2022.06.15

【特集】梅雨をポジティブに過ごすコツ #03

産業医が解説する「おとなのからだ」と「梅雨だる」の関係

産業医 福田千晶先生

―――気分だけでなく、からだまで“なんとなく”すっきりしない梅雨どき。そんな「梅雨だる」を快適に乗り切るには? 働くおとなの健康事情に詳しい福田千晶先生に伺いました。

心身の弱っている部分が
不調によって明らかに

梅雨時期に頭痛やめまい、肩こり、冷え、むくみといった不調を感じる方は多くいらっしゃいます。からだだけでなく、気持ちがなんとなく落ち込むという方も。いわゆる「梅雨だる」状態です。

そもそも、更年期の女性は、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していく渦中にあり、数年間、長い人では10年以上にわたって心身にさまざまな症状が現れます。さらに、梅雨という季節特有のストレスがかかって、もともと弱っていた部分、ケアがおろそかになっていた部分の不調が、より際立ってくるのです。

女性ホルモン(エストロゲン)がゆらぎながら低下することが更年期症状の主な原因

ふだんから不摂生していたり疲労の蓄積がある、運動不足、栄養バランスが悪い、体力がない、という人は、やはり体調をくずしがちです。女性ホルモンの変化も、比較的ゆるやかな人、急にガクッとくる人と、個人差がありますから、梅雨時期の不調も、人それぞれ。だからこそ、自分の状態ときちんと向き合うよい機会にもできるはずです。

気温差、湿度、日照時間…
小さな外的ストレスが蓄積

梅雨時期のストレスでまず気をつけたいのが、不安定な天気による気温差。天気によっては肌寒いと感じる日があれば、真夏のように暑い日もある。強さを増していく紫外線は、肌への影響だけでなく、疲れの原因にもなります。

湿度が高く、蒸し暑い日であれば、歩いているだけで一気に汗が出たり。それで冷房の効いた室内に入れば、からだは急激に冷えてしまいます。

日照時間が長くなることで、帰宅時間は遅くなり、朝は早くから明るくなるので目が覚めてしまって、睡眠時間が短くなることもあると思います。入浴もシャワーで簡単に…という日が続くと、どうしても疲れは蓄積していきます。

さらに、6月は祝日がありません。お仕事によっては半年の締めで忙しい。疲れを癒すタイミングが取りづらい時期なのです。

低気圧で影響を受けやすいのは
どんな人?

気圧の変化によって、頭痛や肩こりといった不調が現れる方も多くいらっしゃいます。

「天候が変わるときに体調が悪くなる」「雨が降る前や天候が変わる前に、なんとなく予測ができる」という人は、低気圧の影響を受けやすいタイプでしょう。

特にコロナ禍以降、在宅ワークが増えたことで、該当する項目が増えた人もいるのでは。健康診断などでお話を伺うと、40~50代の多くの女性が「夫婦ともに在宅ワークが続いてストレスがたまっている」とおっしゃいます。毎日「ごはんまだ?」「ごはん何?」と聞かれるのが耐えられないと(笑)。

今年の梅雨は、ウィズ・コロナに向かう生活様式の変化で、再び外に出ることが増えそうですが、人によっては暑さにからだがついていかないこともあるでしょう。複雑な環境の変化に「梅雨だる」が加速することのないよう、いっそう、自分の心とからだを観察してほしいと思います。

―――次回の【特集】梅雨をポジティブに過ごすコツ#04では、「梅雨だる」の予防と対処法についてお伝えします。

  • 福田千晶(ふくだ ちあき) 慶應義塾大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て、クリニック勤務および嘱託産業医。また健康科学アドバイザーとして執筆、講演、テレビ・ラジオ番組への出演などで活躍。
取材・文/剣持亜弥
デザイン/日比野まり子