、自律神経の乱れの要因に。汗をかくぶん、すごく冷えている人も多い時期なんです。オフィスの冷えを制することが夏を制するといっても過言ではないので、腹巻きやレッグウオーマーを着用し、夏こそ冷やさない工夫が大切です」

Secret7
汗のにおいは血液が汚れているサイン

「冷え症の人は汗が濃縮されるぶん、におってしまう傾向があるということを前編でお話しました。また、それ以外にもタバコやアルコールなど刺激物を好んでとる人も汗のにおいが強くなります。血液が汚れるので、汗にも老廃物がたまってしまうのです。血液をきれいにするには、旬の食べ物や、野菜を積極的にとることも大切。そして睡眠をおろそかにしないことです。22〜26時の成長ホルモンの分泌が盛んなときに眠りについておくことがベスト。無理なら深い眠りにつけるように心がけましょう。代謝がよくなるので、血液もきれいになり、いい汗をかけるようになります」

Secret8
寝汗はストレスが原因です

「寝汗が気になり夜に目が覚めてしまうというのは、心にストレスを抱えているサイン。心配ごとが重なり、気力、体力が低下しているときに寝汗をかきやすいといわれています。心身ともに健康でいるためには、筋力をつける、温める、くよくよしないことが大切。心配性だという自覚があるのなら、好きなことを見つけるのがいちばんです。最近は失敗や批判、嫌われることを避ける人が増えているよう。それが寝汗につながる要因です。自分の心の中を"散歩"して、本当はどうしたいか、何をするのが好きかを見つめてください」

Secret9
自分にとって気持ちいい汗をかくこと

「汗をかけずに悩む人には半身浴をおすすめしたりもしますが、どんな風に汗をかくのがベストかを見極めてください。半身浴でも気分が悪くなるのなら無理はしないこと。サウナや岩盤浴もそうですが、気持ちいい汗が出るなら続ければいいし、疲れる、不快だな、と思ったらやめること。現代は情報がいくらでも入るぶん、モデルやタレントがやっていることをすぐに真似しがち。憧れの人がやっている健康法だから大丈夫と鵜呑みにせずに、自分に合う・合わないを判断しましょう」

Secret10
心のときめきがいい汗へとつながります

「漢方の世界では、汗は"心血(しんけつ)"と呼びます。心がドキドキすると汗がにじんだり、不安だとダラダラ止まらなくなりますね。"汗"と"心"は密接なつながりがあるのです。最近の働く女性は疲労感を抱えている人が多いです。休日はエネルギー保存とばかりに家でごろごろ過ごすのもいいですが、たとえからだが休まったとしても、心をときめかせることをしないと、どんどん疲弊していってしまうのです。心のときめきこそが気力を生む種。気力が充実すると、自律神経も整い、自分の力で汗腺をキュッと締めることができるようになるので、いい汗がかけるようになるのです。心のときめきをおろそかにしないでくださいね!」 肝心脾肺腎(かんしんひはいじん) 東洋医学では、からだに起こる現象から「肝心脾肺腎(かんしんひはいじん)」といった五臓の機能が正常かどうかを判断することができます。汗をかく部位によって抱える悩みがわかるのも、この考え方が根本にあるため。

樫出恒代(かしでひさよ)(漢方薬剤師、漢方ライフクリエーター) 漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。『漢方カウンセリングルームKaon』の代表でもあり、『Kaon漢方アカデミー』の代表兼講師としても活躍。「漢方をもっと身近に。もっと自分らしく」というテーマの元に行うきめ細やかなカウンセリングや施術には定評が。また、スクールやセミナーでは講師としての一面をもち、心身ともに元気になるための"漢方ライフ"の普及に力を注いでいる。
『漢方Kaon』 http://kampokaon.com/

取材・文/川口夏希(ライター)
撮影/長谷川 梓