2022.05.11

【特集】「おとなの五月病」どうつきあう? #01

気温、気圧、湿度…。5月はおとな世代に「春の嵐」が吹き荒れる!?

漢方薬剤師 樫出恒代さん

----風薫る5月! 本来は1年中でいちばん過ごしやすい季節のはずなのに、「なんとなく不調」「気分がすぐれない」など、疲れや落ち込みを感じる人が多いようです。春はおとな世代にとってどんな季節なのか、漢方薬剤師の樫出恒代さんが、東洋医学の視点で解説します。

まだ気温の低い春は
「冷えのぼせ」に注意!

5月、気持ちのいい季節の到来ですね。今日は陽気もいいことだし、薄着でいいかな、素足でいいかな、なんて季節先取りのおしゃれを楽しんだ結果、家に帰ってきたら全身ぐったり…などという経験はありませんか? 

それ、春に見られる典型的な「冷えのぼせ」の症状かもしれません。この時期、まだ地面は冷たいので、意外と足元は冷えています。すると熱はからだの上のほうに上がってくるので、上半身や頭がのぼせてしまうことに。更年期はそもそものぼせやすく、更年期症状が落ち着いても、この時期にまた強く感じる人が増える傾向にあるのです。

さらに5月は、気温・気圧・湿度が日によってまちまちで、からだはそれについていくのに必死。いわばジェットコースターに乗っているようなものです。さらに女性ホルモンのアンバランス=更年期という大波に襲われているのだから、心とからだに不調が出るのは当然。大嵐のなか、ジェットコースターに乗っている…おとな世代にとって、5月って実はそんな季節なのです。

「おとなの五月病」は
冬の過ごし方が肝心

私のところにも、不調を訴える患者さんが増える時期です。「頭が重い」「動悸がする」「むくみやすい」などに加えて、「夜中に暑くて飛び起きてしまう」という人も。「おとなの五月病」とでも言いましょうか。この症状を東洋医学的に見ると、原因は冬までさかのぼることになります。

冬はゆっくり過ごすのに適した季節で、エネルギーをしっかり貯めておくことが大切です。なのによく動いて汗をかいてしまうと、「気」が汗と一緒に外に出てしまうことに。汗は東洋医学では「心血(しんけつ)」と書きます。冬に「心の血」が流れ出てしまったら…5月まで心身がもたないのは当然。だから冬場は汗腺をキュッと閉めて、とにかく体力を温存しておくことが大切なのです。

そうすることで、新生活で緊張が続く4月でエネルギーを使い果たしてしまうことなく、5月に入ってゴールデンウィークを越えても、しっかり動けるからだになります。春にしっかり芽吹くため、冬にその準備を始める。また厳しい夏を乗り切るために、春にもやるべきことがあります。そうやって1年全体を、またその人の人生を丸ごと見ていくのが、東洋医学なのです。

5月こそ、心とからだの
デトックスを!

そして春。東洋医学では、春を「発陳(はっちん)」と呼びます。「陳」は「古い」という意味。春は古いものを発する、デトックスの時期です。解毒がうまくできないと、吹き出物やじんましん、そして花粉症のようなアレルギー症状として現れます。

五行相関図

「肝」を司る季節でもありますが、それは肝臓のことだけを指すのではなく、目、胆嚢(たんのう)、ストレスにもつながり、これらの部位に不調が現れます。春の花粉症が特に目にくるのはそのため。また肝は、レバーの部位ですから血の塊。血液も解毒の必要があります。血をサラサラにしてくれる緑の野菜がたくさん旬を迎えるので、ぜひたっぷりといただきましょう。

5月に何より大切なのは、「ストレスを自覚する」こと。自律神経が乱れることもあり、感度が鈍って、自分がストレスを抱えていることすら、わからなくなってしまう人が多いのです。そこでひとつ、肝に関するボディチェックを紹介しましょう。

椅子に深く腰掛けて、肋骨の下に手を入れてみてください。指の第二関節ぐらいまで違和感なく入るのがベスト。右側に大きな肝臓があるので、左との差が顕著に出ることがあります。もしうまく入らなかったら、肝臓に熱がこもっているということ。湯たんぽやこんにゃく湿布(こんにゃくをあたためた温湿布)を当てて、血流をよくしてあげましょう。ストレスのセルフチェックに、また解毒機能を高める方法として、ぜひ試してみてください。

----次回の【特集】「おとなの五月病」どうつきあう?#02 では、具体的な養生方法について、お伝えします。

漢方薬剤師 樫出恒代さん

【特集】「おとなの五月病」どうつきあう?

  • 樫出恒代(かしで ひさよ) 漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。『漢方カウンセリングルームKaon』の代表でもあり、『Kaon漢方アカデミー』の代表兼講師としても活躍。「漢方をもっと身近に。もっと自分らしく」というテーマの元に行うきめ細やかなカウンセリングや施術に定評あり。また、スクールやセミナーでは講師としての一面をもち、心身ともに元気になるための"漢方ライフ"の普及に力を注いでいる。 『漢方Kaon』
取材・文/本庄真穂
撮影/望月みちか
デザイン/日比野まり子
イメージ写真/shutterstock.com