年齢を重ねるほどに大切になってくるのが、定期的な「人間ドック」です。毎年受けていると胸を張って言える人、「いつかは」と思いながらもまだ行けていない人、意外にまちまちなのかもしれません。そこで、おとなの女性に必要な人間ドックとは何なのか。その見極め方から心得ておくべきことまで、「クレアージュ東京 レディースドッククリニック」の浜中聡子先生に詳しく教えてもらいました。
人間ドックは、
人生を照らす灯台のようなもの
医療に携わる人間としてまずお伝えしたいのは、人間、長く生きてきたならば、どこかにガタが出てしまうのは避けられない、ということです。避けられないからこそ、何が必要なのか。それが定期的なヘルスチェック、いわゆる「人間ドック」です。
これを受けることで、どこは健常なのか、どこに異常があるのか、異常があるならばどのレベルなのか。経過観察でいいのか、治療が必要なのか、それぞれが明確にわかってきます。すると、闇雲に不安に陥ることがなく、今自分が何をすべきか、どういう行動を起こすべきかがわかってくる。人間ドックを受けるのが怖いという人もいるようですが、いちばん怖いのは、病気を放置しておくこと。ぜひ、健やかな暮らしのために、人間ドックを人生のルーティンに取り入れてみてください。

性差やライフステージで、
受けるべき検査は変わる
となると、どの人間ドックを受ければいいのか、そのことに迷ってしまうかもしれません。まず企業検診を受けているかどうか、そこがひとつの指標になるでしょう。もし自治体の検診しか受けてないならば、トータルチェックが必要になるでしょう。また、企業検診を受けている人も、どの検査項目を受けていて、何を受けていないのか、今一度見直してみてください。というのも、基本的な検査と生活習慣病のチェックのみで終わってしまうという検診が少なくないからです。
ではどこを見るべきか。まず女性特有の疾患検診は網羅されているでしょうか。子宮内膜症や子宮筋腫、乳がん、子宮がん、卵巣がんなど、乳・子宮・卵巣を備えた女性というからだを丁寧に診てもらうのはマストです。オプションになっているところが多いと思いますが、必ず定期的に受けるようにしましょう。
また、ライフステージに合わせたチェックはカバーされているでしょうか。40〜50代女性が気にかけておきたいのが女性ホルモンの数値。それに連動して骨密度やコレステロールなども大きく変化するタイミングです。年齢という数字に合わせて、チェックするものが変わっていくのは当たり前のこと。そこをしっかりフォローしていくべきなのです。

血縁関係にある人の
病歴を把握しておこう
さて、次にぜひ調べておいていただきたいことがあります。それが、家族の既往歴です。40代以降は、からだに遺伝の影響が明確に現れるようになります。「父親は血圧が高かったな」「晩年の母親はよく骨折していたな」「祖父や叔母が脳梗塞で亡くなったな」「うちはがん家系と言われてきたな」など、血縁の人々の体質や病例で思い起こすことはないでしょうか。もしあるならば、そこがウィークポイントになる可能性は低くはないのです。
人間ドックを受けられた方で、ある腫瘍マーカーの数値が悪かったことで、かなり具体的な質問と相談を受けたことがありました。というのも、やはり親族にそのことに関連する病気にかかった方がいたとのこと。結局ことなきを得たのですが、そういう場合はいち早く検査を受けたほうがいいと考えています。
かかりつけ医が
点と点を線にしてくれる
最後に、人間ドックと並行して大切なことをお伝えしておきましょう。それがかかりつけ医をもつ、ということです。風邪をひいたときに行く近所の内科ぐらいはあるものの、それ以外はタイミングによりバラバラという人が多いのではないかと思います。ならば、まずは検診を受ける場所を決めてみましょう。そこで問題が出てきたら、その状況に合った病院を選んでいきましょう。
というのも、あちこちの病院で診てもらっていると、数値や画像などのデータは共有されないからです。大切なのは、過去の点と現在の点を線にして見ていくことです。そのことで未来が予想できるかもしれないし、何か起こったときの原因究明や対応が早くなることがあるかもしれません。人にからだの歴史あり。そのことを胸にぜひかかりつけ医をもつようにしてください。
―――次回【特集】おとな世代の「⼈間ドック」#02では、「更年期ドック」エディター体験レポートをお届けします。
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- 浜中聡子(はまなか さとこ) 医学博士。北里大学大学院医学部卒業。女性のためには「前向きに年齢を重ねていくこと」の重要性を感じ、日本抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会(WOSAAM)専門医、米国抗加齢医学会(A4M)専門医、米国先端医療学会(ACAM)などの資格を多数取得。精神と身体の両面からケアすることを得意としながら、「ウェルエイジング」を提唱し臨床現場に立っている。著書に『美人増髪計画』『アフター更年期からの不調を治す50の習慣』など。
デザイン/日比野まり子
イメージ写真/Shutterstock.com
【特集】おとな世代の「⼈間ドック」(全3回)
- #01|人間ドックを人生後半のルーティンに
- #02|「更年期ドック」エディター体験レポート
- #03|更年期ドックの結果診断にアドバイス!