目線や皮膚のケアで姿勢が変わる?!

特集/姿勢に自信ありますか?

先生/山口光國(理学療法士)
取材・文/大庭典子(ライター)

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視界でわかる首の傾き

日中のパソコン作業やスマートフォンの見すぎなど、前傾姿勢が増えがちな現代のライフスタイルですが、生活の中でほんの少し意識を変えるだけで姿勢にも変化が起きるのだとか。引き続き、理学療法士の山口光國先生にご登場いただきます。

姿勢は、"目線"の置き方ひとつでも変えられるんですよ。ポイントは、正面を見ながら、1点に目線を集中させるのではなく、視界に入る全体を把握すること。上はどれくらい見えていて、下はどのくらい、左は、右は、と全体に意識を向けると、首の傾きや姿勢のクセがわかってくるのです。

下ばかりがよく見えて、上はほとんど見えないという人は、"地面ばかりを見ていて"首や顔が下を向きがちだということ。それがわかるだけでも、傾いていた首をまっすぐにできたりと、姿勢改善につながります。

人と会話するときも相手の目1点だけを見つめるよりも、視界は上下左右全体をとらえながら相手の目を見ると、自然に背筋はすっと伸びるはずです。しかも、この効果は姿勢だけではありません。

相手の目一点だけを見るとやや圧迫感があります。でも、全体を視界に入れながら相手を見ると、視線もやわらかくなりますので、話しやすい、話しかけられやすいなど、優しい雰囲気も出るんです。ぜひお試しを。

からだは20分で固まる?!

最近の女性の姿勢の特徴としてあげられるのは...、おそらく"あぐら"のかきすぎだと思うのですが...足が外側に開いている方が非常に多いです。骨盤が後ろに傾いているので、足が開いてしまうのですね。椅子に座っているときもそう。骨盤をまっすぐ乗せれば、足は外側に開かないはずです。

姿勢は、20分同じままでいると固まるという実験結果もあります。あぐらやガニ股の状態で長時間スマホをしていれば、骨盤は開き、首は前傾になり、肩こりや頭痛などの症状が出てくるのも当然でしょう。

座っている作業が続いたり、同じ体勢でいなければならないとき、軽くからだを揺らしたり、凝っているところ、痛い箇所を軽くさするだけで筋の緊張はほぐれます。20分に1回を目安にからだを伸ばすなど、意識して動かしてください。

同じ体勢でからだが固まってしまった場合でも、20代はまだいいんです。動かせばすぐに動くようになりますから。30代以降、年齢が上がるほど、動くまでに時間や準備が必要になります。悪い状態で固定してしまうと、からだはその状態を覚えてしまうので、だんだんと姿勢は崩れてしまいます。

逆にいい姿勢もからだは覚えますので、姿勢をサポートしてくれるようなブラジャーやガードルを利用するのもいいでしょう。身につけているとき、積極的にからだを動かして、からだがラクな動きを感じてください。からだは動きながら"動"の姿勢を覚えていきますし、動き自体もどんどん大きくなっていきます。

からだは意識すればするほど覚えますので、サポートしてくれる下着を外したら終わりではなく、つけていないときにも、"サポートされているときのラクに動くからだ"を意識して、イメージしていれば、何も付けていない日の姿勢にも変化が現れるでしょう。

さて、最後に。いい姿勢をつくるには皮膚のケアも怠らずに行ってください。ボディクリームなどでしっかりと保湿された皮膚の人は、筋肉の状態も良好です。筋肉と皮膚は密着しているので、皮膚の状態が筋肉に影響を与え、コンディションのいい皮膚は、筋の活動を活発にするのです。

姿勢を整えるのに保湿が必要なの?!と意外なアプローチに思えるかもしれませんが、ぜひ覚えておいてください」

目線の置き方や皮膚のケアなど、一見姿勢とは無関係に思えることも、実は美しい姿勢につながっていることも興味深いですね。明日からと言わず、この瞬間から少しずつ意識して美しい姿勢を目指しましょう。
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山口光國
(セラ・ラボ代表/理学療法士)
日本サッカーリーグの日立製作所(現 柏レイソルズ)にFWとして入団。故障から21歳で引退し、現職へ転身。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院を経て、'05年より横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)にフィジカルコーチとして就任。現在は、さまざまなジャンルのアスリートをサポートするほか、全国各地で講演、セミナー活動も行う。

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