一度はいたらリピート必至「まるでデニム」の新作が登場!

語り/田中富子(デザイナー)

「まるでデニム」というネーミングのとおり、見た目はデニムでも、実はぐーんと伸びる楽なカルソン。この人気シリーズが登場から5年目に突入しました。これまでの開発秘話や、待望の2021年春夏の新作を発表します!

まるでデニム

特許を取得した「まるでデニム」カルソンの開発秘話

――「まるでデニム」には固定ファンが多いそうですが?

田中 ありがたいことに、一度はいていただくとリピートされる方が多いようです。ひとつの品番で複数のカラーを購入されたり。実は、私も家にいる時間は毎日のようにカルソンを着用しています(笑)。

――近づいて触れてみないとデニムにしか見えませんが、どんな着想で生まれた商品なのでしょう?

田中 私自身、こんなデニムが欲しかったというのが大きな理由です。出産や加齢によって、「はけるデニムがない…」と感じていたので、カルソンの基本機能を生かしたデニムを開発したら売れるだろうな、と。世界中の人々に愛されているデニムの普遍性から、ブランドの軸になるのではないかと考えました。体型の変化であきらめていたデニムがはける、マイナスをプラスにできる商品です。当初は40代がメインターゲットでしたが、現在は40~60代の幅広い方に向けて手がけています。

初代「まるでデニム」ではミニチュア版が店頭に並んだ。
初代「まるでデニム」ではミニチュア版が店頭に並んだ。

――誕生は2017年春とのことですが、開発期間は?

田中 通常より長く、1年半かかりました。というのも、百貨店の売り場に陳列する際に横一列に吊りますが、生地の特性で長さを5%まで許容しているため、見た目の長さが一様にはそろわなかったんです。股下丈、総丈を同一寸法にする工夫がむずかしくて、パタンナーや技術担当、縫製工場の方々と「チームカルソン」で技と知恵を絞り考えました。結果、特許の取得にもつながったんですよ。

――すばらしいですね! その問題をどうクリアされたのでしょう?

田中 裾のデザインで折り返しになっている部分に接ぎを入れることで、仕上がり寸法のバラつきを解消しました。裾部分でのプリント手法も特許を取得しています[特許第6617720号]。ここはいちばん苦労した部分ですが、みなさんにご協力をいただき発売に至ったので、モノづくりの醍醐味を感じました。

折り返し部分のプリントはセルビッチ(赤耳)もリアルに表現。
折り返し部分のプリントはセルビッチ(赤耳)もリアルに表現。

――素材について教えてください。

田中 経編(たてあみ)のハイストレッチ素材ですので、縦にも横にもよく伸びます。本当のデニムだと伸びない股上の部分も伸縮性があるので、ジャージ感覚ではいていただけます。これまで、ブラックデニムやホワイトデニムもつくりました。2019年秋冬には、ご要望の多かった裏起毛のあたたかいタイプをつくったところ、大変ご好評をいただきました。

歴代の「まるでデニム」。
歴代の「まるでデニム」。

――環境にもやさしいそうですね?

田中 はい。インディゴ染めのデニムは生産時に水を大量に使うのですが、「まるでデニム」はインクジェットプリントを使用することで、一般的なデニムと比べて水の使用量を削減したサステナブルなプリント技法を使った商品です。

2021年春夏シーズンの新作にはトールサイズも登場!

――新作について教えてください。はじめてトールサイズを採用されたとか?

田中 はい、2021年はさらにお客様の声を反映したものづくりをということで、S、M、Lそれぞれのサイズにトールサイズを展開しています。ST、MT、LTという表記ですね。最近は背の高い方も多くいらっしゃるので、より幅広い方に着用していただければと。

新しいストレートラインのボーイフレンドデニムKSN120。
新しいストレートラインのボーイフレンドデニムKSN120。

田中 これまではポケットがフェイクだったのですが、今回は実際に付けました。

これまではポケットがフェイクだったのですが、今回は実際に付けました。

――新商品のワイドタイプの特徴も教えてください。

田中 こちらは以前のものよりはき込み丈を深くしました。丈も長くしています。フロントに、デザインでヒゲ(シワにそって色落ちした状態の加工)を入れたこともあってよりリアルなデニムを表現しています。

新しいワイドラインのパンツKSN121。
新しいワイドラインのパンツKSN121。

――今回、ウエスト位置を変更されたとか?

田中 そうなんです。これまではおへその位置くらいの股上丈で安定感を感じられる方に向けていましたが、今回はおなかをすっぽりおさめてくれるウエスト位置に変更しました。最近は若い方にもハイウエストが定着してきたのも理由ですね。

新作はウエストの位置を上の赤いラインに変更。
新作はウエストの位置を上の赤いラインに変更。

田中 ウエストのカーブゴムですが、上辺より下辺がよく伸びるので(いちばん上の画像)、からだに沿いやすく圧迫感を感じにくいです。洗濯機でじゃぶじゃぶ洗っていただけますし、旅行に行くときもコンパクトにくるくると丸められて便利でシワにもなりにくいです。

ウエスト内側のゴムの部分。
ウエスト内側のゴムの部分。

コーディネイトできるトップスやスカートもラインアップ

――カルソン以外のアイテムにはどのようなものがありますか?

田中 2018年から、デニムを引き立てるトップスを毎シーズン開発しています。インパクトトップスと呼んでいて、デニムジャケットをレイヤードしたデザインは全てプリントなので、Tシャツ感覚で軽やかに着ていただけます。もちろん洗濯機で洗っていただけます。

2020年夏発売。後ろファスナー付きのEKN560。
2020年夏発売。後ろファスナー付きのEKN560。

田中 デニムプリントのスカートも2種類作りました。パッチワークデニムひざ下丈(写真)と、ロングスカートです。同じくデニム柄のマスクは、1枚ごとに柄が異なり、ヒモの長さを調整できるのでぜひコーディネイトを楽しんでいただければ。

2020年夏に発売されたKSN201。おそろいのマスクも登場。
2020年夏に発売されたKSN201。おそろいのマスクも登場。

田中 同じシリーズのトップスもありますので、ぜひ店頭でチェックしてみてください。

2021年春に登場するトップスEKN567。
2021年春に登場するトップスEKN567。

田中 「まるでデニム」が誕生して5年目を迎えますが、まさに今、おうち時間を中心に快適なファッションが求められているので、追い風を感じています。ストレートやワイドラインといった、お好みのシルエットを選んでいただけるので、この機会にぜひ手にとってみてください。

  • 田中富子
  • 田中富子(たなか・とみこ) 卸売事業本部 パーソナルウェア営業部 商品企画課
    2008年より「BODY SUPLI」企画デザイン担当
    2019年より「ワコールカルソン」企画デザイン担当
    2021年より「ワコールカルソン」ディレクター兼「らくラクパートナー」企画デザイン担当
取材・文/シキタリエ
撮影/合田慎二