「ちょこまか動く」ことで「座りすぎ」のリスクを減らす!

特集/美しい姿勢で美しく生きる!

先生/岡 浩一朗(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)

---- 現代人の健康と命を脅かす「座りすぎ」問題。全身の70%の筋肉が集まっている下半身をまったく動かさないことにより、血流や代謝が停滞し、さまざまな健康被害を引き起こすことがわかってきました。では、具体的にどの程度座り続ければ、リスクのある「座りすぎ」になるのでしょうか? コロナ禍による新しいライフスタイルでの注意点も含めて、日本における「座りすぎ」研究の第一人者である岡 浩一朗先生にお話をうかがいました。

「ちょこまか動く」ことで「座りすぎ」のリスクを減らす!

椅子の進化のおかげで、ますます「座りすぎ」が加速

「座りすぎ」研究の先進国であるオーストラリアで2012年に公表されたデータに、衝撃的な報告があります。それは、クイーンズランド大学で行われた調査結果で、「テレビを1時間ずっと座って見続けると、余命(ある年齢の人が残り何年生きられるかという医学的データ)が22分短くなる」というもの。シドニー大学の研究チームによる「1日の座っている時間が11時間以上の人は、4時間未満の人に比べて、死亡リスクが40%高くなる」という研究発表もあります。

大阪大学の研究チームは、「1日5時間以上座ってテレビを見る人は、肺の血管に血栓が詰まる静脈血栓塞栓症(=エコノミークラス症候群)で死亡するリスクが増加する」という研究報告をしています。

これはもちろん、テレビが悪いわけではありません。「座り続ける」ことによるリスクですから、それがデスクワークであっても同じことです。

かつて、長時間のデスクワークの弊害として取り上げられていたのは、腰痛や肩こりでした。それを改善するために増えたのが、人間工学に基づいた「長時間座っていても疲れにくい椅子」です。今はゲーミングチェアも進化を続けていますね。おかげで私たちは、いっそう長時間座っていられるようになったわけですが、だからといって世の中から腰痛・肩こりが減ったわけではありません。なぜか? それは、不調の原因が椅子などの設備ではなく、「座りすぎ」という現代人のライフスタイルにあるからです。同じ姿勢で長時間座っていること自体が、腰や肩、首に負担をかけてしまっているのです。

週末だけはダメ? アクティブを自負する人こそ要注意

現代人は実際に、どのくらいの時間を座って過ごしているのでしょうか。

オーストラリアの研究では、「1日8時間以上」座っている人は、糖尿病や心臓病のリスクが高まると考えられています。実際に、私たちが行った調査でも、1日の平均的な総座位時間は8〜9時間。そう聞くと、デスクワークの人でも、「私はそこまで座っていない」と感じるかもしれませんが、電車で(あるいは車で)座って通勤して、デスクワークをして、家に帰って座ってテレビ…と、1日を振り返ってみれば、思った以上に座っている時間は長いはず。

会社では、書類は手渡ししないでサーバにアップ、目の前にいる人にもメールで連絡、と、多くのことがオンラインで済むように。家では家電も進化して、あらゆるものが指一本で動かせる。音声認識なら、指すら動かす必要がありません。

さらには、コロナ禍によるリモートワークの浸透で、電車を乗り換えたり、社内を移動したり、コピーをとったり、コーヒーブレイクで休憩室に行ったりという、ちょっとした「立って動く」機会も激減してしまいました。「自宅で仕事をする日は、トイレ以外はずっと座っている」という人も多いのではないでしょうか。

「そのぶん、私は毎週末、ジムでからだを動かしているから大丈夫!」というウイークエンドウォリアー(週末戦士)もいるでしょう。しかし残念ながら、「座りすぎ」によるリスクは、この程度のまとまった運動では十分に相殺できないことがわかっています。「今日はジムでしっかりからだを動かしたから、夜は家でゆっくり映画を観よう」といった行動パターンをアクティブカウチポテトと呼びますが、いくらアクティブにしていても、カウチポテトの時間が長ければ、ご破算なのです。

では、「座りすぎ」のリスクを減らすにはどうしたらよいのか。簡単です。頻繁に立ち上がること。そしてちょこまかと動くこと。下半身の血流を滞らせないようにすることが、最も効果的な「座りすぎ」予防なのです。

----便利さ、快適さの追求に加えて、コロナ禍で加速したオンライン化で、私たちの日常は急激に変化しています。現代のライフスタイルは、放っておくと「座りすぎ」まっしぐら! 次回は、家でもオフィスでも簡単にできる「座りすぎ」予防法についてうかがいます。

取材・文/剣持亜弥
イラスト/吉岡ゆうこ
  • 岡浩一朗
  • 岡 浩一朗 早稲田大学スポーツ科学学術院教授。早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。1999年より早稲田大学人間科学部助手、2001年より日本学術振興会特別研究員(PD)、2004年より東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年より早稲田大学スポーツ科学学術院に准教授として着任、2012年より現職。
    研究分野は健康行動科学、行動疫学。特に日本人の国民的な運動不足を無理なく解消させる方法を研究テーマにしている。
    近年は“座りすぎ”の健康被害に関する研究の第一人者として注目されており、メディアヘの出演も多い。著書に『座りすぎが寿命を縮める』(大修館書店)、『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』(ダイヤモンド社)がある。
※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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