こったときの骨ストレッチ

特集/なんとかしたい!肩こり

先生/松村 卓(スポーツケア整体研究所 代表)

----長時間パソコン作業をしていると、知らず知らずのうちに肩が内側に入る"巻き肩"になりがち。肩がこるだけでなく、横隔膜が圧迫されるため呼吸が浅くなります。そうなると、代謝が下がり冷えやむくみに悩まされることも...。「とはいえ、巻き肩の人に胸を張って背筋を伸ばしましょう、というと反り腰になりやすい。姿勢をよくするつもりが、腰に負担をかけてしまうのです。筋肉ではなく、骨にアプローチするほうが無理なくスムーズに、こりをリセットできるんですよ」と話すのは、骨ストレッチの考案者・松村先生。

骨をつかむとムダな力が抜けて
からだが滑らかに動く

なぜ骨にアプローチするのかをお話しする前に、基本ポーズを使った簡単な骨ストレッチを紹介するので、体感してみてください。まず、右腕を回します。腕の位置は耳からどれくらい離れていますか? 腕の位置や肩まわりの感覚を覚えておいてください。

●手首ブラブラ 手首ブラブラ ①右手の親指と小指をくっつけて輪をつくる。 手首ブラブラ ②左手の親指と小指で、右手首の両端にあるグリグリした骨の部分を押さえ、おへその前に出す。 手首ブラブラ ③右手首を左右にブラブラさせる。

7回程度ブラブラさせたら、右腕を回してみてください。さっきよりスムーズに、耳の近くで回っていませんか? ①と②を省いて、ただ手首をブラブラさせてみましょう。腕を回してみるとさっきまでの軽さは消え、再び重く感じるはず。骨を押さえてブラブラさせると刺激が肩にまで伝わり、この刺激によってこりがほぐれるのです。

小指と親指で手首の骨を押さえるのも、意味があります。ゴルフクラブや野球のバットを握るとき、小指を絡ませますよね。小指が浮いた状態で打っても力は入りません。親指は動作を止めてしまうブレーキで、小指は力を入れるためのアクセル。エンジンとブレーキをつなぎ、全身の力が自然に抜けたニュートラルポジションをつくるために、小指と親指で骨を押さえているのです。ムダな力を抜くというのは、実はとても難しいこと。でも、親指と小指を使うと誰でも簡単に力みから解放されるのです。

ちなみに、中指は力を通す指。歩く前に両足の中指を押して刺激し(靴の上からでもOK)、刺激を感じながら歩くと自然と前傾姿勢になり、からだの重さを利用して歩けるようになります。見た目も美しいし、疲れにくくなりますよ。

ツボ押しと"手のひら返し"を
加えれば、より緩みやすいからだに

肩がガチガチにこっている人は、骨ストレッチを行う前に下準備が必要です。ふたつあるので、やりやすいほうをセレクトしてください(両方やってもOK)。ひとつめは、肩こり・眼精疲労・偏頭痛・内臓の強化に効果のある手のツボ、"合谷(ごうこく)"を押す方法。合谷は、人差し指の第三関節の親指側にあるくぼみ。人差し指の方向に向かって親指で押すのがポイントです。合谷をほぐした後、上腕三頭筋(腕の後ろ側)を軽くもみほぐしましょう。 合谷 もうひとつは、"手のひら返し"。パソコンのキーボードを打つように左右の指を動かしたら、指の感覚を覚えておいてください。次に両手のひらを上に向け、その後に手のひらを下に返してさっきと同じように指を動かしてみると、軽くなっていると思います。手のひらを上にすると上腕二頭筋に負荷がかかり、張った状態になるのですが、手の平を返すと張りが消えるのです。たったこれだけで力みが取れるので、骨ストレッチを行う前だけでなく、パソコン作業をする前と作業中に何回か"手のひら返し"をしてみてください。長時間パソコン作業を行っても疲れにくくなるし、気分転換にもなりますよ。

----骨ストレッチの前後に腕を回すと、その変化に思わず「あっ!」と声が出ます。ほぐれたのを実感できると、"やらなきゃ"という義務感ではなく、"気持ちいいからやる"に変わるはず。次回は、肩のこりをほぐしながらウエストまわりもスッキリする、とっておきの骨ストレッチを紹介します。
松村 卓

松村 卓 スポーツケア整体研究所代表。陸上短距離のスプリンターとして活躍後、スポーツトレーナーに転身。ケガに悩まされた現役時代のトレーニングを見直し、筋肉ではなく骨の活用に重点を置いた"骨ストレッチ"を考案。『ゆるめる力 骨ストレッチ』、『やせる力 骨ストレッチ』(ともに文藝春秋)など著書多数。

取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ